変態
私がマゾヒストになったルーツをすべて語った。
周囲はドン引きしている。
「いじめを見て見ぬふりか。君も立派な加害者ではないか」
「いやいや、マゾヒストに開花してからは代わってもらったよ? 宇多田くん喜んでた」
「むしろ変わるのもどうかと思うんですケド」
でも殴られて興奮するの見て真島くんいじめやめたんだよな。
宇多田くんにもちゃんと謝って和解していた思い出がある。修学旅行の時は一緒の班で仲良くしていて、どちらも楽しそうだった。わだかまりがなくなっていたのはいいが殴ってもらえなくなったのは悲しかったな。
「まぁ、昔の私は平和主義で自己愛性が強かったから。今は絶対いじめとか容赦しないよ? うん」
「昔は昔だから別にいいとは思うが。さてと。原稿作業は終わりだ。雨も今は落ち着いてきているし、アシスタントは帰れるがどうする?」
「あ、弱くなってる。でも先生! 終電ない!」
「あ? ああ、もうそんな時刻か。ならば南さんは泊まっていくといい」
「せんせーありがとうございます! あと、泊まるなら私の描いた漫画にアドバイスをもらいたいんですよね!」
「構わないよ」
「じゃ、俺は帰りますよっと。家近くですし」
「じゅんぺーさんと離れたくない!」
「染岡。帰るぞ」
と、染岡と呼ばれた小太りの男性は阿波さんに連れていかれたのだった。
ここに残ったのは私と南さん、瀬野さんの三人。瀬野のハーレム完成だな。
「……よっし! 編集終わり!」
「早いね」
「そりゃ大体が字幕つける作業だし?」
字幕つけるだけなら早く終わる。
それにしても……南さん、なんか瀬野先生と距離近いよな。
「瀬野って南さんと付き合ってるの?」
「ぶふっ」
「いや、付き合ってはいない。お互いに恋愛感情はない」
「そうですよ……。友人としてならアリですけど恋人にしたら性格が面倒ですから」
「ほぉーん。付き合ってたら茶化してやろうと思ったのに」
私はパソコンを閉じる。
「風呂ってあるかい? あるなら入らせてほしいんだけど……」
「構わないよ。すでに沸いてあるはずさ」
「ならじゅんぺーさん、一緒に入りましょー!」
「ん、いいよ。でも一般家庭に二人分は入れる浴槽ある?」
「先生の家のお風呂は広いんです! 先生自身お風呂好きですから改装したらしくて!」
ほえー。
私はとりあえず脱衣所までいって服を脱ぐ。そして、浴室の扉を開けると、人が四人ぐらいは入れそうなでかい浴槽と、ものすごい広い浴室。
すっげ。こんな広いの?
「マンションだろここ……。改装して怒られなかったのかな」
「ここ、先生の知り合いが経営しているマンションらしくて費用出すならいいって言われたらしいんですよ」
「ほえー」
「それより……えいっ」
と、南さんが私の胸を揉んでくる。
「柔らかいっしょ?」
「反応がつまんない……」
「こういうの好きだから。って、南さんタトゥー入れてるんだ」
「あ、苦手ですか?」
「いや……胸の上に太陽のタトゥーって。漫画みたいだなって」
「わかります!? こういう痣って主人公っぽくないですか! それでタトゥー入れたんです!」
「よくあるよな、そういう設定」
ジョースター家の首の後ろには星形のあざがある、とかね。
「それにしても……じゅんぺーさんまじでプロポーションいいっすね……。くびれがあって、胸の大きさも大きすぎず小さすぎずで、高身長で……。世の女性の理想の女性像を体現してますよね」
「そう?」
「こんなに美人で性格に難があるとはいえ優しいしまじで完璧すぎます……。私も美人に生まれたかったなー」
「まぁ……南さんは可愛いっていうより美しいっていうほうが似合うから美人だよ」
「ほんとですか!?」
「うん」
そう南さんと話していると。
『せんせー、やっぱ雨強くなって引き返してきました……』
『ふむ。無理だったか』
『先生の着替え貸してくださーい……』
『俺は風呂入ってきまーす……』
『あ、まて、風呂には……』
と、その時扉が開かれる。
びしょ濡れの服を着た阿波さんが私たちの裸を見て固まっていた。
「お、入るか一緒に」
「馬鹿言わないでください! 変態! ラッキースケベはマンガだけにしておけボケー!!」
「ご、ごめんなさいっ!」
「じろじろみんな変態!」
「申し訳ありませんでしたー!」
阿波さんは走り去っていく。
そして、南さんは扉を閉めて鍵を閉めた。最初から締めておきなさいよ。
「変態って私に言われたみたいで興奮する」
「ここにも変態がいるー! 同性だからたち悪いー!」