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diary〜ひびのおと〜  作者: 菖蒲P(あやめぴー)
第一章
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四話 intimate〜友達、繋がり〜

翌日の朝、早速マミコと瑞希は日直の担当になっていた。 そのためいつもより少し早く学校に向かっていた。 玄関に着いたが誰もいない様子だ。そのまま教室に向かうと、 二人の耳に何やら楽器の音色が聞こえてきた。


「何?バイオリンみたいな…?」


「うちの教室からじゃない?」 二人は早歩きで教室に向かう。電気はついていなかったが、明らかに楽器の音色が響いていた。


「失礼しまーす」 瑞希が恐る恐る扉を開くと、二人の男子生徒がいた。その光景にマミコと瑞希は口をぽかんと開けた。そこにいたのは情一朗と樂。 樂は二人の方を一瞬見て、すぐに情一朗の方に向き直った。情一朗が樂に 「待て」と合図をした。


「二人には説明していなかったな。 古藤田は俺のバイオリンが好きだから、たまに聴かせてやっているんだ。」 「は、はぁ…日直なんだけど、邪魔だった?」


「いや、いい。 準備を進めてくれ。 そろそろ演奏をやめるから。もういいな、 古藤田。」


「…はい。」


樂は名残惜しそうな顔で俯いた。 マミコは相変わらず樂に見とれていた。 先ほどまで演奏を聴いていたの顔は、 いつもの下がり眉は変わらないものの、少し明るく見えた。樂のいつもと少し違う表情を見つけたマミコはさらに胸の高鳴りが止まらなかった。


「にしても、情一朗くんってバイオリンなんかやってたの?」 瑞希が問いかける。


「一応弦楽部の部長も務めている。 生徒会で忙しいことが多いから、頼れる副部長に色々任せきりではあるが。」


「部長なんだ!この間の説明会、司会進行してたよね?」


「副部長の二年生が、俺に任せてくださいっていつも言うから、どちらかというと生徒会を優先しているんだ。 あいつはとても頼り甲斐があるから説明会くらいは任せても大丈夫だったから。」 と情一朗は答えた。


七時半頃から、同級生が次第に集まってきた。 マミコたちの次に教室に入ってきたのは遙。情一朗を見つけるなり、「情一朗!!おっはよー!」と強引に腕を肩に回して自分の席の方に引っ張っていった。


「そういや瑞希とマミコにはまだ話してなかったけどさー、お前らと栄が幼馴染なのと同じように、俺と情一朗も物心ついた頃にはもう友達だったんだぜー!なー情一朗ー!」


「少々暑苦しいが、まぁ悪くはないな。」


とマミコと瑞希にも説明をした。 「最近は情一朗仕事で忙しそうだったから、あんまり声かけられなかったんだけどな。 そろそろ構い倒してもいいよな!?」


「ほどほどにな。」


二人はとても仲が良さそうに見えた。 マミコも微笑ましさに頬を緩めた。


今日からクラス委員について、クラス内で決める時間が設けられる。相変わらず律子はマミコと樂をいかにしてくっつけるかを考えていた。 でもマミコの方は、 「不器用だから」とあまり委員への立候補に乗り気ではなかった。瑞希の方はというと、委員になっといた方が受験に有利そうだから、という理由でどこかの委員になるつもりだった。クラス委員長を務めるのは生徒会長も受け持つ情一朗。副委員長は大輔だった。二人の司会進行でどんどん役職が決まっていった。


瑞希はあまりハードそうじゃない 『図書委員』を狙っていた。


「図書委員希望生徒は挙手をお願いします。」情一朗の声に瑞希はすぐさま挙手した。すると、目の前に座っている白髪、優気も挙手した。瑞希はどきりとしたが、別に同じ委員になるくらい…と思い、そのまま図書委員に決定した。ずっと前を向いていた優気は一度くるりと振り返り、「よろしくね」と声をかけた。瑞希は日に日に優気に対して、なんか波長が合わないというか、見ててイライラするというか。そんな気持ちが募っていた。


最後に募集をかけるのは『体育委員』。ハードそう、という理由であまり人気のない委員だ。


「体育委員希望生徒は挙手を。」という情一朗の声に、 しーんとする教室。 しかし、少し遅れて一人挙手をした。栄だ。


「お、俺でよかったら!」


「皆さん、異議はないですか?」


大輔の問いかけにもクラスからは声が聞こえなかった。栄はこれで体育委員に決定した。


「栄!?お前なんで体育委員なんかになったんだよ!あれか、モテたいからか!?」 遙が離れた席の栄に呼びかけた。


「うるせー!気分だ気分!!あ、それともう一ついいですか?」


遙の呼びかけに応え、もう一度情一朗にも声をかけた栄。


「どうした?」


「俺が体育委員に推薦したい幼馴染がいるんですけど! おいマミコ!お前だ!」 「えっ!?ちょっと金ちゃん!?」


栄に促されるがまま席を立ち上がったマミコ。 「マミコさんは、体育委員になっても大丈夫ですか?」


「ええっと…そのぉ…」


マミコが判断しかねていると、律子も挙手をした。


「はい!私と樂くんも体育委員になるので!これで男女四人!ちょうどいいですよね!」


「ちょっとりっちゃんいいの!?」


「いいってことよ!」


樂も律子に巻き込まれ、色々あって四人は体育委員に決定した。


その後もクラスのスローガンを考えたり、新学期の目標 など、慌ただしく一日が過ぎていった。一時間目から六時間目まで、普通の授業が始まるのは来週からだ。それまでは色々と準備に追われることになる。 部活も来週月曜から正式に始まる。最後まで考えた結果、マミコは部活には入らないことにした。 自分にはできないものばかりなことと、やはり樂を見ていたい気持ちが大きくなったからだ。


一週間が過ぎ、やっと土曜日が訪れた。地元に戻ってか ら、密度の濃い日々を過ごしていた実感があった二人はヘトヘトだった。 起きたのは朝十時。 そんな二人の元に一本の電話が入った。


「朝からなんだよ〜もしもし?金ちゃん?」 瑞希が電話に出た。相手は栄だった。


「はいはいはい…んじゃ、マミコ向かわせるから。はーい。」


一度自分の名前が出てマミコは電話口に耳を寄せた。そのまま電話が切れた。


「どうしたの?私の名前出たよね?」


「金ちゃんがマミコと遊びたいんだってさ。行ってあげなよ。」


正しくは、栄は二人を誘って遊びたいとの電話をしてきたのだが、瑞希はめんどくさがってマミコだけを向かわせると勝手に決めたのだ。


「えー!?私今日休む気満々だったのにー!」


「金ちゃんが寂しがるから!金ちゃん昔から休みの日も誰かと遊ばなきゃ気が済まない子だったでしょ?相手してあげて!」


「んもう、仕方ないなぁ…」


マミコはとりあえず髪を直して服を着替えるところから始めた。

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