古代種討伐せねば
アナウンスが終わった後、私は急いで配信を始めた。
「配信すんだべか?」
「だってこういうの配信しなきゃ勿体ないじゃん! マジで出会えるとは思ってなかったしさァ!」
私は配信を開始した。
予告もなく、突如とした配信だったが、ぞろぞろと人が集まってくる。
『またゲリラ配信で草』
『ほかのV見てたのに配信通知来たから来た』
『なんかあったんか?』
人が集まってくるのは私のブランドのおかげだろう。
私は今起きている状況を説明する。ワールドクエストを受けたことなどを。目の前にいる天使はウヅキからパンをもらい、もむもむと涙を流しながら食べていた。
ごくんとパンを飲み込み、立ち上がる。
「食べ物を恵んでいただきありがとうございますぅ。下界のお方……。このご恩は忘れません」
「いいよ。それで、なんで行き倒れてたの?」
「あ、そうでした! 神様からの勅命でぇ、神界がピンチだから下界から強いものを連れて来いということでぇ」
「ピンチ?」
「数百年前に神様の手によって直接封印された悪魔が解放されちゃって……」
となると超強いやつだな。
さすがに神の手で直接封印するような悪魔に私が勝てるわけがないし。その悪魔を倒せるレベルまで成長して倒せばもしかしてワールドクエストをクリアできるということか?
「それに勝てるような人物を探して来いということで各地に天使が派遣されたんですぅ」
「なるほど」
「あなたも勝てそうな見込みありますねぇ。ただ、レベルが足りない……」
だろうよ。
「なら、私が言う試験をクリアしてほしいのです。クリアして、勝てる見込みができたのなら……私はあなたを連れて神界へ」
「オーケー。試験ね」
「この魔物たちを倒してきてくださいぃ。ですが、普通には出現しませんのでご注意を……」
と、渡された紙を見る。
魔物辞典で見る魔物の中でものすごく高ランクの魔物を狩ってこいということだった。だがしかし、天使曰く、普通にはこの魔物は出現しないのだという。
それだけ言い残し、去っていった。
「普通に出現しないということはなにか出現条件があるってことかよ……」
ご丁寧に生息地までは描かれている。
まず私たちが討伐に向かうのはここから一番近い王国国境線の魔物、Sランクモンスターのアリスタイオスという蜂の魔物。
図鑑曰く、女王バチがSランク。そして、ヒストリアが見ていた図鑑にも載っていたが、このアリスタイオスも古代種らしい。
普通には出現しないということは、その国境線近くでクエストを受けなければ出現しないということだろう。
「とりあえず、この蜂討伐だな」
「蜂さんですか」
「養蜂でもするんか……?」
「倒すんだよ。アトラク=ナクアと同じ古代種だから相当強いぞ」
アトラク=ナクアがあの強さなのだから相当強い。