1.お断り猫
国主様とヒナさんが結婚してから、しばらくは平和だったんだ。
あんまりお仕事も忙しくなかったみたいだしね。
久しぶりに一杯遊んでもらっちゃった。
この間は一人でロバに乗ったんだよ。
ラクダは大きくて気性が荒いから一人乗りは危ないし、子馬はいないからだって。
国主様に筋がいいってほめられたんだ。
子馬が手に入ったら、ぼくにくれるって言ってくれたんだ。
そしたら、一緒に遠乗りしようって約束したんだよ。
やっぱりぼく、国主様と一緒にいるのが一番好きだなぁ。
でも夏になって、また忙しくなっちゃったんだ。
アヌートはイセルタとケイサンとチテラテと大きい工事がしたいんだって。
工事をすればもっとみんなの暮らしが楽になるんだけど、すごくお金がかかるんだ。
だから、ナーグにお願いして助けてもらおうとしてるみたい。
今、ナーグから役人さんが来て、支援をするか確認してるんだって。
国主様は役人さんの相手をしなくちゃいけないみたい。
お城どころかアヌートにもいないことが多いんだ。
寂しいけど仕方ないよね。
騎士さんもヒナさんもいるし、大丈夫だよ。
それにね、お城に人が増えたんだ。
国主様の結婚式の噂を聞いて、いい所みたいだから住みたいって人が多いみたい。
お城にも何人も新しく来た人がいるんだよ。
皇子の友達って人も来たんだ。
国主様が類は友を呼ぶって言ってたから、変な人だと思う。
人が増えたから、国主様のお仕事減ってくれたりしないのかな。
ぼくが手伝える日が来るまで、新しく来た人達は国主様を助けてほしいなぁ。
ぼくはまだまだお仕事手伝うのは無理って言われちゃったんだ。
ようやく、ヤシオコーグとか友達とかの勉強してるところが見えてきたくらいだもん。
勉強ってすごく難しいよね。
覚えることが一杯あるし、覚えたはずなのに抜けていっちゃうし。
国主様に剣を教えてもらう方が楽しいし、ぼくって勉強の才能がないのかも。
強くなるのと同じくらい、頭も良くなりたいんだけどなぁ。
ある日、お城にケイサンの宰相様とヤシオコーグがやってきたんだ。
ケイサンの宰相様はお仕事でたまに来てたけど、ヤシオコーグは結婚式以来だ。
相変わらず元気そうで偉そうだったよ。
ヤシオコーグはぼくの顔を見るなり、勝負だって言ってきたんだ。
ぼくも今度こそちゃんと勝ちたいって思ってたからね。
国主様にお願いして、いいよって許してもらったんだ。
もちろん、ケイサンの宰相様にも聞いたよ。
ケイサンの宰相様には前みたいにぼこぼこにしていいって言われちゃった。
ぼく、もうそんなことしないよ。
その後にすぐ勝負したけど、今度はちゃんと怪我させなかったもん。
前よりヤシオコーグはずっと強くなってたけどね。
でも大振りだし、単調だし、剣だけ弾き飛ばすのは結構簡単だったよ。
国主様によくできてたって頭なでてもらったんだ。
そうしたら急に、負けたヤシオコーグが国主様に剣を習いたいって言ったんだ。
「え、やだよ」
思わず言っちゃった。
だって、国主様ってただでさえ兵士さんの相手もしているんだよ。
ヤシオコーグが来たら、もっと少なくなっちゃうもん。
騎士さんも、前みたいなことになったら困るって国主様に言ってくれたんだよ。
もうぼくはあんなにぼこぼこにしないけど、しんみょうな顔をしてうなずいておいた。
でも、ケイサンの宰相様が、ケイサンはどこにも繋がりがないだろって言ったんだ。
イセルタのヒナさんのお母さんはチテラテの出身。
ヒナさんはイセルタの出身。
でも、ケイサンはどことも婚姻関係がないって。
だから代わりに国主様のところにヤシオコーグを送りたいって。
なんかよくわかんない理由だよ。
ケイサンの宰相様は、それとも代わりにぼくをくれるかって言ったんだ。
でも、国主様がすぐに断ってくれたよ。
ぼくの好きなようにさせてやりたいって言ってくれたんだ。
その後、結局ケイサンの宰相様が押し切っちゃった。
ぼくにも競い合う相手が必要だとか、厳しくしてもらって構わないって言うんだもん。
ぼくもヤシオコーグに俺が強くなって負けるのが怖いんだろって言われたんだ。
つい、そんなことないよって言い返しちゃった。
それで、ヤシオコーグがお城に来ることに決まっちゃったんだ。
この間はちょっといいやつだって思ったのに。
ヤシオコーグのせいで国主様と一緒にいる時間が減ったらやだなぁ。




