第8話 『新たな刺客③』
黄国南区第二商業ホール。
黄国最大級のこのホールは日々何らかのイベントで賑わっている。
しかし、今日の賑わいはいつも以上なものであった。
建物内は勿論、外部にまで大量の人で埋まっている。
「山城礼握手会入場口はこちらなのじゃ!握手券一枚につき一人しか入場できないから注意するのじゃ!」
「おさないでー!よこはいりもだめだよー!」
入場口では柊姉妹をはじめとする数十人のスタッフが入場管理に手を焼いていた。
普通、握手会にこんな大規模ホールをまるまる貸し切らないだろう。
しかし、礼は国のトップ級のタレントなのだ。
握手会など開いたら国中からファンが殺到する。
本来ならそんなトップスターが握手会などしない方が良さそうなのだが、この件は軍からの命令なのだ。
軍の高官がハニートラップにて殺害された。
そんな不祥事、露見しては大変なことになる。
それを防ぐために礼の握手会を急遽開かせ、新聞の記事をそちらに向けるのが策略だ。
政治家の不祥事をタレントの不祥事の事件で上塗りする。政府の行う常套手段である。
◇ ◆ ◇
控え室。
「ダーリン失礼すりゅね~♥」
「···カンナ。その甘え方は外ではやめてって何度言えば···」
「大丈夫!今は誰もいないから!」
「そうだけど···。まぁいいや。ところで話変わるけど、凄い人の量だね」
「だね~。流石国のトップスター!」
「握手券って何枚ばら蒔いたんだっけ?」
「んと、確か2000枚だったかにゃあ?」
「2000···。え、それ私何時間握手され続けるの?」
「一応、一人15秒だから8時間ぐらい?」
「8時間···」
「私はずっと横にいるからね。疲れてきたら私のおっぱいを自由に揉んでいいよ♥」
「いや、結構です···」
「···あ、そうだ」
突然、カンナは何故か私の指をパクっとくわえた。
そして、何故かイヤらしい音をわざとたてるようにして、掌全体を舐める。
「ちょ、ちょっ!!何してんの!!!!」
「ちゅぱっ···、お掃除···ちゅっ···」
「それぐらい自分で洗うからいいよ!!!!」
私はカンナから手を振りほどいた。
手にはカンナの唾液が糸を引いていた。
「手がベタついたらいつでも私が舐めるよ♥」
「舐めなくていいわ!!」
「汗が出てきたらそれが例ええっちぃ場所でも舐めるよ♥」
「するなよ!!!!」
その時、突然ドアが開いた。
「···失礼しまーす。礼さん。まもなく握手会開場ですのでスタンバイお願いします。マネージャーさんも、最終打ち合わせの確認がございますのでお願いします」
「わ、わかりました」
「はい。解りました。直ぐに向かいます」
今の会話が聞かれてないか内心ハラハラの私に対して、カンナはもうすでに真面目モード。
「···お前のキャラの変化の速さはほんと見習いたいよ」
「なら、その方法を一回のえっちで教えるぞ」
「いや、いい」
◇ ◆ ◇
Topics29 【黄国南区第二商業ホール】
年に夏と冬の二回、高くて薄い魔導書(意味深)が大量に出品されるマーケットもここで開催される。徹夜待機は迷惑なので禁止です!
Topics30 【礼の握手券】
礼のポストカード1枚購入につき一口の応募券を獲得。
握手券獲得倍率は数万倍とか。
Chatting5 【髪型】
「礼っていつもストレートじゃよな?たまには気分転換にでも別の髪型とかしないのか?」
「別の髪型かぁ。正直、めんどくさいというか···。そもそもウィッグだし、いじれるのかなそこんとこ」
「ちょっと頭を貸すのじゃ。いじってやるぞい」
「はいはい」
「···やっぱり礼の髪はサラサラでいいのぉ。···ハァハァ」
「息荒くしてるところ悪いけど、それウィッグだから」
「大丈夫じゃ。私は礼の洋服だけでも三発はイけるのじゃ!!」
「あ、あはは···」
「さて、どんな髪型がええかの?」
「どんなって···。無難なポニテとか」
「無難すぎるの。もうちょっとないのか?」
「そう言われてもねぇ···。じゃあ、ちょっと変えてサイドテールとか?」
「サイドテールか。有りかもな。じゃあ結ってあげるのじゃ」
「出来たのじゃ」
「ん。···なんかあれだな。髪の毛が片方に寄ってる分ちょっと重いな」
「まぁまぁ。そこはしゃーないのじゃ。でも髪型変えるだけで大分雰囲気変わるの」
「だね。なんかちょっと幼く感じるよね」
「ギャップ萌えってやつじゃ」
「ちょっと違うんじゃ···?」
「ただいま」
「お、カンナ。お帰りなのじゃ」
「あれ?カンナ、今日は帰ってくるの早くない?」
「今日は有り難いことに会議が早く終わっ······」
「ん?どうしたの?」
「······礼のサイドテール···良い!」
「あ、ありがとう」
「なんか無性にムラっと来た。エッチしよう!!」
「それはダメなのじゃ!!!」
すみません大幅に期間が空いてしまいました。
ところで、もう2018年の半分が終わっちゃいますね。
早いものですね...