1.猫の相談
起きたらいつの間にかテッラ様の家に着いてたんだ。
会ったのは久しぶりだったけど、テッラ様は歓迎してくれたんだよ。
それに、手紙も最初よりずっと上手くなったってほめてくれたし。
ぼくも剣を教えてもらえるように言ってくれてありがとうございますって言ったよ。
起きた時は玄関だったんだけどね、テッラ様の家ってお城みたいに大きかったんだ。
大きな訓練所も離れもあるんだって。
探検したら楽しそうだけど、やっぱりダメかな。
それからテッラ様の弟とか妹を紹介してもらったんだけど、覚えきれなかったよ。
だって、何十人も出てくるんだもん。
全員揃ってればまだ順番くらいなら覚えられたかもしれないけど、いない人もいたしさ。
結婚したり、家に一緒に住んでなかったり、仕事にいったりしてるんだって。
ぼく、家族がいないから兄弟っていいなって思ってたけど、多すぎるのは困るね。
全員の顔と名前が一致してるテッラ様ってすごいなぁ。
ぼくと同じくらいの年の子もいたんだけど、仲良くできるといいな。
でもその前に、まずは名前を覚えなくちゃいけないよね。
国主様は明日は皇王様のお城に挨拶に行くんだって。
テッラ様はぼくがやりたいなら、明日は剣を習ったらいいって言ってくれたんだ。
何番目かの弟達が教えるけど、休暇の申請が通ったらテッラ様も教えてくれるって。
一緒にやろうってテッラ様の弟とか妹も誘ってもらっちゃった。
まだ名前覚えてないのにごめんねって言ったら、慣れてるって言ってた。
やっぱり、みんな覚えられないんだね。
でも、仲良くなれそうでよかったよ、
それに、国主様も鈍ったからテッラ様と手合わせしたいって話してたんだ。
また二人が格好良く戦うのが見られるのかな。
みんなにも国主様は強くてかっこいいんだよって自慢したよ。
国主様がいいよって言ってくれたから、その日はみんなと寝ることになったんだ。
寝るまでにたくさんお話しして楽しかったよ。
途中でもう寝なさいって騎士さんに言われちゃうまでずっと話してたくらいね。
次の日は朝からすごく楽しみだったよ。
国主様とヒナさんとテッラ様とその弟と妹達を見送ってからすぐに訓練所に行ったんだ。
みんな以外にも剣を習いに来た人がたくさんいるんだって。
テッラ様の家って剣で有名な家みたい。
あんなに強かったんだもん、当然だね。
ぼく達が行ったら、もうたくさんの人がいたんだ。
国主様よりずっと大人の人もいたし、ぼくと同じくらいの子もいたよ。
身分が高い人とか年齢とかで分けてあるみたい。
ぼくが一緒にやるのは平民で強い子達の所だって。
でも、そこまで行こうとしたら、おいって声をかけられたんだ。
最初はぼくが呼ばれたなんて思わなかったから、そのまま走ったんだけどさ。
「無視するな、サウルエーレ!」
なんて叫ばれたからびっくりしちゃったよ。
振り向いたら、そこにあのヤシオコーグがいたんだ。
なんでテッラ様の家にいるんだよ。
嫌だなぁって思いながらそう言ってやったら、剣を習いにきたんだって。
ケイサンの国主様がヤシオコーグの叔父さんだから頼んで連れてきてもらったって。
ぼくよりも前に皇都に来てたみたい。
せっかくの楽しい気分が台無しだよ。
顔に出てたのか、ヤシオコーグに嫌そうな顔をするなって言われちゃった。
俺だって期待してきたのに最悪だ、ってこっちのせりふだよ。
ヤシオコーグは、ぼくにどうしてここにいるんだって言ってきたんだ。
国主様が連れてきてくれたこととかテッラ様に招待してもらったって教えてあげたよ。
ぼくがテッラ様と友達だって知って、どうして姫団長とって驚いてた。
国主様は馬鹿にしてたのに。
テッラ様ってもしかして、有名人なのかな。
そう呟いたら、ヤシオコーグがいばりながら教えてくれたんだ。
