ファストフードと割烹もしくは料亭
ランチタイムに何を食べるか、立ち食い蕎麦、牛丼、或いはマクドナルドその他諸々、コンビニ弁当もか。
三食それでは健康的に良くない。それは、テレビを見ればしょっちゅうやっている。
これはファストフードという部類に入る。便利だし、金さえ払えば30分と待たずに(10分も待たないか?)飯は来る。混み具合によるが、牛丼屋に一時間もいるなんてことは並ばなければまずない。
最近は便利でドライブスルーというのもある。
さて、これはラノベにも言えるもので、ラノベは便利だ。
何故なら話に入りやすい、というか読みやすい。絵もある。唯一の難点と言えば表紙を余り他人に見られたくないことだ。
要するに、ラノベはコンビニ弁当だ、ということだ。
コンビニ弁当の中身はありきたりだ。唐揚げ、海苔弁、カツ、等々、不味くはないが、劇的にうまいということは無い。おいしいが、やはりこの程度という味だ。
つまり、ラノベは読んだところでよくあるような展開に陥ったりするのだ。
言い換えれば楽だが、ゲーム要素は唐揚げ、魔法とか異世界はカツと。勿論ハンバーガーの各メニューに準えても構わない。
だからどんなラノベも同じような味(感想)がするし、そこに大きな感動はほぼ無い。
しかし、いくらハンバーガーといえど、異端児はたまに現れる。
チーズバーガーやら、照り焼きバーガーやら、よくあるメニューではなく、例えばバンズが米になったり、パティが、肉ではなく、魚になったり、そういうことはラノベでも起こる。
それが異世界+ご飯とかそういうものだ。
ありきたりな魔王討伐とかから、スローライフという変換、そこに新鮮なものを感じて、それがよく売れるようになる。
しかし、なんでもバンズを米にすれば良いものではない。人は飽きる。飽きる癖に真似する。
ライスバーガーに味をしめた店舗はまたライスバーガーを売る。ハンバーガーショップならいいが、文学では致命的だ。
ライスバーガーが売れると知れば、他の作家もライスバーガーを作る。つまり、似たようなジャンルでラノベを書く。
そんなことになれば、かつては物凄く旨いように感じたライスバーガーも今までのコンビニ弁当と格下げされてしまう。
今のラノベ界はそれの繰り返しだ。
◆ ◆ ◆
夜、記念日のディナータイムに高級レストラン、或いは高そうな料亭に行く。
そこの料理は旨い。本当に美味しい。
ナントカカントカのナントカとか、ナントカのスープとか、名前は知らないけど、このフルコースの料理は全部美味しい。
料亭も同じだ、刺身とか、お造りとか、やはり美味しい。
あんまり自分の舌が肥えてないので頼りにはならないけど、ミシュランに載ったんだから旨いに決まってる。
そんなことはどうでもいいし、そもそも僕はミシュランガイドを読んだことはない。高級レストランにも最近行ってない。
だけれども、美味しい。それは、確かだ。
そういうのは文学にも言える。尤も、文学にはミシュランガイドみたいなものがなくて、書評集とか、店員からお薦めを聞いたりしなければならない。
それが純文学。
純文学にもジャンルはある。
ミステリー、サスペンス、ホラー、エンターテイメント等。
そのジャンルがフレンチやらイタリアンやら寿司、或いは焼肉だったりする。
寿司屋に行けば必ずマグロは出る。何マグロかはわからないけど、マグロというメニューはある。赤身とかトロとかと名前を変えてるかもしれないが。
だが、例えばAという寿司屋にあった「aセット」という寿司の詰め合わせがあるとする。(高級寿司屋で○○セットとか言う浮わついた名前があるわけないがここでは無視する。)中身はマグロ、イクラ、鮭、甘エビだとする。(果たしてこんなラインナップで、寿司屋が物を出すか知らないけど、一例として取ってほしい。)
次にBという寿司屋に行く。そこにも「aセット」という名前のメニューは無い。代わりに「bセット」というメニューがあるのでそれを頼む。中身はマグロ、イクラ、ホタテ、甘エビだった。
つまり、どの寿司屋にもマグロがあっても「aセット」は無い。ということ。仮に「aセット」というメニューがあってもその中身はマグロ、イクラ、鮭、甘エビとは限らない。
話を一気に戻す。
推理小説は大抵、人が死ぬ。人が死んで探偵とか刑事が犯人を探す。構図は同じ。(そんなこと言っては全ての推理小説作家に殴られそうだが。)
今まで散々酷く言ってきたラノベと変わらない。構図のテンプレがあるという点では。
今気づいたが、推理小説は純文学なのかわからないので、ここで僕のこの「ラノベアレルギー」において、純文学とはラノベではない、詩集や、エッセーではない物を指すことにする。
また脱線した。
純文学とラノベの違いはそこにある。
ここにきてサブタイトルの「ファストフードと割烹もしくは料亭」がいよいよ関係無くなって来たのでそれらしいことを言ってからにしよう。
ここからがまとめだから、今まで「コイツは何をいってんだ?」と思いながら読んでいた方もここだけ読めばすべてがわかる。
ハンバーガーショップを始めとするファストフード店には似たようなメニューが多い。このメニューというのが文学作品のこと。
ラノベというハンバーガーショップに行っても同じような作品が多く、味(つまり、内容)はほぼ変わらない。
しかし、変化が大きいこの業界ではライスバーガーというような異端児も現れる。このライスバーガーというのが新ジャンル。(最近で言うと「異世界+ご飯」というヤツだろうか。)
ライスバーガーはよく売れる。だからそれを真似してライスバーガーが増える。
そうなってしまうと、面白かったライスバーガーというアイデアもまた、世に跋扈する照り焼きバーガーとかと変わらなくなってしまう。
対して高級料理店にはやはり同じメニューというものがある。寿司屋で言うところのマグロがそれ。
しかし、それぞれの寿司屋のマグロの味は店ごとに違う。(といっても僕は、舌がバカなのでみんなが言うことをおうむ返ししてるだけだが。)
つまり、こだわりというのがある。
ある店では赤身のナントカを守るためにナントカという包丁でナントカという切り方をする。
しかし、ある店では赤身のウンタラを守るためにウンタラという包丁でウンタラという切り方をする。
そういうことだ。
それぞれに拘りがあり、手間暇がかかっているからそこの寿司は上手い。
それは純文学にも言えて、同じジャンルでも全然違う。そして大抵面白い。
それがラノベ味と純文学風味とラノベ風味と純文学味を見分ける方法だ。
ファストフード店や高級料理店とラノベや純文学との違いは値段の差で、買うならラノベも純文学もそんなに金額の差は無い。