アクセル全開
私自身、ゲームしてもそこまで疲れないほうだ。
数多ものクソゲーをプレイして、理不尽難易度をクリアしてきたという実績があるように、そういうのは慣れっこ。
だけど、この巨人は理不尽とまではいわないが、強敵ではあった。
「んあ……」
「おう、目が覚めたか」
「ここは……」
「第三の街付近だ」
オヤカタは第三の街まで連れてきてくれたらしい。
私は上体を起こし、周りを見てみる。ゼノもメルルも眠っていた。
「ゲーム内で寝るって本当に不思議……」
「そうだな。そろそろつくぜ」
「うん。……あ、オヤカタ。運転代わろうか? 疲れてるでしょ」
「いいのかよ」
「いいよ。バギーも運転してみたかったし」
というので、一度止まり、私は運転席に座る。オヤカタは後部座席に移動し、私はバギーを発信させる。
バイクとは違い、ペダルで操作なので車と基本同じ。右がアクセルで左がブレーキだ。ギアはハンドルの横についていて、普通の車と違うのは前進と後退しかないことだ。
「俺らの車奪うなよ?」
「奪わないっての。寝てていいよ。第四の街まで行く」
「そうか。じゃ、お言葉に甘える」
オヤカタも眠り、起きているのは私だけになった。
ああ、イベント、これ無事ゴールできるかな。巨人討伐したおかげで大幅に後れを取っている。きっとほかのプレイヤーは早くて中間地点まではとうの昔に到達しているだろう。
マップを見るに、この世界のこの島には街が計20存在している。私たちはまだ4つめ。急がないといけないが……。
私はバギーを走らせていると、前方に歩いている人影が見える。
プレイヤーだな。どうやら乗り物を壊して歩くしかないようだ。バギーに気づくと、戦闘態勢をとっていたが、私はそれを無視して通り過ぎようとする。
すると、バギーに捕まり、私にナイフを突きつけてくる。
「降りろ。そのバギーを寄越せ」
「それが人に物を頼む態度か?」
私は思いっきりハンドルを切る。
林の木ぎりぎりまで近づくと、外にしがみついていた片方の男が木にぶつかりそのまま落ちる。もう片方の道の木ぎりぎりまで寄せて、助手席側の男も木にぶつからせ、落とす。
ったく、こんな勢いよく走ってる車に乗り込もうとするなんて勇気あるな。ナイフ突きつけて動じると思った神経もすごい。
ナイフ突きつけられたところで私は喜ぶだけだぞ。
「ん……」
と、さっきの無茶な運転で目が覚めたのか、メルルが目を開ける。
「だれぇ……」
「私」
「オヤカタじゃない……。って、ああ、じゅんぺーさん……。おはよぉ……」
「おはよう。いい朝だな」
「夜だぞ今は」
と、ゼノも起きていたようだ。
「いつの間にかオヤカタからじゅんぺーさんの運転に代わってるぅ」
「オヤカタも疲れてたからな。第四の街まで私が運転していくことにした」
私はハンドルを握る。
「第四の街からは私たちは再びライバル同士だ。それまでは一緒に旅をしようぜ」
「別に私たちと一緒に行動してもいーのに……」
「二人だって勝ちたいだろ」
「そうだけど……。でも、別れたくないぃ……」
「わがままを言うな……といいたいが、別に構わないのではないか? このバギーでともにゴールしたらどうなるかは知らないが……。まず一番でつくと一着二着独占だろう。3万ポイントを使わないでいれば一気に優勝に近づけると思うがね。このレースで大事なのはポイントの総数だからな」
「それもそうか」
私はアクセルを全開にする。
「じゃ、前言撤回! 最後までよろしく頼むぜ! 燃料は交代交代で出していこうな」
ともに最後まで!
旅は道連れ世は情け。




