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狢の神隠し
ムジカは青年に名乗る様に告げた。
「僕は茅嶋深月だ」
「良い名だな。では茅嶋よ、私を飼え。というより養え」
唐突な命令に、深月は困惑を隠せない。
それもそうだ。相手は知らない女子である。田舎の、しかも農業だけに魂を削いできた彼にとってそれは、如何なる天変地異をも越える、『超』異常事態なのだった。
深月は結局半ば強引に同意させられ、【神隠し】を体験する事となったのである。
そして彼は、永らく人間に忘れられていた【あやかし】の世界へ足を踏み入れる事となるのだった・・・・。
妖狐イズナはその頃、鈴の音を頼りに世界のほつれに辿り着いた。
「こんなところがあったなんて・・・・。城に急いで連絡しないとっ!!」