商人を探せ!
ファルメルに到着し、その緑色の髪をした行商人を探すことにした。
ファルメルの街は三区画に分かれており、職人などが工房を構える職人エリア、人々が住む居住エリア、そして、商人などが物を販売する商業エリア。
商業エリアと呼ばれる区画にいる可能性は大いに高い。行商人だしな。
私は商業エリアにいって、道行く人に聞いてみる。
「すいません、ここらへんで緑色の髪をした商人の方はいらっしゃいませんか?」
「緑色の髪? いや……」
「見てねえよな?」
「見てないっす」
三人組が見ていないと答える。
緑色の髪だから目立ちそうなもので見られていないということはまずありえなさそうだが。
「なんだ? 探してんのか?」
「人探しならこのおいらたちにお任せっすよ!」
「あ、探してくれます?」
「ちょーっとお金はいただくがね……」
「うーむ」
頼んでもいいが……。
いや、いいか。
「私ひとりで探すよ」
「そうっすか……」
「ちっ、客だと思ったのによ」
ごめんね。
だがしかし、この商業エリアで見られてないとなるとどこにいるかわからないが。まったくもって見当がつかない。
緑色の髪をしてて気づかれないなんてことあるもんかよ。髪の色を変えたとしか考えられないが、髪の色を変える理由なんてないだろうに。
「商人を探してんならここか……あるいはファルメル伯爵が呼んだ行商人ぐらいだろ」
「ファルメル伯爵が呼んだ?」
「うちの領主は世界各国の珍しいものを集めてるからな。もし探している商人がここにいないんなら呼びつけた商人の確立のほうが高いぜ」
「その線があったか……。ファルメル伯爵の屋敷は?」
「居住エリアの真ん中にある。この領都で一番大きい屋敷だからすぐにわかると思うぜ」
「わかった! 行ってみる! ありがとう!」
私はその情報を頼りにファルメル伯爵の屋敷に向かってみる。
居住エリアの一番大きな屋敷……となると、あれだな。私の目の前に見える白い壁の豪華な屋敷。あれがファルメル伯爵の屋敷だろう。
私は一直線に屋敷に向かう。
屋敷は警備がきちんとしており、鉄の門があった。
門の外からのぞき込むと、荷物を載せた貨車のようなものがロープをぐるぐる巻きにしておかれている。
私がのぞき込んでいると、屋敷の中から緑色の髪をした男と、少し小太りの男が出てきた。
「いやぁ、いい取引だったよ。こういう品ぞろえは私としては大満足さ」
「こちらこそありがとうございました」
「また、なにかあったら頼むよ。珍しいものは……と、お客様かな?」
のぞき込んでいるのがばれた。
その小太りの男性は門を開け、私にようこそと告げてくる。
「あ、伯爵のお客様ですか?」
「いや、私は緑色の髪のほうに用があり……」
「私に?」
訳が分からないようだった。
「あなたが来るときになにか影に襲われたと」
「ああ、そのこと! たしかに襲われましたが、それがなにか?」
「なに!? 襲われたのか!」
「え? ああ、はい。生きてるんで言うまでもないかなって思ったんですがね……」
「馬鹿者! 魔物に襲われたとならばその魔物を討伐せねばなるまい! 危険な魔物だったら領民に被害が及ぶかもしれないだろう!」
「あ、そうですね……。申し訳ございません……」
「その魔物の特徴とかはわかります?」
「そうですね……。逃げるのに必死だったのであまり詳しい形はわかりませんが……虫……のような魔物でした。ブーンと羽音がうるさくて……針のような鋭いものがついてまして……」
蜂、だな。
となると、アリスタイオスだ。
「それは蜂ではないか?」
「ああ、蜂の針!」
「蜂の魔物……。ふむ。そんなのいたかな。いるにはいるがあの荒野に出現するようなものではないが……。まあいい! すぐに討伐依頼を……」
「私が倒してみます」
「貴殿が?」
「特徴を聞きたくてここまで来たので」
「そうか。ならば頼む! 討伐のあかしを持ってきたら報酬を出そう! 倒してくれ!」
《クエスト:謎の影の討伐 を受注しました》
《アリスタイオスが出現しました》
やはりか。
「蜂の魔物の正体がわかれば教えてほしいのだが……」
「えっと、正体の目星は一応ついています」
「まことか? 教えてくれないか」
「はい。古代種のアリスタイオスという蜂です」
「古代種……!? 生きているのか!?」
どうやら古代種というのは知っているようだ。
「古代種というのははるか昔に絶滅したとされるものですよね? 生きてるんですか?」
と、信じないようなので私はアトラク=ナクアを召喚する。
「これ、私がテイムした魔物ですが、これも古代種です」
「おい、魔物図鑑を!」
「は、はい」
伯爵は魔物図鑑を開き調べていた。
「たしかに、特徴は同じだ。アトラク=ナクア……。古代種だ」
「生きてるんですか」
「絶滅したと我々が思い込んでいただけなのか……。古代種。はるか昔の強い猛烈な環境を生き抜いていた猛者……。実力は計り知れないな。気を付けて討伐せよ!」
「はーい」
私はとりあえずウヅキたちのところに戻ることにした。