テッラ様の家は皇国を守護する三つの剣と二つの盾のうちの一つなんだって。
勝利の剣を意味するユノイェトレクって名前で、皇国一強いんだって。
だからこんなに剣を習いに来た人がいるんだね。
友達って言ってるくせになんで知らないんだ、って言われちゃった。
そんなこと言われても、家の話なんて手紙でもしたことなかったんだもん。
昨日の夜も国主様とかテッラ様の話はしたけど、家の話は出なかったしなぁ。
むう、またばかだって思われそうだ。
ちょっと覚悟してたんだけど、ヤシオコーグは別にぼくをばかにしたりしなかった。
その方がいいんだけど、なんか変なの。
ヤシオコーグに捕まってたら、テッラ様の何番目かの弟が呼びに来たんだ。
ぼくとヤシオコーグが一緒にいるのを見て、友達なのって聞かれたよ。
友達なら、一緒にやるかって。
でも、友達じゃないしヤシオコーグはぼくより弱いからいいって断った。
それから一緒に剣を習った子達はみんな強くてびっくりしちゃった。
ぼく、結構強いと思ってたのになぁ。
同じくらい強い子がこんなにいるなんて思わなかったよ。
いっつも大人と練習してからってぼくが慣れてないだけじゃなくて、本当に強いんだ。
そうだよね、ヤシオコーグみたいに怠けているやつばっかじゃないよね。
どこが良かったとか、こうしたらいいとか、みんなで言い合うのがすごく楽しかったよ。
アヌートでもこんな風にやれたらもっと楽しそうだなぁ。
休憩時間に、実戦に出たことがあるって言ってたテッラ様の弟に相談もしてみた。
前の時は何もできなかったから、どうしたらいいのかなって。
そうしたら、自分がそこで逃げたら命とか名誉とか仲間とか大事なものを失う。
守るために剣を取るって思ったら勇気が湧いてくるよ、って教えてもらったんだ。
前の時にぼくが無事だったのは、国主様とか騎士さんとか兵士さんのお陰だもんね。
怖がってちゃ守れないよね。
でも、ぼくはまだまだ未熟者だから、そんな腕で無理して戦っちゃダメだって。
他のもっと強い人に任せるのも勇気の内だって言われたんだ。
前に動けなかったとしても、それは被害を少なくするためには正しかったよって。
なんか、そう言ってもらえてすごく安心したよ。
テッラ様の弟は強くてかっこいいけど、言うこともかっこいいなぁ。
何番目かの弟さん、ありがとう、って言ったら、二十六番目の子供だって言われたよ。
テッラ様が一番目の子供で、同じくらいに見える弟が二十六番目なんだって。
やっぱり多いよ。
それと、国主様は十五番目くらいって言われてびっくりしちゃった。
ぼく、国主様とテッラ様って友達だと思ってた。
姉弟だったんだ。
そう言ったら、しまったなって顔をされたんだ。
そして、複雑な事情があるから気になるなら国主様に聞いてみて、って逃げられた。
聞いても国主様は教えてくれるかな。
国主様はあんまり自分のことを話してくれないもんなぁ。
話したくないことはするっと逃げちゃうし。
テッラ様との関係だって、違うよって言ってくれなかったし。
言いたくなかったら悪いかなって思って、ぼくからもなかなか聞けないんだよ。
ぼく、国主様のことならどんな話でも聞きたいんだけどなぁ。
ちょっと落ち込んでたら、一緒にやってた子に心配されちゃった。
そしてね、大会でいい成績を出してごほうびに聞いてみればって言ってくれたんだ。
大会ってなにかと思ったら、大きな剣大会が毎年式典の時にやってるんだって。
大人用と子供用があって、優勝したら賞金も貰えるんだってさ。
皇国領の国主様の推薦か、ユノイェみたいな三剣の推薦で出られるみたい。
騎士さんは青い顔で止めてきたけど、ぼくも出てみたいな。
国主様が帰ってきたらお願いしてみよう。




