耐久戦
私は肩までよじ登った。
私は忘却の雫を使用してみる。この技は溜めが必要であり、時間稼ぎが必須となるのだが……。この巨人の図体で、この素早さでは溜めていても難なく躱せるとは思う。
それに、自分の体だからむやみに攻撃はできないだろうし。
「よっと……。ここが肩、か。巨人はやはりデカいな……」
「うわぁ、すごい景色……。結構奥のほうまで見渡せるねぇ!」
その時だった。
私たちの目の前に掌が飛んでくる。私は難なく躱したが、メルルはよけようとして足を滑らせていた。そして、そのまま真っ逆さまに落ちていく。
「うわああああ!」
「じゅんぺー、助けられないか!?」
「無理だ。今、技を使うための溜め時間に入ってる……。スキルを並行して使うことはできないから……」
どうしよう。
助けられるのなら助けたい。が、今は忘却の雫の溜めに入っている。これの悪いところは溜めるのをキャンセルできないということだ。
一度溜め始めたら技を放つか、私自身がダメージを受けるしかない。だがしかし、私は装備は初期装備なので、いくらステータスが高いといえど何発か食らったら死ぬ。ましてや巨人の攻撃なんて耐えれるはずもない。
「キャンセル不可だ! これは仕様上仕方ない!」
「くそ! 僕が何とか助けて……」
「もう結構落ちてる! 今から落ちても距離は縮まらない!」
「じゃあ諦めるしかないっていうのか!?」
「諦めるしかない! メルルだってその覚悟はあると思う!」
私たちが話しているときに、また掌で叩かれそうになった。
私はジャンプし、後頭部の髪をつかむ。片手でつかまりぷらんと揺れる。ここは叩くのに躊躇する部分だ。そう簡単に攻撃はできまい。
あと溜め時間は2分。それまでどうにかして粘らないと。
「防戦一方というのは気に食わんな! こちらからも攻撃するしかないだろう!」
「無茶はやめておいたほうがいいよ!」
ゼノは私の忠告を無視して弓矢を取り出した。
そして、弓の弦を引く。ぎりぎりと狙いを定め、矢を放つゼノ。が、矢はかわされて、撃った直後の隙を狙われて、デコピンのように中指でぽんっとはじかれた。
はじかれたゼノは宙を舞い、重力に従って地面に落ちていく。
「だからいったのに……。こいつもばかじゃないんだからそういう隙は狙ってくる……」
肩に乗っかっているのは私一人だけ。
しかもあの二人は空を飛ぶ手段がないはずなので、地面に落下して死ぬまでとはいかないにせよ落下ダメージは相当受けているはずだ。
今度は私めがけて掌が飛んでくるので、私は髪を離し、肩に着地する。どうにか移動でごまかしながらあと1分耐えるしかない。




