巨人討伐達成!
1分、なんとか耐えきった!
私は忘却の雫を巨人めがけて落とす。すべてを忘れさせるほどの強烈な劫火が巨人の頭に落ちた。頭の髪の毛が燃えてつるっぱげになれ!
巨人の顔が火に包まれる。巨人は頭を抱え、苦しみ始めた。さすがに無事では済まないだろう。すべてを焼き尽くす劫火だ。
MP、全部なくなったけど。ってか、今現在落ちてる。どうしよう。
「鋼水の糸!」
まだ燃え広がっていないところに糸を放ち、落下を食い止める。そして、皮膚をつかんで下まで降りていく。
巨人は燃え広がる劫火に身を焼かれ、苦しむ声を出していた。
「えっぐ……」
我ながら言うのは、えぐい。
ここまでリアルにしなくてもいいじゃん……。こんな人が焼け死ぬような声。これはさすがに放送できないから映像停止!
コメントがどうしたというが、私は声だけで説明する。
「さすがにえぐいから放送禁止です」
私は地面に着地し、苦しむ巨人を見る。
巨人は膝をつき、頭を地面につけ、柔道の座礼のような姿になって、息絶えたのだった。巨人が消えて、経験値とポイントが私のところに入ったのだが。
なんとそのポイントは30000ポイント。
「うえっ!?」
映像をまた映し、手に入れたポイントと今現在のレベルを映す。
56くらいだったレベルが一気に63まであがった。レベルもものすごく高く、倒せない敵みたいな存在だったようだ。
だがしかし、この攻略方法は多分邪道。メインウエポンである忘却の雫の威力が強すぎただけだろう。すべてを消し去る炎というのは伊達ではない。
本来はもっと違う攻略方法があったんだろうな……。多分それでも苦戦するだろうけど。
すると、オヤカタのバギーが私の目の前に停まる。
「大丈夫か」
「なんとかね……。落ちた二人は?」
「落下ダメージで死んで復活して挑もうとしていたら巨人に踏み潰されたところだ」
ということはまた死んだか。
「お疲れさん。二人の復活を待とう」
「うん。……あ、巨人のポイントとか手に入った?」
「いや、ポイントは手に入っていない。経験値は戦闘に参加したという扱いなのか手に入ったがな。10レベルくらい一気に上がったぞ。どれだけ強かったんだ。よく倒せたな」
「ほんとぎりぎりの戦いだったよ。これで倒せなかったら無理だったね」
攻略方法をまた探さないといけなくなるからきつかった。
ただでさえ、今の戦いで一晩明けたんだ。あとゲーム内時間で1週間と3日くらいの猶予しかない。そろそろ現実でもいい時間になっているころだろう。
1週間が過ぎると、その場から強制的に動けなくなりログアウトさせられるようだが。
「ふっかーつ!」
「はぁ……」
と、二人がリスポーンした。
「倒せたか」
「倒したんだ!」
「ああ」
私はバギーの背もたれにもたれかかる。さすがに疲れた……。
「どうした?」
「疲れた……」
「寝てろ。ゆっくり街まで戻るからよ」
「そうさせてもらう……。襲うなよ」
「俺らはそういうプレイするほど腐った人間じゃねえよ。このイベントでは誰も信じられないかもしれねえが、俺らはそういうのしねえ」
「そう……」
私は目をつむる。
ああ、ここまでゲームで疲弊したのは久しぶりだな……。




