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六話

突然目が覚める。クローゼットに入っている(昨日どっかで見つけた)メイド服を着てリビングへ向かった。

「おはようございまーす。」私はにこやかに言った。ルゥナは「おは~」と眠そうに、カイルは「おはよう。」と堅い感じ、ジェルは「おはよ。」と拗ねた感じで言う。

後からオジ様がやってきた。今日の朝食当番は御車さんだったらしく、料理をもって出てきた。パン、サラダ、スクランブルエッグ、ヨーグルト、牛乳と普通の朝食だった。

もぐもぐと朝食を食べているときにカイルがみんなに話しかけた。

「あー…今日はみんないることだし、どっか出かけないか?父さんも、いいだろう?」オジ様は残念そうに顔を伏せ

「今日は家で仕事でな…4人で出かけなさい。」と言った。

「カイルお義兄ちゃん。僕、遠出は嫌だよ?」完全に猫をかぶっているジェルの質問にはルゥナが答えた。

「大丈夫、森を馬車で散歩して、野原に行って昼ごはん食べるだけ。」

「野原ってお花もあるの?」口の周りに食べカスをつけたまま言う。

「はしたないぞ…ああ、行きたいか?」カイルの質問に対してアケミは「うん。」と満面の笑みで返した。

「じゃあ…気をつけて行ってきてね?」悲しげな笑顔で手を振るオジ様。

「行ってきまーす!!」手をひらひらと振って笑う私。

御車さんに馬車を走らせてもらって私たちは森の中を進んでいく。

ルゥナとアケミはおしゃべり、ジェルとカイルはそっぽを向いて顔を見ようともしない

「うっ……」突然ルゥナが顔を下に向けた。

「どうした!!」カイルは心配して話しかけた。

「気分が悪い…」

「!?御車少し止めてくれ!!大丈夫か!?」ルゥナは首を横に振る。

「じゃあ、残念だが引き返そう。まだそんなに来ていない…」

二人の会話をジェルは眉間にしわを寄せ、アケミはキョトンとした顔で見ていた。

「駄目…僕のことは、いいから…3人で…行ってきて?お願い…」ルゥナは今にも泣きだしそうな顔でカイルを見る。

「わ、分かった…」

「(結局行くのか!!)」ジェルは心の中で突っ込んだ。

その後、森にルゥナを置いて3人を乗せた馬車は野原まで無言で向かおうとしていた。が、そんなことアケミが許すはずもなく、仲良くなるぜ?作戦の開始である。

「とりあえず…カイルさ~彼女とかいる?」不意を突かれたカイルは「ぶふぉ!!」という意味不明な単語を発した。

アケミの作戦は、恋バナでお互いに緊張を緩めよう!!であった。

「い、居ないが?」大分照れながら答えるカイルにアケミは「え~じゃあ、ジェルは?」と犠牲者を増やす。「まだいない。」ジェルは馬車の外を見ながら答える。

「まだってことは~?」

「気になるやつはいるってこと。変なやつだから。」

「それ恋か分からないじゃん!!」アハハハとアケミはジェルの脳天にチョップを入れ、次の瞬間には仕返しをされた。


アケミ一人だけ楽しそうである。


「アケミ。君はどうなんだ?」カイルが聞き返してくる。

「あたす?あたすは、こっちに来たばっかりだし、まだいいかなーって感じ?」アケミは茶化して答える。

その後もアケミと2人はポツリポツリとだがしゃべり続けた。が、カイルとジェル2人でしゃべることがないのでアケミはワザと狸根入りを決め込み、二人の会話を待った。

「すやぁーすやぁー」

「…寝てしまったのか…」そのカイルの一言を最後に二人が目的地まで話すことは遂になかった。

狸根入りだったはずのアケミはいつの間にか深い眠りに落ちていた。



INお屋敷のリビング


「…お出かけか…俺も…いや、駄目だ駄目だ…俺なんかがあの子たちの邪魔をしたら…いや、邪魔っていうか俺絶対嫌われてるし、ウザいとかキモいとかクソ親父とか…いや、親父とすら見られてないだろうし、他人だしでしゃばってこれ以上あの子たちに嫌われたくないし…」

リビングにて一人ブツブツと何かを唱えながら落ち込んでいるジンを見つけたのはルゥナであった。

ルゥナは背後からソッと近寄り、ジンの頭を撫でる。

「……る、ルゥナ…?」

そう言ったジンの瞳には涙が溜まっている。

「…父さん?僕、父さん…大好き…みんな、大好き!!」

そう言いながらルゥナはジンに抱きつく。いきなり抱きつかれて焦るジン。

「ヒャアアアアアアアアアア!!よしなさいルゥナ!!オッサン臭がうつる!!そんな気を使って父さんなんて呼ばなくたっていいんだよ!!俺なんて全然家かえってこないし、いつも一緒に居るであろうお前たちの仲を裂きたくもないし、俺の居場所なんてないし…」

物凄く後ろ向きな考えと自虐発言をするジンの顔を見たルゥナの瞳から涙が滲んだ。そんなルゥナを見てさらに焦るジン。

「ル、ルゥナ!?ど、え?…申し訳ない。ごめん。え!?」

「……父さんの馬鹿…本当に、父さん大好き…父さんとはあんまり喋ったことないけど、拾ってくれて、たまに帰ってくると恐る恐る撫でてくれて、あったかくて、大好き。だから。」

つっかえつっかえ話すルゥナの言葉をジンは泣きながら聞いていた。

「俺は、ルゥナの父親をやれているか?」と聞いてきたのでルゥナはコクリとうなずいた。うなずいたと同時にジンはルゥナを強く抱きしめる。

「るぅなぁああああああ!!たとえその言葉が嘘でも父さんはとっても嬉しいよぉおおお!!これからはもっといっぱい一緒に居るからなぁああ!!嫌でも一緒に居てやるからな!!るぅなあああ!!」

泣き叫びながらルゥナを抱きしめるジン。そんな家族のぬくもりを生れて初めて感じて、ルゥナもそっと抱きしめ返した。そして、あのことを思い出した。

「父さん。」と話しかけ、ルゥナは自分の能力と目の色のこと、アケミのこと、今の家族関係をザックリと話し、家族会議を計画していることを告げた。

「…そうだったのか…ルゥナは本当にいい子だな…」

ジンはルゥナの頭をくしゃくしゃと撫でる。そして、

「何も明日じゃなくてもいいだろう。もう、十分ルゥナは待った。俺たちは逃げた。だから、今日話し合おう。」と言ってくれた。

ルゥナは嬉しくてジンに抱き着くとジンも抱きしめ返してくれた。

アケミの知っているようなシナリオでは無くなってしまったが結果が早まるのだから


大丈夫だろうとルゥナは思った。

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