じゅんぺーさんはすごいんです
二つ目の街に向かうために二人のバギーに乗せてもらっていた。
「改めまして! 私はメルル。こう見えても27歳だからね!」
「オヤカタ。よろしく頼む」
「私はじゅんぺー。こっちはゼノっていうんだ」
自己紹介を簡単に済ませる。
メルルは見た目は本当に小学生っぽい。このゲームは身長などいじることはできるといえばできるが、そんな自由にできるわけじゃない。
10cmの範囲でいじることができて、あまり変化はない。極端に小さくなることも極端にデカくなれるわけでもない。
そして、顔もリアルモジュールで、体形もリアルモジュールだそうで、現実でもこの身長らしい。
「ふむ、ロリ顔で大人って不思議だな」
「みんなそういうんだよね。でも、これでも本当に大人だからね!」
「ああ……」
メルルは背もたれにもたれかかる。
「ねぇ、今の配信者の時代ってどんなのか知ってる?」
と言い出した。
「じゅんぺーの時代だろう」
「そう! 私たちも一応配信者なんだけどね、伸びない! じゅんぺーの時代! 彼女ってああ見えて一時代を築いてるんだよね。とてもうらやましくて、あこがれる……」
「…………」
そうなの?
「あなたもじゅんぺーさんと同じ名前だね。でも、じゅんぺーさんはすごいんだ。私なんか足元にも及ばないの!」
「そ、そう……」
私はゼノに聞いてみる。
「私ってそんな時代築いた?」
「自覚ないのか?」
「うん」
私が一時代を築いているというのはありえないと思うが。
だがしかし……。まぁ、数多の数いるVTuberなどを差し置いてこれだけの人数が見に来てくれているというのは人気であるという証拠ではあるだろうけど……。
でも、時代を築くというところまでは行っていない気がする。私はまだその領域じゃない。
「いつか! じゅんぺーさんとコラボしたい! じゅんぺーさんとコラボするにはね、やっぱりゲームの腕前がうまくないといけないの。絶対じゅんぺーさんは強い人としかコラボしないから」
「そういうわけじゃないけど……」
私は思わず否定した。
「絶対そうだもん! じゅんぺーさんって、気高くて……高潔で……。とてもりりしくてかっこいいの。今の私じゃ釣り合ってない」
「いやいや、釣り合う釣り合わないじゃなくて……。気づいてる? 私一応そのじゅんぺーなんだけど」
「え?」
「え?」
目が合う。そして、メルルがものすごく叫んだ。オヤカタがびっくりして運転が少し蛇行になったがすぐに平常に戻る。
「このゲームって同名は無理だよ。じゅんぺーね。これ、カメラ。今配信してるの」
「うそうそうそ本物……。本物が空から落ちてきたって……コト!?」
「そうそうそう本物」
「うひゃああ……。あ、あの、握手を……」
「いいけど……メルルさんも配信者なんだ」
「と、登録者はそこまでいませんが……! 細々と配信させていただいておりますです……」
「同じだね」
「お、同じですね……」
メルルは急に縮こまり始めた。




