警戒せよ
林を突っ切ってきて、なんとか中央の道に戻ってきた。
さすがにバギーを選んだ人たちは全員突破していったらしく、バイク乗ってる人や、バイクを壊されて歩いている人も見かける。
「しょうがない。ここじゃバイク降りられないか」
「このまま一気に町まで向かうしかないだろう」
私はアクセルを思いっきり回す。
そして、街の景色が見えてきたのだった。ポイントを稼ぐとかそんなことは考えずにただただ街につく。
街の中をバイクで走ると、ここで休憩しているバギーの人や、ポイントを交換しようとしている人たちも見かけた。
「さすがに疲れるね……。ここまで警戒を怠れないのは想定外……」
「このレースは無法だからな。気を張っていないと厳しいだろう。それに、信じられるのはペアのみ。周りは敵だとなるとなおさらだろう」
「これからどうするかな……。燃料は次の街まで持ちそうとはいえ……。序盤でいろいろとカスタムパーツを交換する予定だったんだけどそれどころじゃないな」
「待っているだけでもきつそうだ。この街はスルーしていくのも一つの手ではあるだろう」
「そうなんだけど……。やっぱさ」
「なんだ?」
「飯食いたいじゃん」
このイベントには新たな試みというか、今後きっと追加されるであろう満腹度なるものがある。リアルに近づけるために実装されたんだろう。
おなかがすくと死にはしないが、ステータスが減る。満腹度が50%を切ると、徐々にステータスが下がっていく仕組み。
そして、これは動いた量に比例して減っていく。
私のような双剣使いには一番きつい。双剣が一番動くから飯食う量が増える。
「厄介だな」
「だろ? 飯を食わないとさすがにね……。双剣使いは飯の燃費が悪い」
「じゅんぺーはなるべく戦わせないほうがいいのだろうか」
「それしてもいいけど、不安じゃない?」
「たしかに。僕一人では無理な敵が多いだろう。じゅんぺーはプロゲーマーだからね。僕よりは腕前は相当上なはず。そんな戦力を失うのは僕にとっても大きい不安要素となるだろう」
「だから、食べよう」
「店はあるのか? 金は?」
「ミノタウロスがドロップしたミノタウロスのミノとかを焼いて食うんだよ。これはポイントにもなるけどしゃあない」
このレースは本当に過酷を極めるだろう。
満腹度の管理、他者への警戒。イベントごときにこんな無法にしなくてもいいだろうとは思うが……。
こういう風になったのは運営にこういうのが見てみたいやつがいるからかもしれないな。
なんとなく、わかる。そういう変態性を持つ人間が運営にはいる。私も変態だからわかる。
「どっかで火をおこそう。なるべく目立たないところで……」
「森の中がいいんじゃないか?」
「もいいけど煙で一発でばれるだろうな……。まぁ、仕方ないか」
少し戻って火をおこそう。
奪おうとするプレイヤーは私たちが全力で叩き潰すだけだ。