利用されている女
茂みから飛び出してきたのは女性だった。
女性が馬鹿でかい斧を振り下ろしてくる。私は双剣で受け流し、首筋に剣を突きつけた。人間の急所はここで、一撃では死なずとも瀕死になるぐらいのパワーはある。
「甘いね」
「バイクを寄越せえええええ!」
「お前ひとりか? 仲間はどうした?」
「待ってんだよおおおお!」
と、鬼のような形相で斧をぶんっと投げてくる。
私はのけぞり躱した。が、飛び掛かってきて私に馬乗りになってくる。そして、そのこぶしで私を何度もぶん殴ってきた。
あ、これやばい。すごくいい。
が、何発か殴られた直後にゼノが弓で狙撃し、女はその場に倒れる。
「麻痺の弓だ。死なずとも……動けないだろう」
「いい殴りでした……」
「抵抗せずにいたのはそういうことだったか。まぁいいがね。それより……仲間を見つけないと相当やばいぞ。これは多分エンジニア役のほうだ」
「だろうね。クルー役が死んだらバイクを盗めなくなるし、これは捨て駒で来たって考えてもいいけど、奪うためならどっか近くに隠れてるはず……」
「捨て駒じゃ……ないもん……」
「だったらなぜ助けに来ない? どっかで見てて仲間意識があるなら助けに来るはずだろう」
「もう片方の仲間はいたって冷静のようだね。んじゃ、移動するしかないでしょ」
私はバイクにまたがりアクセルを吹かす。
するとイケメンそうな男が飛び出してきたがもう遅かった。ゼノはサイドカーに乗れていないが、サイドカーに捕まっている。そして、よっといって乗り込んだのだった。
「あれ……本当に捨て駒だったと思うか」
「捨て駒ではないだろうな」
「やっぱそう思う? まぁ、そうだよな。作戦としてエンジニア役が最初に突っ込むのは理がかなっている」
エンジニア役が二人倒せるに越したことはないし、クルー役が死んだらバイクを奪ったところで運転ができない。
クルー役以外はバイクを運転できないからな。その点、エンジニア役はカスタムができなくなるというのはあるが、死んでもバイクを奪うことができる。
作戦としては非常にアリだ。
「だがしかし、やられて黙っているというのも非常に気に食わん。捨て駒ではないにせよ、作戦のパーツの一つとしてか見ていなさそうなのに腹が立つ」
「男、随分なイケメンだったからな……」
「イケメンが全員性格悪いわけではないだろう」
「それは確かに」
だが、あんな見た目をしていたら誑かして利用するなんてことは容易だろうな。
「だけど……男も女も、見た目がいい人ほど他人を利用できるのは確かだよ」
「君が言うか?」
「私も見た目いいほうだとは自覚はある。ただ他人を利用することはしない」
「だろうな。君の性格的に」
「ああいうの見ると、ものすんごく嫌な気分になる。どっか安全なところで少し眠りたい。眠って忘れたい」
「そうしたほうがいいだろう」
くそ、本当に嫌なもん見た。




