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現代魔術師の野望  作者: 浮き草
プロローグ
3/6

学園へ

コツン、コツン、コツン・・・・・・ 地下の石畳に響く靴音が甲高く響く

一見するとカタコンベの様な雰囲気を漂わすこの場所で、魔力を放ってそれを認証パス代わりにして進んでいく

しばらく歩くとそこそこ大きい扉の前に着いた。しばらく待っていると、その扉が重厚な音を立てて開いていく。そこかしこに蝋燭風の電灯が着いており、正面には暖炉がある談話室の様な感じの部屋がある。


テーブルを挟んで二つの椅子があり、こちらから見て右側に絶世の美女が座っている

目は少し釣りあがっており、黒髪を肩より少し下まで伸ばした黒髪。誰に似ているか? と言えば、ケイト・ベッキンセイルだろうか。身長は180cm程とかなり高い


「ひさしぶりだね、母さん」、そんな風に馴れ馴れしく俺が語りかけると、母さんは冷ややかな目でこちらを見ながら美しくも冷淡な声で

「何度言ったら分かるんだい? 私の事は姉さん、もしくはお姉さんと言えと言ってるだろう」と怒ったような口調で語る


(そんな呼ばれ方をするような歳かよ)と思いながらも曖昧な返事に終始する


「それで? 手がかりはつかめたのかい?」と仕事モードの声で問いかけた母さんに、俺はついつい渋い顔で母さんの顔を見ながら「それがサッパリなんだよな~ しかし、本当に居るのかよ。いや、確かに原理としては居なきゃおかしいのは解かるけど。ただな~ 天使や悪魔の情報というのが凄く少ないんだよな~」と困ったように語る。


母さんはこちらを暫くジーッと見つめた後「私も足取りを追跡させているがね、やつ等は中々足取りをつかませないように動いてる。だが私の後継者は誰よりも強い私の愛する息子と決まってる。それには私の力を継承できるだけの力をつけなければならない。その為には天使の力が必要なんだ」と語った。


はぁ~ っとため息をついた後に「母さんがずっとそのままこの魔女団の陛下のままでいいんじゃないのか?」と聞くと、母さんは自嘲気味に笑みを浮かべながら「残念ながらそういう訳には行かないんだよ。流石に最近は面倒になってきてね」等と身も蓋もない事を言う。

「さらに私の可愛い息子と言えども才能には限界がある。法力と魔力を双方使える稀有な才を持っていてもこの力は大きすぎる、だから常に体を癒す必要はあるからこそ天使を探してるんだけどね」


そう言われて納得は出来るが、残念ながら俺が背負って立つという覚悟も無ければ意思も無い。だから母さんには出来るだけやる気を出してもらわないと駄目だ

魔女に偽装しているこの大悪魔にしては珍しく責任感を持って俺を育ててくれた。


「しっかしな~ わざわざ宇宙人に会いに行った成果が、彼等の神が騎士階級の悪魔程度とは」と憂鬱気味に吐き出した後、「そういえば、何の為にこっちと似たような星があって、何故に今でも存続しているの?」と母さんに質問してみた。


「なに、簡単な話さ。元々神はいくつかの奇跡を起こして幾つか似たような星を作り出したんだ。だが神はいつの間にか居なくなった。そして大昔天界と魔界で大戦争が起こり、双方とも多大な死者が出て二つの世界が壊れてしまった。凄まじい光をもつ燭天使ミカエルも、光を操り圧倒的な闇を手にしたサタンも消滅した。その余波で大半の天使や悪魔は居なくなり、生き残ったのはこの私みたいにこの世界で封印された事が功を奏して取り残された色欲の私か? いくつかの天使や大天使といった下級天使、騎士や総裁といった下級悪魔くらいよ。そして、そいつらがその世界で神の真似事をしてるってわけだよ」と驚きの事実を語った


納得したが、「なるほどね。でも母さん、だからと言って異世界だの宇宙人だのという言い方はちょっと恥ずかしいよ。ぶっちゃけ、俺は恥ずかしくて廻りの奴には言えない。まあ機関の人間でも俺が異世界に行って来たと言って、信じる奴は居ないと思うけどな」と身悶えした


