STEP.13 新しい装備を手に入れよう。
めでたくチームを組むことになった四人。
ゲームを始めたばかりの、正真正銘の初心者二人組、クウとあずさ。
それにゲームはある程度やっているらしい、カガマとまゆりが合流した。
いや、どちらかというとカガマとまゆりのチームに、二人が入れてもらった……という感じなのだろうか。
そんな四人のうち二人、初心者チームのクウとあずきは、一旦カガマとまゆりと別れて、新しい装備とスキルを買いに行くことにした。
「次行くところは、初心者には少し難易度高いからな。新しい装備を揃えた方がいいだろ」
との事だった。
軍資金は前回のイベントで手に入れた五万……のうち、一万Gで、残りは銀行に預けておくことにした。
銀行に預けておくと、デスペナルティーを食らった時でも、その分の金は減らないらしいとカガマに聞いたからだ。
そんな金の流通があるゲームでは、基本的にあるであろうそのシステムを知らないとは思ってなかったカガマが、少し唖然としていたのは秘密だ。
二人が初心者だということを忘れてもらっては困る。
銀行は一万G単位で、つまり、端数はいれることが出来ないとの事らしい。
今のイベントが始まる前は、端数も入れることが出来たらしいから、これもGM側からの妨害とみていいだろう。
どれだけ賞金を渡す気がないのだろうか。
とりあえずクウは、4万Gをチームのメンバーなら誰でも取り出せるチーム用ではなく、クウの個人名義の金庫に預ける。
それは、背後にいる浪費癖のある彼女が勝手に使わないようにする配慮である。
そうして二人は銀行からでると、そのまま近くにあった武具屋にはいった。
「予算は一人2500Gまでな」
「えー」
「一人2500までだ」
「むう……」
クウはあずきに何度も言い聞かせて、なんとか納得させた所で、商品が並んでいるショーウインドウを、腕を組みながら眺める。
「とは言っても、俺は初期武器を貫くつもりだから、買うものは無いんだけどな……あ、でも籠手ぐらいは買っておいて損は……うーん。でもたけーなぁ」
「ねえねえ空! 私、これとこれとこれとこれとこれが欲しい!」
「買うのは一つだけだって言っただろ。それと高いアイテムばかりを集中的に狙うんじゃねえよ」
「けち」
「ケチじゃない。この中で豪遊は、このイベントが終わってからでも十分間に合うから、今は倹約に謹しめ」
「……じゃあこれ」
クウが若干呆れた風にため息をつきながら言うと、あずきは不服そうに唇を尖らせるも、持っていた商品を全部戻して新しい装備を持ってきた。
「それは?」
「『両刃』」
あずきが手に持っているのは、薙刀の刃の部分だった。
しかし普通のと違い、その反り返った側にも刃がついていた。
つまり、薙刀を両刃に変える装備のようだった。
値段は2400G。
(こいつ、自分が使える上限ギリギリを狙ってきたな)
まあ、一人2500Gな。とか言っちゃったのはクウなわけで、ここで高いから駄目だとか言うと約束を反故にする事になる。
そんな事をすれば、こいつはそれを根に持って……または、言質とったと言わんばかりに、今度は彼女が裏切ってくるかも知らない。
幼なじみの裏切りを心配するというのは、なんか悲しい話ではあるけれど。
だからクウはそれには文句を言わず、『両刃』を購入。
続いて、スキル屋に向かいそこでスキルを幾つか購入した。
クウは金が勿体無いから買わずに、あずきはなにやら悪巧みを思いついたような表情で、クウから金をふんだくると、新しいスキルを購入していた。
何を買ったのかは、クウからは見ることは出来なかった。
さて、装備も改め(クウは何も改めていない。あずきは武器を強化して謎のスキル購入)二人は、カガマとまゆりとの待ち合わせ場所である南の大門に向かった。
その間、ずっと背後から狙われているような気がしたが、まあ気のせいだろう。
そこで待っていた二人が、武器も何も変わっていないクウを見て。
(馬鹿なのかこいつは……)
という視線を見せてきたのは、別に語る必要もあるまい。
それはクウ自身も理解しているつもりだし『装備を強化してこい』と言われて何も変更していないのは、流石にどんな奴でも馬鹿だと蔑むだろう。
どちらかというと、心の中だけで済ませておいた分だけ良い奴だと思おう。
だから。
「馬鹿?」
その心中を隠すことなく素直にさらけだしながら、それを更に口に出してくるまゆりは別に悪い子では無い事を、ここでしっかり注釈しておこう。
「うるさい、俺はこの装備で生き抜いていくんだよ」
「初期装備に、初期武器でか?」
「タダ装備に、タダ武器でだ」
「はあ……」
呆れた風にカガマはため息をついた。
なんだろう、この『有能なアルバイトがはいったと思ったら、次の日には店の商品を盗んでいた』なんていう事実に気づいたみたいな。
「なんだよ、悪いか?」
「いや、初期武器自体は器用貧乏なだけで使えない訳じゃないけどさ……ちょっと来い。予定変更だ」
カガマはその黒髪を掻いてから、踵を返した。
それについでまゆりもカガマを追いかけるように歩きだした。
その時、まゆりはクウの顔を澄ました横目で見ながら歩いていった。
さっさとついてこい。って事だろうか。
「どうするよ」
「どうするって、ついていくしかないと思うけど」
「まあ、ついていくしかないよな」
クウとあずきは顔を見合わせてから、先に行った二人を追いかけるように走って、クウはカガマの隣に並んだ。
「どこにいくんだよ」
「俺たちの鍛冶場」
今からお前の装備を強化してやるよ。
カガマは呆れたままの口調で、ぶっきらぼうに言った。




