第6話 『新たな刺客』
黄国のとある遊園地。
休日なだけあって、遊園地入り口は待ち人を待っている人で溢れかえっていた。
そんな中、一際目立っている少女の姿があった。
ピンク色のフリフリのワンピース。
そして、長い髪の毛にはピンクの大きなリボン。
まるでお人形のような愛らしい顔。
そんな彼女は周りの目を引かないわけがない。
「あの子かわいい···。アイドルとかかな?」
「うーん。見たことないけど···、でもありゃ、芸能界入り間違いなしだね」
「なんかお人形さんみたいでぎゅーってしたい!!」
「わかるわかる!着せ替えとかもしたいかも!」
「礼ちゃんみたいなクール系もいいけどこういうキュート系もいいかも~」
「というかいっそ礼ちゃんにこういう服着てもらいたい!」
「うわなにそれ可愛すぎて失神しちゃうよ!」
「にしても本当に可愛い子だね。誰を待ってるんだろ?」
そんな周りの声は女の子に聞こえないように配慮しているようだが、そんなことはなかった。
(ふふふっ。やっぱり僕ってかわいいから視線集めちゃうね♪うんうん!)
◇ ◆ ◇
数分後。
可愛い女の子の前で一人の女性が立ち止まった。
「ごめん。待った?」
「ううん。だいじょーぶ!私も今来たところだヨ♪」
「よかった。じゃあ、いこうか」
「うん♪」
そして、女の子はその女性と腕を組み、遊園地内へと姿を消した。
だが、それを見ていた周りはその女性に驚きを隠せなかった。
その女性は紅軍黄国防衛隊司令部所属の河口旭副司令部長だったからだ。
やはりお偉いさんになると、こんな可愛い子を侍らすのか。と、周りは再認識を果たしたようだ。
◇ ◆ ◇
夕時。
日も傾き、空はオレンジ色に染まっている。
まもなく遊園地も閉園ということで人足は皆出口へと向かっている。
そんな中、先程の二人も恋人繋ぎで寄り添いながら歩いていた。
「久しぶりのデート楽しかったぁ♪」
「そうだね。最近、余暇がとれなくてごめんね」
「大丈夫だよぉ!あさひーもお偉いさんだからしょうがないよ!こーやってデートできるだけでも私は嬉しいよ♪」
「ありがと。やっぱり恵は優しい子だね。大好きだよ」
「私もだヨ!」
二人は軽くキスを交わした。
「ところでさ、このあとどーする?」
「近くのホテルのレストランを予約してあるからディナーはそこでって話じゃなかった?」
「ちーがーうー!その後!」
「その後?」
「うん···。夕御飯の後」
「え、それって···?」
「···えっとね。私たちもう付き合って一年じゃん?でも、その···、そーゆーことは疎かだったじゃん?だから···」
「え、でもいいの?そういうことは親に禁止って言われてるんじゃ···?」
「うん。でもね···。わたしだって好きな人としたいもん!もう我慢できないよぉ!···ねぇ。お願い。私のはじめてを···もらって♥」
旭は複雑な思いだった。
恵を抱きたいのは山々だ。
だが、まだ恵は未成年だ。
成人をとっくに過ぎている私が抱けば問題だろう。
更に私は軍の上位のポストに位置している。
恐らく未成年と交わったことが世間に流れば私の立場は失脚する。
だから、まだ手を出せない。
「···ごめん。やっぱり私は、」
恵のお誘いを断ろうとした瞬間、恵はもう一度旭の唇を奪った。
今度はただ触れるだけではない。
大人のキスを。
「んっ···♥くちゅ···んぅ♥」
艶かしい音が旭を包み込む。
その音は旭の理性を完全に崩壊させた。
「···ぷはぁ。···ねぇ?今日だけでいいから。だめ?」
「·········わかった」
◇ ◆ ◇
夜遅く。
二人は町のとあるホテルに来ていた。
勿論そこはアレ専用のホテルだ。
「シャワー先いいよ」
「···え?一緒に入らないの?」
「せっかくのはじめてだもん!ちゃんと最初はベットの中で触れあいたいかなーって♪」
「わかった。待っててね」
しばらくして旭はシャワーから出てきた。
彼女は裸の上にバスタオル一枚だ。
29歳というアラサーだがまだ肌のツヤは現役だ。···と、自分では思っている。
「おー!」
「···恥ずかしい」
「あさひーってやっぱり若く見えるよね♪綺麗♥」
「ありがと···、じゃあ次は恵がシャワーの番」
「うん。···でも、」
恵はそのまま旭をベットに押し倒した。
「え、?恵?」
「あさひーの裸見てたら私、興奮が押さえられなくて···。シャワーなんて浴びてられないよ···。だからいい?」
「恵···」
そして旭は恵を受け入れようと目を瞑った。
これから愛の営みが始まるのだ。
その開始の情熱的なキスを待った。
だが、
「あ”っ···!?」
苦しいッ!
な、何ッ!
息がッ···出来ないッ!
目を開けると笑顔の恵がこちらを見ていた。
そして、恵の腕は旭の喉へと延びている。
「がッ···あぐッ···!!!!」
何してるの!
辞めてッ!!
苦しいッ!!!!
声を出そうにも恵の全体重が旭の首へとのし掛かっている為、出るのは掠れた喘ぎ声のみ。
振りほどこうにも苦しくて力が入らない。
「え”ぅ···ッ···」
もう、だめ···。
···恵。······なんでッ···!!!
目から一筋の涙が溢れ落ち、旭は息をしなくなった。
「ふふっ···。あはははははっ!!!今回の彼女ごっこ長かったなー。でも、長い分最後はよかったなあ!!!!!ねぇ?どんな気持ちぃ???ヤれると思って待っていたら殺されたのは????ねぇ?????···あ、もう死んでるんだった!あはははははははっ!!!!!!あ、でもなーんかかわいそうだなー。旭ってたしか処女だったんだよねー。あ、そうだ!折角一年間も付き合ってたんだし、最後ぐらいサービスしてあげようかなぁ!!」
そう言って恵は自身の洋服をすべて脱いだ。
小柄な彼女の体は白く美しい。
だが、1つ問題点があった。
それは、女性にはあり得ない部位が存在すること。
そう。
彼女は、いや、彼は男なのだ。
「いやぁ。死んだ後の女の子の中って気持ちいんだよねぇ!しかも今回は処女!どんな感じなのかなぁ!それじゃあ、処女卒業おめでとう旭。···んっ♥」
動かぬ旭は一晩中、恵に玩具にされた。
◇ ◆ ◇
後日。
蒼国対黄国司令本部。
「河口の殺害。ご苦労だったな。土本」
「ちょーっと時間かかっちゃいましたけどね」
「無事殺害できたのだからそれでいい。さて、次の獲物だが。コイツだ。上官ではないのだが、コイツの魔法能力がちょいと厄介でな。確実に潰してきてほしい」
「···ふふっ。なるほど」
紅軍黄国防衛隊第2918班班長
山城礼
今回は早く投稿できました。
さて、ここに来てもはやテンプレの『主人公と同じ境遇のライバル』の到来です。
この子がどう物語を濁していくのか。また、礼がどのように物語を訂正していくのか、僕にもわかりません()
一つ言えるのは、勝者が成立するためには敗者も存在する。ということですかね?
それでは次話をおたのしみに~