アリサ/プリーズ・ヘルプミー!
アリサは、カメラ体質のエクストラである。
一面銀色の目で見たものを映像として記録し、髪の毛を映像機器につなぐことで映像を出力することができる。
様々なことに使えるエクストラではあるが、アリサはもっぱら生き延びるために使っていた。
アリサはスラムで生活する孤児の一人だ。
アリサの瞳を気味悪く思った親に、捨てられた。
だから、店の見取り図を撮影して窃盗団に売ったりだとか。
ギャングの取引現場を撮影して売ったりだとか。
そうやって、日々生きるための金銭を稼いでいた。
特殊な能力だから、名は売れてきてしまっていたのだ。
単に運が悪かったのもあるかもしれない。
いつも通りスラム街を歩いていて。
うっかり、殺人を見てしまった。
アリサの能力は、体質型でありオンオフができない。
見てしまったものは、全て記録されるのだ。
「っ、カメラアイかっ。」
しかも、相手に気づかれた。
よりにもよって、自分のことを知っている相手に。
ノータイムで駆け出す。
どう考えても捕まったら命はない。
「待ちやがれっ!」
銃口はこちらを向くが、アリサは既に路地の裏手へと回ることができた。
ここら辺はまさしく庭のようなものである。
逃げ込んだストリートチルドレンを捕まえるのは、並大抵のことではできない。
ちょうど、街頭テレビではリアルヒーロー・ショウタイムという番組をやっていた。
アリサは、ヒーローが助けてくれればいいのにな、と思いながら身体を休める。
しかし。銃声ともに休んでいられる時間は終わった。
「逃げても無駄だぜ、嬢ちゃん。さっさと出てきなあ!おい、てめーら。この辺さっさと漁れ。」
近くにあいつがいるようだ。
しかも、仲間を引き連れて。
(でも、どうして?何かのエクストラ・・・?)
正確な場所は分かっていないようだから、対象との距離がわかる、とかだろうか。
再度走り出しながら、考える。
状況は、絶対絶命だった。
スラム街を出てしまった方が良いかもしれない。
犯罪に巻き込まれたら、仲間を巻き込まない。
ロクなルールのないスラムで唯一のルール。
ストリートチルドレンが、仲間を守れる唯一の方法。
それでもアリサは幸運だったと言える。
スラム街をでた、その直後。
テレビで見知ったヒーローを見つけたからだ。
藁に縋るような思いで、ヒーロー、ブレイズ・ブレイバーに声をかける。
「あなた、ブレイズ・ブレイバーよね?」
「ああ、そうだよ。どうかしたかい?」
テレビと同じように、優しく強い声。
「お願い、助けて!私、追われているの!」
言葉と同時に現れたあいつと、黒服の男たち。
こちらに向く銃口。
思わず、目を閉じる。
ふわっと身体が浮く感覚。
目を開けると、ブレイズ・ブレイバーが自分を抱え走り出していた。
状況は一切解決したわけではないけれど。
アリサは、生まれて初めてと言えるほど、大きな安堵の溜息をついた。
早速ブックマークいただいて嬉しい限り。
のんびり書きます