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国主様と猫  作者: 灰波
国主様と猫と反抗期
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3.有頂天犬

ヤシオコーグ 様


 秋鳥トイラーナのくる季節となりましたが、お元気でしょうか。


 先日の皇都ではお世話になりました。

 その後、剣のくんれんは進んでいますか。

 私は次こそは剣大会で優勝できるようにがんばっています。

 ヤシオコーグもがんばってください。


 最近は何をしていますか。

 私はお城の畑の手伝いとたんけんとみんなにおみやげ話をしています。

 秋なので、畑ですることはたくさんあります。

 勉強のあとは半分くらい畑にいます。

 皇都から帰ってきてから、国主様はいそがしそうです。

 ずっといそがしいみたいで、さびしいなと思います。

 さいしょう様とヒナさんはいつも国主様といっしょです。

 お仕事をがんばっているのはわかるのですが、なんだかもやもやします。


 次に会うときまでには、勉強をたくさんしてかしこくなっているつもりです。

 また今度お会いするのを楽しみにしています。


サウルエーレ より


    *     *     *     *     *


思わず、最初からもう一度手紙を読み直す。

何度読んでも変わらない。

サウルエーレからの手紙だ。

ふへへっと変な声がもれた。

皇都で友達になってやったからか。

帰ったら手紙でも送れと念を押しておいたかいがあった。

あいつはすぐ忘れそうだしな。


そんなことを考えていたら、手紙が目の前から消え失せた。

母がうばいとったらしい。

手紙を読み上げてはにやにやしている。

返せと言って飛びあがったが、身長の差で届きそうもない。

母は色恋にうつつを抜かしていたから、指南役を見つけられなかったのかと言いやがった。

そんなんじゃない。

俺の目にかなう奴がいなかっただけだ。

アヌートの国主くらい強かったら雇ってやってもよかったのに。

剣大会でのあの剣さばきが今でも思い出せる。

ひ弱なおとこおんなだと思っていたのに、母よりも強いじゃないか。

父よりは弱いと思うけどな。

サウルエーレはあんなに強い奴に剣を教わっているんだからずるい。


母はなぜか俺の話を聞きながら、そんなにサウルエーレが気になるのかと笑っている。

俺を負かした奴なんだから当然だろう。

そう言ってやったのに、母も父に負けてほれたんだとか言いだし始めた。

絶対にかんちがいしてるぞ、このばばあ。

俺はサウルエーレのことをなんとも思ってないんだからな。

次こそは勝ってやるってだけだ。

剣大会ではお互いに負けて戦えなかったから、次に会った時には試合を申し込んでやる。

友達にもなったし、俺とあいつはこうてきしゅなんだからな。


そうかそうかとうなずく母がうさんくさい。

でも、友達ならちゃんと手紙に返信しないとなと言って返してくれた。

やけに上機嫌で去ろうとした母が、ぽつりとつぶやいた。

「ほごしゃの立場だったら、なんでも思っていることをいってほしいけどね」

なんだそれ。

話す時間を取ろうともしなかった奴が何言ってるんだ。

そう思ったけど、よく考えてみたらサウルエーレはアヌートの国主に文句があるっぽい。

でも、もやもやしてるだけで言ってないみたいだ。

ここで俺がちゃんと言えって教えてやったら、サウルエーレは喜ぶんじゃないかな。

あいつは馬鹿みたいに笑ってるほうがにあってるもんな。

それに、あいつは自分がどうしてもやもやしてるのか、よくわかってないみたいだし。

俺が教えてやらないと一生気づかなそうだ。

手紙も友達に書くにしては他人行儀すぎるし、字は汚いしな。

お手本を見せてやらなくちゃ。

さっさと返事を書いて、送ってやろう。

じいやにいっこくも早く届けろって言えば、早馬ですぐに運ぶはずだ。

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