肉ぅ!
火を起こして肉を焼く。
うーん。こういうのすっごい好きなんだよな……。アニメとかでも見てこういう骨付き肉って絶対うまいと思う。
肉の外側がこんがり焼けたので、私は肉にかじりついてみた。
「ん!」
「これは……」
この噛み応えとほどける肉繊維。
肉汁も肉汁でとても上品で……。
「うま……」
「いい牛肉の味だな」
これはうまい。
ゲーム内というのがちょっと惜しい。こういう肉を現実でも食べたいな……。でも、こういうのってほんっとに高級店に行かないとないんだよな。
……行くかぁ。金はあるし。
「だが……僕はチープな肉のほうが好きだ」
「そうなの? 高級なのよくない?」
「いいが……。僕自身、乱雑に盛られた肉の山をトングで金網に乗せるのが好きなんだ。高級店だと揃えられているからな……。そういう楽しみがない」
「そういうのもあるか」
「あと、チープなところだとそこまでマナーを気にしないでいいというのもあるだろう」
それはある。
「ネギ塩タンを頼んで、タンでネギをまいて食べる。これがたまらなく好きだ。僕自身、ネギ塩がものすごく好きというのもあるがね」
「わかる。ネギ塩すげーうまいよな。レモンとかもあると最高」
「いい理解者だ」
刻まれた大量のネギを薄い牛タンで巻いて食べる。これがたまらなくうまい。
そもそも、焼いた肉にネギが強すぎる。
「ごはんも丼で来て……肉の味が口の中に残っているうちに掻っ込むのさ。焼肉は上品じゃなくていいんだよ。野蛮なくらいがちょうどいい」
「そうだな……」
肉を焼いて食べるというのは古来からある料理方法だ。
それはもう、はるか昔から。昔はもうそれこそ野蛮であったために肉を焼いて食う行為は野蛮なくらいがちょうどいいとは言えているかもしれない。
「こう、チェーン店とかじゃなくて個人経営の焼肉店とかさ、七輪のところだったり小さい焼肉用のコンロだったりするじゃん? あれってよくない?」
「わかるか! いいだろうあれは! 焼き網が小さくて大量に物を乗せることはできないが……。だが、そういうところはうまい! 実に話が分かるな!」
ゼノって結構気高くとまっているとみていたが意外と庶民寄りの感性をしている。親近感があるな。人気作家がここまで焼き肉を語るとは。
視聴者もものすごくそそられて焼肉を食べたくなったとか飯テロやめろとか言っていた。
「っと、何か来るようだ」
「楽しい時間を邪魔しやがって……。僕たちのものを狙う不届きものならば倒すのみなのだが」
私たちは武器を構える。
まだ肉はあるし、多少動いて減らしてもまた食べれば大丈夫だろう。私は双剣を構え、茂みから誰かが、何かが出てくるのを待った。