天邪鬼
妖鋼石が採掘できる場所にやってきた。
パルツェはつるはしをもって、元気よく採取に向かう。
「金花猫、いるか?」
「いる……。匂う……」
金花猫は警戒を怠っていない。
というのも、この鉱山に入った途端、魔界の奴らのにおいがするといっていた。これは戦うフラグなんだろうけど……。こんな狭い鉱山で戦うのは避けたいところだが。
「パルツェがいった方向……。そっちから匂う……」
「ってことはやべえじゃん!」
もしかしたら出くわすかもしれないってことだろうが!
私は走ってパルツェのもとに向かう。開けた場所に出ると、パルツェは何か妖怪と話しているようだった。
黒い体の鬼。金花猫はパルツェとその鬼の間に割り込む。
「悪鬼……!」
「あん? 金花猫じゃねえか。てめぇ、玉藻前を裏切ってここにいやがったのか?」
「そんなことはどうでもいいのにゃ! お前……お前がまさか侵入してくるなどと……!」
「まぁ待てよ。俺はさっきこいつから面白い話を聞いた。飛行機を開発しようとしてるんだってな」
「そう! 面白そうでしょ!?」
「鉄の塊が空を飛ぶ。俺だって見てみたい。だから戦うのはやめようぜ。俺は第一そこまで人間に恨みはねえからよ。それに……」
悪鬼と呼ばれた鬼が後ろを振り返る。
「玉藻前は封印されちまってるしよ、統率者が誰もいなくて魔界が荒れている。俺は平和主義なんでね……。あんな魔界には愛想が尽きたぜ」
「……信じていいのにゃ?」
「ああ。なんならパルツェつったか。そいつの妖鋼石採掘を手伝うつもりだったんだよ。パルツェ、俺にも見せろよ。俺だって飛行機が見たい」
「もちろん! 飛行機は完成させるよ!」
「がはは! ここよりあっちのほうが採れるぜ! 力作業なら俺のほうが向いてるからよ、どんどん掘ってやろう!」
「頼もしいよ!」
と、二人はさらに奥のほうへ消えていった。
金花猫は信用していいのかわかっていないまま、一応監視してくるといって向かっていった。私も向かおうとしたとき、背後に気配を感じる。
背後から、なにかが襲い掛かってきたのだった。
「悪鬼の野郎……。あいつも裏切りやがって……」
「鬼?」
鬼にしては小柄な体躯だ。
だがしかし、ものすごく強そうだというのはなんとなく理解できた。
「お前も! 悪鬼も有罪! この天邪鬼様が直々に処刑してやるでの!」
「天邪鬼……」
あれか。
多数派の意見に逆らうひねくれもの……。ひねくれものの鬼と戦うことになるらしい。戦いがあるのはなんとなくわかっていたがこいつとは。
天邪鬼は私と正反対だぞ。
「今の私は無敵に近いぞ。降参するなら今が最後だ」
「その自信はどこから来るのか! 笑っちまうな!」
しょうがない。
さすがに負けるわけにはいかないだろう。クエストだし。ダメージ受けて気持ち良くなりたいという欲があるが……。最近、欲求不満だし。
だがここは理性で我慢するとしよう。私は鋼水の糸を放つ。糸は天邪鬼の腕に巻き付いた。
「ふんぬっ!」
「おわっ!」
私は天邪鬼を地面にたたきつけた。