第10話 まっしろなわたし、それぞれの決意、イーセテラに別れを告げて
◆◆リィエ◆◆
その光景に、誰もが言葉を失っていた。私も含めて、その身一つでこれをやってのけたコウに少なからず恐怖を覚えた。
「・・・なんて・・・なんて事を・・・・・・」
茫然とその景色を見つめていたイヨ様が、崩れ落ちるように膝をついた。後で聞いた話では、この時の行方不明者は6412名。死者は0。でもそれは、遺体として判別出来る物が一つもなかっただけに過ぎない。近衛第一艦隊所属の軍人で無事だったのは、艦隊の整備や当直の為に軍駐機場にいた者と街に出ていた者、合わせても700名余り。約9割の人員を失い、近衛第一艦隊は事実上壊滅した。
轟音を聞きつけて、近衛衛士を伴ったヒミコ様も駆けつけてきたが、その光景に言葉を失っていた。
「マイア。ポラリスを3機共ここに寄こしてくれ。至急だ。」
コウの連絡から程なくして3機のポラリスが飛来し、練兵場の無事だった場所に着陸した。アネモネ、アンジェリカ・ペリカリス、そして見たことのない銀色の機体。
「ポラリスもスターノヴァと同じで元々3機編成だ。3機目はまだ未塗装で機体名も付いてないけどな。」
誰に言うともなく、コウが独り言ちる。
「アネモネには俺とリィエ、アンジェリカ・ペリカリスには雪華と春華、3機目にキャンディと千夜が乗ってくれ。ミウは俺が抱えていく。イヨ、ヒミコさん、悪いが急いで帰らせてもらう。」
コウはその返事を待つ事なくアネモネに向かった。遅れて私達もそれぞれの機体へと向かう。
「コウお兄ちゃん!!」「コウ!!」
イヨ様とヒミコ様がコウを呼び止める。コウは立ち止まり、振り返る事なく言った。
「急ぐと言った筈だ。それと、あの話はなかった事にしてもらう。こんな国に俺の血を継ぐ者を置いておけないからな。」
「っ!!おにいっ!・・・・・・。」
息を飲み、そして何かを言いかけたイヨ様だったが、続けて言葉が出ず、そのまま蹲り肩を震わせる。その肩にヒミコ様が手を置くとイヨ様は滂沱の涙で濡れる顔を上げ、縋るように自分の母親を見た。しかし、首を横に振られると母親に縋り付き、声を上げて泣いた。
「うわああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
その声を聞いても、コウは振り返る事なくアネモネに乗り込んだ。
◇◇ミウ◇◇
「う・・・ん・・・・・・」
めがさめた。ここ、どこだろう?
すきとおったてんじょうのむこうに、しらないいろのあかりがみえる。
「わたし・・・は・・・?ここ・・・は・・・?」
あたまをうごかして、まわりをみようとしたら、すきとおったてんじょうがうごいた。
「脳の言語領域に問題は見られないわ。ゆっくり話しかけてあげて、コウ。」
どこからか、おんなのひとのこえがする。すると、だれかがわたしをのぞきこんでた。でも、うしろのあかりがまぶしくて、かお、わからなかった。
「ミウ。俺の言葉が分かるかい?」
こえはおとこのひと。やさしいこえ。あんしんする。
「みう?わたしのなまえ?あなたは、だれ?」
かおはみえなかったけど、わかった。かなしそうでさみしそうなかんじ。
「そうだ。君の名前はミウ。俺はコウ=フジイ。医者だ。君は頭に大怪我を負ってここに運ばれてきたんだ。」
わたし、しってるようなきがする。でも、わからない・・・。
「わたし・・・なにもわからない・・・。わたしのなまえも、どこにすんでいたのかも・・・。」
そういってうつむいたわたし。そのわたしを、コウせんせいはやさしくなでてくれた。
「焦らず、ゆっくり治していこう。まずはシャワーを浴びてくるといい。リィエ、案内してあげて。」
「分かったわ。ミウ、私はリーエロッテ=ユーミット。リィエと呼んでくれていいわ。コウ先生と同じ医者よ。シャワー室に案内してあげるけど、どう?立てる?」
「えと・・・だいじょうぶ。」
「そう、良かったわ。それじゃ、シャワーに行きましょうか。」
「うん・・・。」
リィエせんせいも、わたしをみたとき、かなしそうなかおをした。
リィエせんせいにおしえてもらって、シャワーした。きもちよかった。でも、かがみをみたとき、おもった。あかくてながいかみ。
