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五話

トントン…ノック音がする。


誰が来た?父さんかな?


ガチャリとあけると、今日来たばかりの女が立っていた。

「こんばん…」言い切る前にドアを閉めたかったのだが、存外動きが早く、足をドアとドアの隙間に入れられてしまった。女は無理やりドアを開け、「失礼します」とまったく失礼だと思っていない態度で入ってきた。

女はソファーに座り「あ、お茶なんていいですよ?」とお茶を催促してくる。


…コイツはなんだ?


「何?俺になんか用?」最初に会った時と同じになんて接しない。あれは父さんの前だけだ。「んはっ。猫かぶりだったんだね~やっぱり~」と面白そうに笑っている。コイツからは悪意も嫌悪も何も見られない。だからよくわからない。女は好きじゃない。俺は母に捨てられたし…あの(ははおや)はごめんっていいながらこの森に捨てられた。拾ってくれた父さん。大きくてあったかい震えた手で頭をぐしゃぐしゃしてくれる父さん。この家で父さん以外あんまり好きじゃない。ルゥナはたぶんいいやつだと思う。でも、進んでかかわりたいとか思わない。面倒だし、アイツ話すの遅そうだし。カイルは拒否。嫌い。全面的になんか無理。

コイツは…なんだ?よくわからない。

今日来たばっかりなのに妙に馴れ馴れしくてルゥナを手名付けた。

今、目の前で見てるけどへらへら笑っているだけだし…そんなことを考えていたら女は口を開いた。

************************************************

「家族と仲良くなってくれないかな?」私は単刀直入に言い放った。

「…は?」目を開いてビックリするジェル。


んふふ。そんな表情も可愛いなぁ…とか思ってないからね!!


「まず、ルゥナはね…」と、簡単にルゥナのことと私のことを説明する。

「ぶっちゃけあなた方の仲が悪いとね?私、居づらいわけですよ?だから、私としては仲良くしてほしいな~と、ね。」ジェルは腕を組み考えるそぶりを見せる。

「うん…成程…お前の本当の名はタナカアケミって名前の異世界の人間で、死んでこっちの世界にきて、ルゥナには人の心を読む力があると…」

「そそそ。理解力があって助かるわぁ~」アケミは嬉しそうにジェルを見た。

「うんうん成程…って納得できるかぁ!!!!!」ジェルは盛大なノリツッコミをしてくれた。


ヤダ…いいツッコミ…若さかしら?キレがあるわ…


「大体、悪意がないならなんでサカルスなんて偽名を使ったんだ!?ルゥナのことはルゥナに聞かないとわかんないし、とりあえずお前のことは信用ならない!!」ジェルは私に人差し指を向けて言い放った。

「え~偽名を使ったのはアケミ・タナカなんて変な名前で怪しまれると面倒だからだよ。ルゥナのことはルゥナに…か、まぁ、すぐ真実だとわかるしい良んじゃない?あと、人を指さしちゃダメ」

普通に言い返してくるアケミに拍子抜けするジェル。


コイツの言っていることが真実だと錯覚するからこそ調子が狂うのだとジェルはおもう。

何も言い返せないままアケミのターンが来てしまった。

「てことで、家族仲を深めるために明後日の正午、家族会議を開きますのでリビングに来てくださいね?」アケミはニコッと笑いながら言った。

「は?え?意味が分からん!!家族会議!?」アケミはいやらしくにたにたと笑いながら

「やだなぁ~家族会議という名の親睦会ですよ。」と言い、立ち上がった。

「ちょ、ちょっと待て!!まだ聞きたいことが…」ジェルも立ち上がり引き留めようとした。アケミは気づいていないのか微笑みながら言葉を発した。

「そういえば、私たちは家族ではないから、お友達になろう。ね?」有無を言わせない迫力で言った。

「あ、…ああ…」ジェルは肯定してしまった。アケミは満面の笑みで

「うん。じゃあね!!」と言って去ってしまった。

アケミの去った後カイルとルゥナが来て、あるところへ連れて行かれた。

「……ルゥナ、あの女はなんだ?」そういったのはカイル。ここはランプひとつつかない真っ暗な馬車の中。

「あの子はタナカアケミ。元居た世界で馬車にひかれて死んで、神様にこりゃ可哀想だって言われてこの世界で生き返った女の子。」そんなバカな話をまるで真実であるかのように語るルゥナ。

「そんな話し、ルゥナは信じるのか?」と、ジェルが聞く。

「うん。嘘、ついてなかった。彼女は、いい子。偏見もない。悪事働こうなんて考えてもない。毎日を楽しく暮らしたいって思ってる…」ルゥナは訴えかけるように二人に言った。

「まぁ、悪意も嘘も負の感情がないからこそ変な女だと感じたんだよな…まだ分からんが…」しばらくの沈黙。これ以上いる必要はないと判断したのか、ジェルは無言で馬車を降りて自室へ帰ってしまった。


初めて3人だけで集まり話した会話はほんの数分で終わってしまった。

残された二人は明日、どう過ごそうかと考えていた。


*********************************************************

アケミは部屋で日本では味わったことのないふっかふかのベッドに数分で睡魔に襲われた。


「…あなたすごいわね…」

あ、美女様や!!

「あ、名乗ってなかったわね…私はキャク。たまにアフターケアに来るからね。」

成程。で?何がすごいのですか?

「え?だってあなた、会ってすぐの人間にもう信用されかけてるじゃない…こういうのを天然人たらしっていうのかしら?」

人聞き悪いですよ~ただ、私が快適に暮らすために仲良くしてもらわなきゃ困るんです。

「あら、強欲な女ね、最後にあの子たちの父親が残っているじゃない。明日でいいの?」

ああ、オジ様ですか?だって部屋の前で聞き耳立てたらぐっすり寝てるんですもの。いびきじゃなくてスースーって、まぁかわいらしい寝息でしたよ。

「あらそう。ところで話変わるけどあなたって本当に運が強いわね…」

なんで?

「だって…ダーツで決めた場所がこんなイケメンしかいない軽い逆ハー状態なんて…ありえないわよ…まったく…」

そうなんスか。むっちゃ嬉しいッス。

「あ、そろそろ朝だわ。じゃ、また今度会いに来るからねー」


はーい。

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