よじ登れ
あの巨人を倒す手段なんて今現在分からない。
となると、戦っている最中に攻略方法を見つけるしかないということ。どこが弱点なのかも戦闘中に見つけなければならない。
事前情報があれば幾ばくかは楽になるのだが……。
「巨人を相手するのはすげーしんどいぞ」
「顔が喜んでる……」
そりゃうずうずするでしょ。
しんどいのは大好きだもんね。自分をいじめているような感覚でゾクゾクしちゃうの。
「ごちゃごちゃ考えるのもあれだろ。戦うって決めたんならさっさと行こうぜ」
「そうだねオヤカタ」
オヤカタはバギーを引き換えてきていた。
そして、私たちはそのバギーに乗り込み、再び巨人のもとに舞い戻る。巨人の真下につくと、改めてその迫力のすごさが分かる。
巨人はぎろりとこちらを向いていた。気づいたみたいだ。
「オヤカタ……。オヤカタは悪いけどバギーでこの巨人の気を逸らし続けてくれる?」
「了解だ」
「ゼノと私とメルルで巨人に攻撃する」
私たち三人はバギーから飛び降りる。
巨人は思った通り、私たちに気づいたわけじゃなく、バギーに気づいただけらしい。バギーにヘイトが向かうようになっているようだ。
オヤカタが強引に引き返して走ると巨人もそれを追うように歩き出す。私たちは片方の足に捕まる。
「これから先どうするんですか!?」
「よじ登る! 足を攻撃してもびくともしないから弱点を狙う! が、まずは足止め! この膝裏に各々の一番強い攻撃を加えるんだ!」
「僕は弓なんだが……。まぁ、やるしかない! じゅんぺー! 糸で僕をつかんでくれよ!」
と、ゼノはそのまま飛び降りた。
私は鋼水の糸を放ち、ゼノを捕らえる。
「彗星の矢!」
「大砕の槌ぃ!」
メルルは馬鹿でかいハンマーで左の膝裏を、ゼノは右の膝裏を狙い攻撃を仕掛けるとものすごく効いたのか、ひざを折り、膝を地面につける。
膝カックン成功! 少しは時間を稼げるだろう。
「引き上げるよゼノ」
「ああ」
私は鋼水の糸を手繰り寄せる。
ゼノは再び巨人の皮膚にぎゅっと捕まる。私はさっさと上ってしまおう。こんな垂直のような壁に引っ付くのはさすがにきつい。
蜘蛛女に変化してるとはいえ、垂直にもほどがある。
「じゅんぺー、鋼水の糸でこいつを拘束できないか」
「さすがに無理だと思う。まず私のMPが持たない」
そして、私のMPはある技のためにとっておきたいというのもある。さすがにあの技を使えばこの巨人も割とマジで無事では済まないだろう。
私たちはとりあえず肩まで登る。話はそれからだ。




