伊達に名乗ってないよ
私ってこういうのに出くわす確率って高いよな。
私は武器を構え、男たちを相手取ることにした。
「お互いエンジニアが死んじゃったけど気を楽にしていこうぜ!」
「罰としてなおしやがれ!」
「自分でやりなァ!」
私は右手の剣で相手の顔を切り裂いた。
が、さすがに一発では倒せそうにない。相手は剣を振り下ろしてきた。私は片方の剣で受け流す。双剣は基本攻撃は受け流すスタンスだ。簡単に当たると思うなよ。これでも私はプロゲーマーだからな。
私は攻撃を受け流しつつ、攻撃を加えていく。
「んだよこいつ!」
「クルー役はどっちかな」
「いうかよんなもん!」
「ああ、そう」
どっちでも構わない。
このゲームの最大の欠点はエンジニアよりクルー役が死んだらなかなか厳しいということだ。
クルー役だけが乗り物を運転できるので、仮に奪おうとしてもクルー役が生き残っていなかったら奪えない。
だからエンジニアよりクルーを先にキルしたほうが奪いやすいし、奪われにくい。
「命乞いするなら今のうちにしておきなよ」
「誰がするかよバーカ! 女に頭下げちゃだっせえだろ」
「そうそう!」
二人は中指を立てて挑発してきた。
挑発してくるか。されたら乗っかるしかないじゃないか。私は双剣をがっしりと握りしめる。そして、地面を強くけり、懐に素早くもぐりこんだ。
「は、はや……」
「まずは一人」
私は首元に双剣を突き刺した。
そのまま、倒れて消えていく男。もう片方の男はさすがに実力の差を理解できたのか、悪かったと命乞いをし始めた。
が、もう遅いのだ。
「さっきしておけっていったじゃん」
「わ、悪かった……! 謝るから……」
「死ぬの怖くて喧嘩吹っ掛けてきたんなら最初からかけんな!」
私は双剣で心臓あたりを突き刺した。
ったく、情けない。いくら温厚でマゾヒストの私でもここまで無礼なことされたらマジでキレっからな。
私は双剣をしまう。
「強いんですねぇ……」
「だてにプロ名乗ってないよ。それより、死んじゃった二人はいつ復活するんだろうね」
「さぁ……」
そう話していると、二人がそれぞれ車があった位置、サイドカーの上にリスポーンしたのだった。
「キルされてたのかよ……ちくしょう」
「油断していたね」
二人は情けないという顔をしていた。
「バギーも大破しちまったし……かといってこの人たちのバギーを奪うのもそれは礼儀として反するし、そういうの好きじゃねえし」
「走るしかないじゃん」
「そうだな。僕たちも走ったんだ。走るといい」
「そうさせてもらいます! えっと、じゅんぺーさん! 同じ双剣使いとして今度双剣のコツとか教えてください!」
「おう。いいよ」
私はタップにフレンド申請をしておいた。
いいやつらだなーこいつらはー。
こんないいやつらにこそ嫌悪感をあらわにした目で見られたいし、蔑まれたいんだよね。あんな奴らとは違ってこの人たちなら興奮する。




