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序章
必死に走って彼の部屋に向かっていた。
これから起きる悲劇を防ぐために。
彼から預かった鍵で開錠するとき、手が緊張と恐怖で震えた。
こっそりと部屋に入り、そこに保管されていた自作の手芸品を手に取る。
これを使えば、みんなを守れるかもしれない。
彼が作り方を教えてくれたとき、彼の無骨な手はまるで魔法のように滑らかに動いていた。
それだけではない。作る楽しさも教えてくれた。
思い出すだけで、じんわりと目頭が熱くなる。
彼と出会ったのは、たった数日前。あのときも、わたしの手は微かに震えていた。