汚い仕事
「あ~ 面倒だな~」
今、俺はイラク北部のくそったれな地区タラファに来ている。
("どうやら目的地までもう少しってところみたいだな")
「お、早速通信かよ。ってか、魔道具じゃなくて無線とかにしろよな~ ったく。ま、それは良いとして」
「こっちは感度良好。こちらトマス、その通りだ。んで? 今回のターゲットはこいつで良いのか? 確かISの財務大臣と言われてる男だよな?」
("そうだ。トゥルクマニ副官の側近とも言われてる男で、財務評議会のトップに君臨している。この後も詰まってるんだからさっさと済ませて欲しい。米軍の司令官に露軍の司令官の首と基地破壊も必要なんだからな")
「言われなくても解ってる。お互いに憎悪を掻き立ててもっと混乱をさせるんだろ? 平和になっちまったら武器が売れないし、児童性奴隷の売買も止まってしまうからな」そう冷たく言い放つと、自身の主要な能力の一つである瞬動と隠形(透明化能力)、そして空間温度能力で周囲の温度を低下して建物の内部に入る。
"1、2、3、、、、総勢10人、約1班程か。装備は、あれはやはりAKにナイフ、手榴弾も何個かか。ま、楽な方だな"
そんな誰でも出来るような分析をしながら足音を立てないように潜入する。いくら透明化をしているといってもそこは実態のある身、ジャンプをすれば音も出れば撃たれれば当然血も出る。あくまで可視光線を能力によって操っているだけだ。
ただ8人程は脇の小部屋でラジオを聴きながら酒を飲み少女に対して乱暴をしており、完全に自分たちの勢力圏の中だと思って油断している。入口の前には2人の見張りだけ。
"面倒だからここはマインド系の幻術だな"
小声で簡単なキーワードを唱えるとそこにはいつもの変わらぬ風景、だがその神髄は実際に変化があったとしてもそれを他人には解らないというものだ。普通の魔術師ならば触媒が必要であり、さらに陣も描かなければいけないが、俺の場合は世界に一人しか居ない自動展開が出来る。そして慎重に二人の間を通り抜け、ドアを開けて財務大臣が泊まっている部屋の中に入る。
"酷ぇなこりゃ"
思わず顔をしかめる。そこには後手に全身を縛られた30代であろうブロンドの白人女性が吊るされて気を失っており、性器とアナルから盛大に精液が垂れている。また中東系の少女、これは一桁台の年齢だろうか、2人ほどが大臣と思われる40ばかりの男の傍らで眠っている。
脅威が無いか確認した後、消音結界を周囲に張り巡らして短機関銃を突き付けてベッドを蹴飛ばしてその男に言う。
「ウィーク アブナサクイアク ヤシル!!(おら 起きろ!!)」
「マークンタ!! マーホアスタハム?(何だお前は!! 何の用だ?)」
「悪いな。依頼人の願いでね、お前には死んでもらうぜ」
そう言うとM27でハチの巣にした。当然欧米人と思われるレイプされた女も、そして何の罪も無い被害者である女の子に対しても容赦なく銃を撃ち込んで殺害する。もちろん米軍の仕業に見せるために、コルト 9mm短機関銃をきちんと使用している。
「ふぃ~」
と息を吐いた後連絡を取った
「殺ったぜ」
("流石は会長と肩を並べると言われる力の持ち主。仕事も早いな。ま、将来の評議員、ともあろうものがこんな仕事で苦戦していたら駄目なんだがな")
「ふん、簡単に言ってくれるな。いくら俺が少しばかり魔術の素養があるからって言ってもあんまりこき使ってくれるなよ?」
("解かっている。さあ、まだあと二ヶ所残ってる。さっさと済ませてしまおう。おっとその前にデイジーカッターとで都市ごと壊滅させろよ?")
「俺の魔術にぬかりは無いから安心しろ」
("解かった。米露の基地もその調子で頼む。大切なのは泥沼にする事だ、明らかに敵対国がやったと思わせろ")
「お~け~」
俺は空間魔法を駆使して上空まで飛行した後、それぞれのミサイルの弾頭部分だけを投下する。
「まあ、こうして見るとゴミみたいだな。さて次は米露の基地だ。もっと戦争をこじらせてたっぷりと企業様に金を貢ぐんだな」
思わずそう呟きながら次のターゲットの元へ向かう。今度は奴らにも地獄を見せてやるために。
俺は空間魔法を駆使して上空まで飛行した後、それぞれのミサイルの弾頭部分だけを投下する。