YeyTuberになるためには
昨日はいろいろと検証で終わった。
わかったことは変身は魔力を結構消費してしまうので乱発は不可能、また、変身で消費したMPはMP回復薬でも回復はしないという特殊仕様があった。
そして、蜘蛛女に変身するより龍に変身するほうがやはり消費MPは多い。
「つきました。情報科学専門学校です……。代金は……」
「カードで」
私はタクシーで専門学校にやってきていた。
都内のある情報科学専門学校。新たにYeyTuberになるための部門が設立されたらしい。その講師として私が呼ばれたということだ。
なぜYeyTuberになろうとするのか。あまりいいものではないんだけどな。
私は専門学校の中に入り、職員の人にあいさつをすます。
「初めまして。じゅんぺーと申します」
「いやぁ、初めまして! 私はここの校長を務めております明田と申します! 今回講演の依頼を受けていただきまこっとに! ありがとうございます!」
「ええ……」
「未来のYeyTuberたちが教室でお待ちです! ささ、こちらへ!」
「いいですけど、私はそこまで優しいことは言いませんからね」
「ええ。現実を突きつけるのも一つのことです。それでもなお、現実を知ってもなお、目指せるというのなら本物でしょう」
「……わかってますね」
明田という男性はわかっているようだ。
私は夢を教えに来たわけじゃなく、現実を教えに来ただけ。それを理解しているのか、現実を突きつけてほしいという依頼内容だった。
私は教室に向かうと、若い男女が教室で待機していた。こんだけいるの? もっと少ないと思っていたが。
まぁいいさ。
「今回の講師は特別で、大人気ゲーム配信者であるじゅんぺーさんに来てもらった!」
と、講師の先生が言うと、「すげー」という声が沸き上がる。
私は最初に自己紹介を済ませることにした。
「私はじゅんぺーです。知らない方もいるとは思いますが、私は主にゲーム配信を主軸として活動しています」
私はバッグからパソコンを取り出し、プロジェクターにつなぐ。
作ってきた資料も一応あるからな。
「YeyTuberを目指している若者に今回は現実を教えることにしました」
「現実……?」
「YeyTuberを本気で目指したいのなら、現実は知っておくべきです。夢ばかり見ていてはいざ、なってしまったときに理想と違うなんて思ってしまうかもしれませんからね」
私はさっそく作ってきた資料を見せる。
「まず初めに……。そうだな。YeyTuberで成功するとは絶対に限らないという話をしましょうか」
私は成功する秘訣は語らない。
私は淡々と現実を突きつけていく。生徒たちの顔が少し険しくなっている。夢見る時代はとうに終わっている。
動画投稿して人気者になりたいという欲はあるだろうけれど、その人気者になるまでだって難しい。
「私みたいに動画投稿で食えるようになるのはごく少数の人間なんだ。だからこの職業は博打打ちに近いんだ」
「博打……」
「売れるのも運、支持されるのも運。数多もの動画がある海の中で自分の動画が必ず見つけてもらえるという幻想は捨てたほうがいい。多分この中にも自分で配信してみたり、動画投稿してみた人もいるはず。どうだった?」
「あー……えっと、同接が3人とか……だったり……。友達でしたけど、見てくれてたのは」
「再生回数が二桁……です」
「そういうことだ。今動画投稿サイトはたくさんの動画に溢れてる。自分と企画が似たり寄ったりなのが多い。その中で必ず見つけてもらうにはどうしたらいいのか。サムネとタイトルで引き付けるしかないわけだ」
「はい……」
「そして、無名でも大変だが、有名になるという弊害もあるものだよ。私の場合、例えば〇〇が嫌いだって具体的に言うと大変なことになる。ましてや人の名前だったらね。有名な私が嫌いなんだから叩いていいという人もいれば、私はその人が好きなのに!って叩いてくる人もいる。
有名になればなるほど、自分の嫌いなことを発言しづらくなる。嫌いなものは嫌いでいいが、あまり嫌いだと発言するのは好ましくない」
まぁ、私は結構嫌いだとは言ってるような気もするが。
私はどんどん動画投稿の厳しさ、有名になることの辛さを語る。成功したところでそこまで幸せじゃないということを伝えるのみ。
いや、うん、まぁ、私は割と幸せなほうなんだけど。好きなことしてるだけで金もらえるし、なんならマゾヒストっていう性癖が視聴者に受け入れられてるし。