「リィエせんせいみたい・・・。なんでだろ?」
◆◆リィエ◆◆
「・・・分かってはいたけど、きついわね、コウ。」
「脳の損傷が激しかったからな。俺の治癒で損傷の拡大は食い止められても、直に失った部分の神経細胞ネットワークは治しようがない。覚悟はしていた。生きていてくれただけでも俺は感謝しているよ。」
私に答えるというよりは自分に言い聞かせるようにコウは言った。それが何より私の胸を締め付ける。私がミウと別れなければ、私があの時消えていれば、ミウはこんな事にはならなかった。そう思ってしまう。
「こら。過去を悔やんでも何も変わらないぞ?君にはあの娘の母代わりになってもらわないといけないからな。後悔しているくらいなら、どうあの娘を育てていくかを考えてくれ。」
「それなら、コウが今まで父代わりだったんだから、コウも!あ・・・、ごめんなさい・・・。」
”コウも一緒に”、そう言いかけて、それが難しい事を思い出し、謝罪した。例えアイツとの戦いに生き残ったとしても、コウの残りの生命は・・・。
「俺はアイツを倒さなければならない。ミウや君、キャンディ、雪華、春華、千夜、俺に協力してくれた人達。俺の大切な家族や知り合いが暮らすこの世界を護る為に。だから、家族の事は君に頼みたい。」
「そんな、遺言みたいに言わないで!!それにその言い方、私達を置いてくみたいじゃない!!」
「・・・ミウや春華がこの状態で、戦いに連れて行く事なんて出来ると思うのか、君は?」
「そ、それは、そうだけど・・・でも!!」
コウの言ってる事は正しい。ミウには私が、春華さんには雪華さんが必要。でも、私は・・・
「ミウの事を頼む。俺は部屋で休む。俺にだって限界はあるんだからな?」
コウは溜息をついて背中を向け、そう言って医療室を出て行こうとする。
「ちょっと!コウ!」
その態度に、思わず呼び止めてしまう私。コウは立ち止まって自分の肩越しに私を見て、そして信じられない言葉を放った。
「君は、俺が目の前で力尽きるのを見たいようだな?」
「?! な、何でそんな事?!」
「だってそうだろう?勝てるかどうか分からない戦いに足手纏いを連れて行けと言うし、休もうとすれば引き留める。俺の身体がボロボロなのを知っていてそう言うんだ、それ以外にどう取れと?」
「それはっ!!」
あまりのコウの言いように、私は言葉を失った。ただただ心配で傍にいたいだけなのに!
でも言い返せない。感情のまま言い返せば、今の私達の関係は呆気なく崩れてしまうのが分かるから。ミウという心の支えを失って、コウの精神はいつになく不安定なんだと自分に言い聞かせて心を静める。
「それじゃ、俺は部屋にいる。君もミウの世話が終わったら休めよ。」
そう言い残すと、コウは今度こそ医療室を出て行った。
◇◇ミウ◇◇
「あの・・・リィエせんせい、コウせんせいと、けんか、したんですか?」
わたしがシャワーをおわってそとにでると、リィエせんせいがすごくかなしそうなかおでたっていた。
「えっ?あっ!ご、ごめんなさい!見てた?大丈夫よ、喧嘩してた訳じゃないからね?」
「でも、リィエせんせい、すごくかなしそうなかおしてた・・・。」
「あはは・・・よく見てるわね・・・。ちょっと意見の食い違いがあっただけだから、大丈夫よ?」
「そうなんだ・・・。」
「ごめんなさいね、心配させちゃって。それじゃ、お部屋に案内するから、付いてきてね。」
「うん。」
いわれたとおり、リィエせんせいについていく。よこにシュッとひらくドアをくぐって、リィエせんせいをおいかけて、ろうかをすすむ。やがてリィエせんせいはひとつのドアのまえでとまって、わたしをみた。
「ここが貴女の部屋よ。ここの四角いパネルに触れてみて?」
「はい。」
いわれたところにさわると、ドアがシュッとひらいた。あかりがなくて、なかがよくみえない。
ぼーっとみてたらと、リィエせんせいがなかにはいって、おいでおいでした。
「ほら、入って入って。この部屋は貴女の部屋だから、貴女が入ると自動的に明かりが点くの。寝る時とか明かりを落としたい時は”消灯”って言うと消えるわ。また点けたい時は”明かり”ね。試してみて?」
