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二話

「父さん父さん!!今回は長く家にいられるんだよね?」

満点の笑顔で父さんと呼ぶ私の義弟ジェル。父さんの前ではとても笑顔なジェル。それが本心なのか、猫かぶりなのか私には分からない。

「父さん…今、疲れてる…だから、」焦りながらそう言う最近来た私の義弟ルゥナ。女っぽい名前を少し気にしていることは知っている。

自分には心が読めるなんてことを本気で思っている奴だ。

「心配をするなルゥナ。」

威厳ある声のこの男が私たちの義父(…養父か?)みんなして血のつながりはない。私は10年前に、ルゥナは1年前に、ジェルは5年前に屋敷の近くに捨てられていたのを拾われた。養父であるジンは公爵という高い地位を持っている。

故に仕事が忙しくあまり家に帰ってこない。

今回だって3か月ぶりの帰還だ。私も成人しているのでできる限りのことはしているが、王都や他国などのことはまだ分からないので父任せになってしまう。

父は養子息子3人とも仲良く暮らしていると思っているのであろう。

が、私も仕事が忙しく飯時以外は部屋にこもるか外出をしている。

飯時は父の言いつけどおり3人で食事をする。が、全く会話をしない。

ルゥナは話したいようで一回だけ話しかけたが、自分には心が読める等の意味不明なことを述べて困惑し、断念した。

暮らして1年がたったがルゥナとは一回しか話したことがない。父も数回しかないであろう謎の青年だ。

一番厄介なのはジェルだ。今年で12という難しい年頃なのはわかるがジェルは剣術道場と勉強以外は部屋にしかいないような気がする。

5年も一緒にいるのにまともに会話をしたことがない気がする。

それどころか近づこうとして睨まれた記憶がある。

私は嫌われているのだろうか?私たちの家は森の中であり、知人しか分からないような道を通ってくる。

使用人と呼べる使用人は御車くらいである。その御車さえも父に拾われたという家。飯は当番制、料理人などを雇うのは甘えだというのが父の考えだ。久々に父が帰ってきているし、これを機に家族団らんという時間を設けたほうがよいのかもしれない。

そんなことを思っていた矢先、馬車が森の中で急停止した。

「何事だ!!」と、父は御車に叫ぶ。

「すみません!!娘が倒れているもので!!」と、御車は返す。

倒れている?それは、本気で倒れているのだろうか?策略では?と、私が一人考えているのをよそに父は馬車から降り、娘の元へ駆け寄った。

その娘は珍しい黒髪であった。娘の気が付かないので気付け程度に頬を叩く父。「おい!!しっかりしろ!!」と言葉をかけると突然覚醒したかのように娘は目をカッと開いた。

**********************************************************


私は目を覚ました。


目の前には茶の長い髪を後ろで一つで束ね、無精ひげをはやすダンディー(?)かつ大人の色気がむんむんの俺得イケオジが…

私は、本気で私の…王子様?とすら思った。

まわりを見ると小5,6であろう暗い青髪をしたヒョロっとした少年がまるで邪魔ものでも見るかのような冷たい目で見てきた。


はぁ、はぁ…そんな目をして…可愛い……なんて、全然思ってないんだからね!!


あと二人の男性が周りにたっていた。かなりの美男子…特に灰色の髪にムッスリとした顔のガタイのよい男は私のどストライクだった。

GJ神様…とすら思った。

もう一人は片目を隠したくり色の髪の青年。歳は私と同じくらいであろうか?それなのに少年と同じようなヒョロッとした身体。

ご飯食べてる?と言いたくなるような細い身体!!ギュッと守ってあげたいタイプの青年である。ああんもう!!神様めっちゃいいところにダーツ当ててくれた!!ありがとう!!ごちそう様!!と私は盛大に感謝した。

「おい!!大丈夫か!?」実はすごく肩を揺らされていたことを今知る。

口からは少し涎が垂れていて周りから見ればキチガイだったに違いない。

恥ずかし!!

「お姉さんだーれ?」と、少年がきゃるん。という効果音が付きそうなくらい可愛く首をかしげて聞いてきた。

わざとだと分かっていてもこうかはばつぐんだ!!

「お、お姉さんは怪しい人じゃないよぉ~腹減りで行き倒れになってた根無し草の文無しだよ~(半分本当)」と、ニコニコしながら…いや、にやにやしながら答える私。

「名はなんというんだ?」オジ様が聞いてきた。

「田…」いや、待てよ…西洋文化系だったら…変なやつだと思われる!!…致し方あるまい。偽名を使おう…

「サカルス・フォン・ヘドスです。」ものすごく適当につけた。

サカルスとか…女か男かすら分からん…

オジ様は腕を組んで考えた。

「弱ったな…君を屋敷で保護したいのは山々なのだが生憎うちは男所帯でね…と、いうのは建前でね、息子たちの了承がないと厳しいかな?」というとチラッと優しい顔をして3人を見た。

「僕はいーよ!!お姉さんだわーい!!」と、少年。

「いい子だからいいよ…」と、片目の美人。

「ああ…」と、ムッスリ。息子たちの反応を見て微笑むオジ様。

「では、今日からメイドとして君を家に置こう。すまないな、もう名義上養子にはしてあげられないのだが我慢してくれ。部屋は沢山あるから好きな部屋を使ってくれ。」

オジ様から紡がれる言葉は優しくて私は大きな声で「はい!!ご主人様!!」と言い敬礼をした。

オジ様は男の人のごつごつとした大きな手で頭を撫でてくれた。


ドキドキで壊れそうになったことは内緒だ。


「では、6人で屋敷に戻るか。」


こうして、私の家族更正のんびり異世界生活が火蓋を切った。

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