立ち直った所で「ところで俺に用って何? 母さん」と聞くと、母さんはこちらを見つめながら「大した事じゃないんだけど、ハルタダに能力者の学校に言って欲しいと思ってね。もちろん日本のね」とニコヤカに語る


その言葉を聞いた途端、俺の心の波がザワザワと沸き立つ様な感覚に襲われた。そうか日本のWAUの学校か。高校にあたるこの学校は、成績優秀であればどの大学でもエスカレーター式に通えるという特別な物だ。

恐らく能力者をお偉いさん達も確保したいから、そういうシステムにしているのだろう。さらにRANKももらえる為、みなこの学校に入学しようと必死だ


ちなみに俺は既にアメリカ支部ライセンスを持っている為に、ここで強いてその学校に通う必要は無いのだ


「だが、何故学校に?」との俺の質問に、母さんはふふふと笑い「私、見つけたのよ。あそこの地下に大天使級の天使が封印されているのを」とびっくりするような事実を暴露した

俺は驚いてつい大声で「マジかよ!!」と言ってしまった。「いい? ハルタダ、この事実はどうやらまだ誰も気付いてない。恐らく少しばかり前に誤って封印されたのでしょう。まぁ、学生気分を味わいながら、天使の力を物にしなさい。いいわね」と言われ俺は首を縦に振った


しばらくして、俺が立ち上がって出て行こうとすると、母さんが徐に立ち上がって俺を抱きしめた。「いい? 体には気をつけて、自分の命を大切になさい。また、一緒にお茶しましょうね。WAUの方は私に任せておいて。対策はちゃんとしておくから」と言ってくれた。悪魔は総じて残虐で自分勝手と言われているが、そういう話を聞いている俺は不思議な気分に陥る。「悪魔にも母性というものがあるのか」、そう思うと余計に感謝をしてしまう。


俺は「ありがとう、とりあえず言ってくるよ」と手を挙げて後にする。「行ってらっしゃい、私の可愛い息子」、最後に母さんの呟きが聞えてきた。


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私立比良坂学園、この学園がある東京都に所属するある島を船から見ている。総トン数5トン程の大型客船が運航しており、波に揺られながらのんびりと走っている

海原にはたまにトビウオ等が跳ねており、独特の潮風の匂いに気分が落ち着く。8時間程で港に到着したようだ。初秋の季節だが既に時刻は17時、あたりは夕暮れの赤に染まっており所々街灯の明かりが付き始めている。


港に降り立った俺はそのまま少し古めかしい町に入り、取りあえず紹介された民宿まで歩く。しばらく進むと二階建ての少し古い建物の民宿に着いた


「ごめんくださ~い」としばらく待ったが返事が無いので、何回か呼びかけてみた。すると奥からスリッパの音が聞えてきて「まあまあ、ごめんなさいね。いまお食事の準備をしていまして。それで、あなたが・・・・・」と中年の女将さんが出てきて聞いてきたので、俺は首で肯定して「はい、予約しました鈴木二郎です。今日から二泊お願いします」と答えた


女将さんの顔が少し赤くなった気がしたが、すぐに笑顔で「まあまあ、遠いところからようこそおこしくださいました。どうぞゆっくりしていってくださいね~ 今、お部屋にご案内しますね」、と部屋に案内してくれた。部屋についたら食事の用意が出来たら呼びに来ます、との言葉を背に荷物を降ろす。一応念のために空間拡張した学生カバンを用意したが、今回も極秘の行動の為なるべく使わないようにする


俺は軽装に着替えつつ持つ物をチェックする。ポケットの中には水銀瓶、腕には封印変換用のカーネリアンブレスレットをつけた


コンコン、コンコン・・・・・・ ノックの音がしたので「食事ですか?」と聞くと、扉の向こうから「はい、お食事できましたのでお待ちしてますね」と言うと階下に降りていった

しばらくして降りていくと、質素気味ながらも美味しそうな食事が並べられていた。中央にはキンメダイの刺身が盛り付けられていて非常に美味しそうだ。本来はセルフサービスだそうだが、今回に限ってはお客も少ないという事で女将さんも誘って一緒に食事を取った