「しょうとう・・・。」
パッとあかりがきえた。
「あかり・・・。」
パッとあかりがついた。
「大丈夫そうね。じゃあ、他のものの使い方も説明するわね。」
それからおへやにあるもののつかいかたを、リィエせんせいにおしえてもらった。”れいぞうこ”にはいっていた”ゼリー”が、つめたくておいしかった。
「それじゃ、今日はそろそろ休みましょうか。また明日、色々教えてあげるわね。大丈夫、貴女が眠るまで傍にいてあげるから。」
そういわれて、わたしはベッドにはいった。リィエせんせいがあたまをなでててくれるのが、きもちよかった。
「おやすみ、ミウ・・・。」
「おやすみなさい、リィエせんせい・・・。」
◆◆リィエ◆◆
「ふぅ・・・。」
私はミウが寝入ったのを確認してから部屋を出た。
廊下に出ると、キャンディ、雪華さん、千夜さんが待っていた。
「あの、リィエ、ミウちゃん、どう?」
三人を代表してキャンディが尋ねてくる。みんなミウの事を心配してたけど、コウや私に遠慮して医療室には来てなかった。
「・・・そうね。詳しい事はコウから話すと思うけど、身体は大丈夫よ。もう生命の心配はないわ。」
「そっか・・・よかった♪」
キャンディは私の言葉に素直に安堵したみたい。でも、雪華さんは私の言葉の裏に気付いてしまった。少し躊躇ってから、その言葉を紡いだ。
「・・・”身体は”って事は、それ以外で問題があるの?」
「え・・・?」
キャンディの安堵の笑みが固まる。雪華さん、空気は読んだ方が・・・と思ったけど、辛い事は早めに伝えた方がショックも少ないかと思い直した。
「・・・記憶が失われているの。私達の事も、コウの事も、自分の名前すらも・・・。」
私の言葉に、既に固まっていたキャンディだけでなく、雪華さんと千夜さんまでも固まった。
「うそ・・・よね?ミウちゃんがわたしたちの事忘れたなんて、うそよね?!」
キャンディが私の両肩を掴み詰め寄ってきた。私は目を閉じて首をゆっくり左右に振った。
「ねぇ!コウとリィエなら治せるんでしょ?!再精製すれば治るんだよね?!」
目から涙を確認溢れさせて、更にキャンディが私に食い下がる。でも、私は首を左右に振るしかなかった。
「再精製は最初に記憶や人格をRBSの記憶領域に保存するの。でも、先に保存するべきものが失われていたらどうしようもない。そんな状態で再精製なんかしたら、100%記憶は戻らなくなる。だから、コウも私も、再精製ではなく修復したの。修復なら、限りなくゼロに近くても、無事だった部分の記憶が戻る可能性があるから。」
「そんな・・・そんな・・・・・・」
膝から崩れ落ちそうになるキャンディを私が抱き留める。廊下を沈黙が支配した。
しばらくの沈黙の後、私は口を開いた。ここまで伝えたならコウが言った事も今伝えた方がショックも一度で済むから。
「コウは私に、”ミウ、キャンディ、雪華、春華、千夜を頼む。”、そう言ってた。”俺の家族だから”って。」
「「「!!」」」
三人も私と同じように、その言葉の意味に気付いた。
「・・・私がコウと同じ立場だったら、コウと同じ事言うと思うわ。家族を死地に連れて行けないもの・・・。」
取って付けたようなフォロー。それでも言わないよりはいいと思った。
「わたしは・・・わたしはそれでもコウについてく!!ミウちゃんがわたしを忘れても、また覚えてもらえばいい!!わたしがミウちゃんの分まで強くなる!!今度はわたしがコウを護る!!」
キャンディの心からの叫び。この娘も、本当、いい娘ね。
「あたしは何度もコウに救われた。生命だけじゃなく、心も救ってもらった。コウは自分の生命まで削ってあたしや春華を救ってくれた。だったら、アタシもコウを救う為に生命を賭ける!!」
ありがとう、雪華さん。貴女のような頼りになる大人の女性がいてくれて助かるわ。
「某も旦那様に生命救っていただいた身なれば、我が生命を賭してお仕えいたす所存。」
千夜さんとは知り合ってからそれ程長くはないけど、コウを想ってくれる気持ちに間違いはなさそう。
コウは沢山の良い縁に巡り合えたのね・・・。きっと、コウの人柄が引き寄せたのだわ・・・。
