疲れた
ダッシュで隣町についたのは夜明けごろ。
私だけ少し仮眠をとったとはいえ、ゼノは起きていたはずだ。いくら時間の流れが早いといっても私たちの体感時間は現実世界とそう大差なさそうなので眠らなくてもいいのだろうかという疑問がある。
「ゼノは仮眠とかしなくていいの?」
「僕はバイクを手に入れてからサイドカーで走りながら仮眠をとらせてもらおう。僕はエンジニア役で、運転できないからね」
「そう。じゃ、早いとこバイクを手に入れないとな」
私はポイント交換所に向かった。
もらった交換アイテムと、私たちがちょっとだけ集めていたアイテムを交換すると、7200ポイントになる。
そして、景品と引き換えるといって、景品リストを見ると、バイクのカスタム用パーツや、少し性能が上がったバイクなどがあった。
普通のバイクが5000ポイント、ちょっとグレードアップしたバイクが7000ポイント。
手持ちのポイントは道中雑魚敵も狩ってきたことを含めて9200ぐらいはある。ミノタウロスがやっぱりでかく、ミノタウロスの余った肉もポイントに還元したらものすごく集まったほうなのではないだろうか。
「ま、グレードアップしたバイクを買って、余ったポイントでカスタムパーツを一つ買うか」
「カスタムはどれにするんだ? 耐久力を上げるもの、機動力を上げるもの、速度を上げるもの、パワーを上げるもの、ジェット機能などがあるが」
「そうだな……。ま、ここはロマンを求めてジェットだろ」
私はバイクとジェット機能のカスタムパーツを購入。残りポイントが1700ポイント。
さすがに全部は使えないからな。もっと集めてからいろいろとカスタム機能を引き換えていこう。
そして、ポイントでもらったバイクが目の前に運ばれてくる。カスタムパーツはゼノに渡されていた。
カスタムパーツはゼノでしかつけることができず、つけている間は無防備なので私が周辺の警戒をする必要がある。
「場所を移してつけようか」
「そうだな」
バイクには最初からサイドカーが取り付けられている。
さすがにサイドカーまで購入させることはないようだ。
私たちは少し先に進んで、バイクにパーツを取り付けていた。
ゼノは説明を読みながらてきぱきと取り付けていく。当たり前だろうけど、このイベントで取り付け失敗なんてことは起きないようだ。
さすがに起きたら怖いし、それはそれで理不尽だ。しなかっただけ運営が優しい。
「このイベント……は常に警戒が必要なのが少しばかりきついな」
「弱音か?」
「少しぐらいは吐かせてくれ。さすがに疲れだって来るさ」
「ま、そうだろうな」
常に気がたっている状況ではある。
楽しんでるとか、そういう状況じゃない。周りすべてが敵だというのは精神的にもきついのだろう。信用できないからな。
まぁ、それは私たちだけじゃなく、周りだってそうだろう。周りのプレイヤーもそろそろこの無法イベントに疲弊してきた頃合いじゃないだろうか。
イベントにしちゃ、ルールが少ないからどんな行為も許されている風潮がある。
まじめにレースをしようとするもの、他人の妨害をして勝ちたいもの、そもそもイベントに参加することだけが目的の参加することに意義がある人などいろんな思惑があるだろう。
誰もかれもこんな無法になるとは思っていなかっただろうに。
「運営も性格悪いな」
「そうだな」
私たちが置かれている状況を、絶対的安心な立場から愉快に見下ろしている運営を想像すると少しゾクゾクする。
いじめられてるみたいで興奮しちゃう。
「ま、運営の手のひらで踊るのも悪くないよね……」
「マゾヒストが……」