「見たところ若そうだけど、学園の関係者ですか?」と質問を受けたので、「比良坂高校へ途中転入しにきました」と答えを返すと女将さんは驚いた顔をした

「あら~ 非常に珍しいわね。しっかり頑張ってね」とエールを受けた。その後も色々と楽しく話をした。なんでもご主人は漁師で、二人の娘さんは既に大学で都心住まいだそうだ


俺は少しイタズラ心を起こしてブレスレットを外して、探知をされないようにまわりに結界を張った。そして俺は立ち上がると女将さんに近づく。女将さんは疑問を感じたように小首を傾げるが、俺が触れると息がハァハァと乱れる


「女将さん、いいよね」と小声で言うと「だめ、私には夫と娘が・・・・・ それに二郎君はまだ未成年」とか言っていたが、抵抗が無かったので更に魔力を流すと液体を流しながらヘナヘナと座り込んだ。久し振りに今日は楽しませてもらうか、夜は長いからな


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翌朝、自分の部屋ではなく女将さんの部屋で目を覚ました俺は静める為に顔にまたがって無理矢理口に含ませる等楽しんだ後、自分の部屋に戻ってシャワーを浴びた


女将さんが慌てている様子が手に取るように分かる。朝食の用意をしているのだろう。しばらくして食堂に行くと女将さんがバタバタしていたので「おはようございます」と声を掛けると、肌艶を取り戻して若返ったような感じの女将さんが顔を赤くしながら「ごめんなさいね、あなた。もう十分程で出来上がりますから」と声を掛けてきた


なんか色々な意味で少し恥ずかしかったが、浮ついた考えをいつまでも持っているわけにはいかない

今日は港町や島の周囲を少し見て周るつもりだった

食事を済ませると、女将さんにキスをしてから散策を開始した


港町は寂れているようだが、意外と学生達が喫茶店やらコンビニやらに立ち寄っているみたいだ

どうも行政とも協力し、地元にお金を落とす事を推奨しているらしかった


あらかた見回った後は、誰も居ない海岸に足を運んだ。何故海岸か? それは不良っぽい連中が3人程後をつけていたからだ。しばらく進んだ後俺は口火を切る事にした「何か用ですか?」


陰からゾロゾロ出てきた連中はニヤニヤしていた。リーダー格と思われる体格がでかくて小太りの奴が「へへへへ 、お前見ない顔だな。学園の新入生か? まあいい。ちょーっと懐が寂しくてな。悪いが人助けしてくれよ」、ギャハハハハと品の無い声を出して笑った


「断る」、俺はそういうと即座に相手に迫った。相手の霊力が高まったのを感じたがさして脅威になるという事もない。リーダーの男が繰り出す右ストレートをかわして左手で腕を握りつぶすように掴んだ。その隙を狙ったのか後ろから子分Aが霊装したと思わしきナイフを突き出したが、俺は後を振り返らずに掴んだ右腕を後に放り出すようにした。


その男は踏ん張ろうとしてタタラを踏んだところに子分Aのナイフが勢い余って肩に刺さってしまった。「ギャアア」と声を上げたところを後から背中を蹴飛ばして子分A共々吹っ飛ばした。そこで霊力が高まるのを感じて振り返ると子分Bが詠唱をしているのが見えた。俺はブーツナイフからナイフを取り出して子分Bの首を背後から刺し、さらにノロノロと二人が起き上がったところで子分Aを刺して止めを刺した


リーダー格の男は辺りを見回すとガタガタと震え、「た、頼む。俺が悪かった、きちんと警察に捕まって罪も償うから命だけは助けてくれ」と手前勝手な言葉を並べ立ててる。俺は呆れ変えながら「なに言ってるんだ? お前の子分はナイフを出して俺を殺そうとした。なに心配するな、お前の魂は俺が活用してやるよ」、ニヤッと笑いながらその男も殺した


死体の完全分解をした後、ヘモグロビンに含まれる鉄を取り除いて完全に血の痕跡も消した


翌日、俺は学校の前に来ていた。これから起こる事を想像しながら、俺は正門をくぐっていく。目的の為には俺は手段を選ばない。全ては母の為、俺の為だ

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