「皆さん・・・ううん、みんな、ありがとう・・・。」
「何よ、水臭いわね。」「そうそう!」「皆、旦那様の、つ、つ、妻であるからして、当然であるかと!」
これなら、コウは前を向いて歩いて行けるわ。
それなら、私のやるべき事は、そんなみんなの中心にいるあの娘を・・・
「さぁ、それじゃ休みましょうか。これから、やるべき事が沢山あるのだから。」
「えぇ。」「うん!」「そうですな。」
三人と別れた後、医療室の片付けを行ってから休もうと思い、そちらに向かって歩き出した。
コウの部屋の前を通りかかった時、ふとコウの身体の事が気になった。
”俺にだって限界はある”
コウはミウが倒れてから一時も休まずにミウの治療をしていた。自分も一時は身動きが取れなくなる程に消耗していたというのに。少しでもミウの後遺症が軽くなるように、機械任せではなく、自身で機器の調整をしていた。
さっきの心無い言葉は、コウ自身も限界に達していたからではないのか?そう思い至り、私はコウの容態が気になりだした。
扉の操作パネルには”UNLOCK”が表示されている。
しばらく逡巡した後、私は呼び鈴を押して少し待った。・・・応答はない。
意を決して扉を開く。
ザアアアアアアァァァァァァ・・・
開けた途端に聞こえる水音。シャワーを浴びているのだろうか?でもその水音に言いようのない不安をかきたてられ、私は部屋へと入り、シャワーへと向かった。
「コウ?」
私は声を掛けた。
返事はない。
私は扉の前まで移動して、中を窺った。そして・・・
「コウっ?!」
扉に映ったシルエットは下に蹲っているようだった。急いでシャワールームの扉を開け、中を確認する。
果たして、コウは壁にもたれ掛かり、苦しそうに喘いでいた。シャワーが流しっぱなしになっているにも関わらず、床には吐血した後が見られる。私はシャワーを止めて、コウの身体をバスタオルで包んだ。
「コウ!!しっかりしてよ、コウ!!」
「・・・リィエか・・・。馬鹿だな・・・濡れるぞ・・・?」
「馬鹿は貴方よ!!こんなになるまで無理をして!!医療室に・・・」
馬鹿は私もだ!倒れるまで気付いてあげられなかった。コウがそういう人なのは知っていた筈なのに。
「・・・前にも言ったが・・・って、リィエはその時居なかったな・・・。Chrono-Systemのダメージは治療や治癒魔術を受け付けない。ベッドに寝かせてくれればいい・・・。」
「分かったわ・・・。」
私はコウを抱え上げた。身長140cmそこそこの私が大の大人であるコウを抱え上げられるのは身体強化のお蔭だ。
私はベッドの縁にコウを座らせて身体を改めて拭いた後、ベッドに横たえさせた。そして下着や衣服を持ってきてコウに身に着けさせる。
「はは・・・介護老人みたいだな。」
「介護老人の方が大人しい分まだマシよ。」
「違いない・・・。・・・リィエ、さっきはすまなかった。君は心配してくれていただけなのに、心無い事を言った・・・。」
「私の方こそごめんなさい。貴方がこんなになってるのに気付いてあげられなくて・・・。」
「君のせいじゃないさ・・・。それじゃ、少し休ませてもらうよ。君も休んでくれ。」
「分かった。おやすみなさい、コウ。」
私はコウに口づけをしてからベッドを離れ、部屋を後にした。
◆◆リィエ◆◆
三日後、ようやく体調の回復してきたコウと私、千夜さん、そしてミウは皇鳳宮を訪れていた。ミウの容態の報告と事件の謝罪、そして、この国を去る挨拶の為。
前回と同様に通用門へと回り、コウが門番に取り次ぎを頼む。軍の兵士は駐屯地壊滅の行方不明者の捜索に駆り出されている筈だけど、近衛衛士は国軍ではなく女王直轄の部隊だからか、人数が減っていたりはしないようだ。
今回はチョウユウ様ではなく、近衛衛士二人に案内され、面会する部屋へと通された。案内される間、衛士二人が酷く緊張しているのが見て取れた。無理もない。コウはあの光景を身一つで作り出した者だから。
程なくして、イヨ様、ヒミコ様、チョウユウ様が入って来られた。三人に笑顔はない。アカギの為に多数の兵士の尊い生命が失われたのだから。
私達は立ち上がって礼をする。手振りで座るように促され、再び席に着いた。
