1.猫の妖精
国主様とヒナさんの結婚式はすごくよく晴れた日だったよ。
アヌートでは晴れの日が多いんだけどね。
でも、きっと今日の天気は神様も祝福してるってことなんだよ。
結婚式は秋にやるかもって言って、冬になりそうって言って、結局春になったんだ。
予定よりも来る人が多かったから遅くなったんだって。
寒い冬よりも暖かい春になってよかったなって思ったよ。
国主様もヒナさんもすごくきれいな服を着ていたんだ。
結婚式の特別な衣装だから、あんなにきれいなんだって。
それにね、ぼくもきれいな服を用意してもらったんだ。
結婚式の時の妖精で、ヒナさんにご飯を運んであげる役なんだって。
花嫁さんはみんなの前でご飯食べちゃだめなんだってさ。
大きな布を被って、最後まで奥のテントでじっとしてなくちゃいけないんだって。
でも、妖精が運んでくれるのはいいみたいだから、ぼくが妖精役で運んであげるんだ。
国主様から、色んな料理が出るから少しずつ色んなのを運んであげてってお願いされたよ。
国主様にお願いされたんだもん。
ぼく、がんばって運ぶよ。
結婚式はたくさんの人が来たんだ。
皇都の剣大会よりは少なかったけど、冬厳式よりも春迎祭よりも多かったよ。
多すぎて、お城の中じゃなくて広場でやったんだ。
国主様はみんなのところで忙しそうにしてたけど、ヒナさんは暇みたい。
ずっと出歩いちゃだめなんだからつまんないよね。
ぼくはさっそくご飯を持っていってあげることにしたんだ。
選んでたら、騎士さんに甘いものは最後に持って行くんだって言われちゃった。
そう言えば、いつものご飯でもデザートは最後に食べるんだもんね。
だから最初に持って行くのはパンとか羊のお肉とかにしたんだ。
騎士さんが手伝おうかって言ってくれたけど、断ったよ。
ご飯を運ぶのは妖精の役目だって言われてたからね。
広場はすごいにぎやかだったけど、テントの中は静かだったよ。
騎士さんは男だから入っちゃダメなんだって。
ヒナさんはきらきらした花嫁さん用のテントの中にいたんだ。
でも、頭からすっぽり布を被ってて、ヒナさんかどうかわかんなかったよ。
きらきらした飾りがついてきれいだったけどね。
ヒナさん? って恐る恐る聞いちゃった。
すぐに布をめくって、はぁいって返事してくれてほっとしたよ。
化粧をしたヒナさんは近くで見てもすごくきれいだった。
きれいだよって言ったら、サエさんも可愛いわって言って抱きしめてくれたんだ。
ヒナさんからはいいにおいがしたよ。
抱きしめてもらってすごく幸せだなって思ったんだ。
やっぱりぼく、ヒナさんも大好きだ。
それから、ヒナさんが一緒に食べようって言ってくれたから、ぼくもご飯を食べたんだ。
ちょっとしか持ってこられなかったから、また行かないと。
美味しそうなものがまだまだたくさんあったんだ。
どれにしようかなって探してたら、ヤシオコーグに会ったんだ。
あの後で手紙も出したんだけど、そう言えば直接お礼を言ってなかったよね。
何の役にも立たなかったけど、ぼくのことを考えて返事をくれたんだもん。
あの時はありがとうって言ったらぶっきらぼうに、おうって言っただけだった。
ヤシオコーグはその格好じゃ、剣の勝負はお預けだなって言ってきた。
そっか、そう言えば皇都でもぼくに勝つとか言ってたっけ。
ヤシオコーグはぼくにリベンジしたいのか。
でも、今日のぼくは妖精役で忙しいもん。
また今度ねって答えたよ。
皇都で会ったホクシリのお兄さんとか、ぼくも会ったことがある人がいっぱいいたよ。
テッラ様と皇子も来てたから、ちゃんと挨拶したよ。
でも、それ以上に知らない人もたくさんいたんだ。
全部国主様とヒナさんのお祝いに来たのかな。
こんなにたくさんの人からお祝いしてもらえるってすごいなぁ。
国主様の隣にもお祝いの贈り物が山になってたもん。
どんなものを貰ったかって、みんなに見せてたんだ。
ぼくもちらっと見たけど、きらきらしたものばっかだった。
結婚式の最後に国主様がヒナさんを迎えに来たんだ。
ぼくはお留守番かなって思ったよ。
でも、国主様とヒナさんが一緒に行こうって言ってくれたんだ。
ずっと、ぼくと国主様と騎士さんとヒナさんの四人でいられたらいいなって思ったよ。




