進撃
私たちはメルルのバギーに乗っていると。
突然、地面が揺れた。オヤカタはブレーキを踏み、バギーが止まる。
「なんだこの地震は……」
「あ、あれ!」
と、後ろを振り返る。
すると、そこには馬鹿でかい巨人が立っていた。巨人の足が、私たちの頭上にある。え、なにこれ。と思いながら、私は双剣を手にしてバギーを飛び出し、思いっきりジャンプし双剣でその足の軌道をずらせないかと試みてみる。が、さすがに私の体長の何倍もある大きな足を食いとめることはできなかった。
「本気で行くぞ! 龍変化!」
さすがに食い止めないとバギーがぶっ壊れてしまう。
オヤカタがバギーを動かそうとしているが、今の地震で地割れが発生したみたいで、その地割れに片方のタイヤが巻き込まれて動けずにいた。
龍変化し、思いっきり足にぶつけてみる。
が、効果はなさそうだ。
そのまま、その馬鹿でかい大きな足は私ごと、バギーを踏み潰した。
「くそ、どういうわけだ……あれは」
私たちはそのままキルされて、少しだけ意識を手放す。
そして、目が覚めたところは第二の街の中だった。四人同時に目を覚まし、立ち上がって周囲を見渡してみる。
あの巨人の姿はやはり見える。あれは幻なんかじゃない。
じゃあ、何のためにあそこに巨人がいるのか。あれはモンスターなのだとしたらどうやって倒すんだろうか。
「あれはいったい何なんだ?」
「さぁ……。先を急ぎたいけど……あれ、正直気になるよね?」
「はい……」
あれを無視するという手はないでしょう。
あれにかかわっているとレースに大幅に後れを取ってしまうが、あれはなんだか無視しちゃいけない気がする。
あれは多分倒せる敵ではあると思う。龍変化でぶつかった際、かなわなかったといえど一瞬だけ怯んだ気がした。
「オヤカタ! あれ戦おう!」
「戦おうたってどうやって倒す? 算段はあるのかよ」
「ない!」
「ないならやめておけ。無謀だ」
「無謀に挑んでこそYeyTuberだよ!」
メルルがそう弁明していた。
まぁ、一理ある。アレを倒したら撮れ高もあるだろう。本当の意味でのジャイアントキリングだしな。アレをぶったおしたら気持ちいいだろう。
ただ、どうやって倒すか、だ。
たしかにオヤカタの言う通り、あれを倒す算段はない。
だがしかし、倒せる敵ではあるとすると、考えられるとしたら少し行った街で倒すための情報を手に入れることができて、引きも返してきて倒すということを運営は想定しているのだろう。
が、私たちは多分レースの最後尾であるため、そんな引き返す時間はない。そんな悠長に引き返している暇はないだろう。
「だとしても俺らだけじゃ厳しいだろう。俺はよくてもそっちの二人が協力してくれると思うのか?」
「うっ」
「じゅんぺー。どうするんだ? 僕としてはレースを優先したい。このイベントはあくまでレースだろう。あの巨人にかまっている暇はない」
「そうなんだけど……。さすがにあれは無視できない。かといって倒す算段もない……。どうしたもんかね」
「やりましょうよ!」
というメルルの熱い要望。コメント欄も巨人を倒している姿が見たいというコメントであふれていた。
仕方がないか。
「ゼノ。とりあえず、レースで勝つことはあきらめようか」
「……了解だ。ここは君に従おう」
「感謝するよ」
巨人に挑むしかない。