「皆さん、身体のお加減は如何ですか?特にコウ兄様とミウさん、もう動いても大丈夫なのですか?」
「一応、動ける程度には回復した。俺も、ミウも。」
「そうですか・・・。此度の事、この国の女王として誠に申し訳なく思います。」
イヨ様が深々と頭を下げる。アカギはイヨ様も狙っていた。彼女も被害者ではあるけど、同時にこの国を統べる者。部下の反逆とはいえ責任がない事にはならない。その為にミウは大切な思い出を失ってしまったのだから。
「イヨ、恐らくアカギも春華同様、”アイツ”に唆されていたのだと思う。もっとも、春華の時とは違い、顔は見せてなかったようだが。」
「やはりそうですか。アカギ三佐は真面目で実直な人物でした。それが何の前触れもなく突然反旗を翻した。外部からの何らかの干渉があったと考えるのが妥当でしょう。」
「30年前の事件、そして16年前のラロトゥーニュでの事件、そして、今回の事件。俺に自分の邪魔をさせない為に”アイツ”が仕組んだと考えるのが自然だ。自分が本格的な行動を起こす前に、俺に対抗策を準備させないつもりなのだろうな。」
コウはしばらく思案するように視線をテーブルに落とした後、イヨ様を真っ直ぐに見つめた。
「イヨ、俺達はこれからすぐにこの国を発つ。原因は何であれ、この国で大勢の犠牲者を出した俺や春華は、この国にとって大罪人だ。それを庇っていてはお前の立場に差し障る。国外退去を命じたと発表するんだ。いいな?」
「はい・・・。」
そしてコウは椅子から立ち上がり。イヨ様達に深々と頭を下げた。
「迷惑を掛けた。すまない。」
「!! それは、こちらとて同じです!私がもっとしっかりしていれば、ミウさんもこんな事には!」
「イヨ、人は神にはなれない。例えどんなに強大な力を有していたとしても。だから、反省はしても後悔はするな。」
「・・・やっぱりコウお兄ちゃんはどこまでも優しいね。自分が一番辛いのに、私をこんなに気遣ってくれる。」
「それじゃ、俺達は行くよ。生きていればまた会えるだろう。達者で、イヨ。ヒミコさんも。」
「・・・お兄ちゃん、どうか、どうか生きて・・・」
「コウ、生きてこそ護れるものがある事を忘れずに。」
「分かってますよ、ヒミコさん。ミウに改めて教えられた。」
そして私達は皇鳳宮を後にした。
◇◇ミウ◇◇
「ねぇ、コウせんせい、じょおうさま、さみしそうだったよ?つれていってあげないの?」
「ミウ、人にはやるべき事というものがある。それをせずに逃げ出すのは人として生きるのをやめるという事だ。イヨはまだここでやるべき事があるから連れて行けないんだ。」
「じゃあ、それがおわったら、じょおうさま、つれていってあげられるね。」
「・・・記憶失くす前よりストレートになったな、ミウ。そうだな、イヨがそれを望むなら、な。」
「わたし、みんないっしょがいい。ずっとずっといっしょがいい。」
「そうか・・・。」
コウせんせいがあたまをなでてくれた。うれしいな。
「どんなになっても、ミウはミウなのね。安心したわ。」
「そだねー♪ミウちゃん、わたしもミウちゃんと、ずっといっしょにいるからねー♪」
「せつかおねえさんとキャンディおねえさん、リィエせんせいやちやおねえさん、しゅんかおねえさん、みんなやさしくてだいすき。でも、いちばんすきなのは、コウせんせい。」
そういったら、みんながいっぱいあたまをなでてくれた。
「よし、マイア、ジェンティア発進。目的地はラロトゥーニュ大陸イングリット王国の鉱山都市ベルキット。」
「マスター、名称での登録がありません。広域探査によるマップを表示しますので、マップ指示にてお願いします。」
「あぁ、そうか。ウィスタリアじゃないんだったな。」
あ、コウせんせいのまえに、なにかでた。せんせい、ゆびをうごかしてなにかしてる。
「ここだ。後は生体反応が集まっているから、行けば分かるだろう。隠蔽モードで行けよ。王国軍に追い回されたら敵わないからな。」
「イエス、マスター。目的地確認。ジェンティア、発進。隠蔽モード起動。」
どんなところだろう?コウせんせいやみんながいるから、どんなところでもいいかな。




