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国主様と猫  作者: 灰波
国主様と猫と童子舞
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3.婚約者に名案

朝早くから畑の手入れをしていると落ち着きます。

そろそろ冬のこの季節、思ったよりもアヌートの冬は冷えるようです。

アヌート国主様は平気そうな顔をしていらっしゃいますが、ムルク育ちだからかしら。

そう言えば、夏にイセルタにいらした時は暑そうな顔をしていらっしゃった気がします。

やはり寒い所の方は寒さに強く、暑さに弱いものなのですね。

ここでは皆さん、朝が早いようです。

アヌート国主様が朝の鍛錬を行うので、必然早くなったとか。

わたくしが庭仕事をするのと同じくらい早いだなんて驚きました。

朝食からアヌート国主様とサエさんと一緒で、とても賑やかです。

今日の朝食には私が育てた野菜を使っていただいたのですが、好評のようでした。

昨日の内に、料理長さんにお願いした甲斐がありましたね。


アヌートでは水不足なイメージがありましたが、町の周囲は緑に溢れています。

勿論、イセルタと比べるとずっと少ないことには変わりませんが。

でもオアシスがあるので、お城の周辺が困る程の水不足はないみたいです。

はばかることなく植物を育てられるのは幸せです。

庭園の目立たない一角を畑に変えても怒られませんでしたし。

庭師さんと相談しながら色々と作っていますが、なかなかに難しいです。

城下町はともかく、オアシスから離れるとほとんど草木はありません。

おまけに畑をしっかり作っても、怒竜期の強風が全て吹き飛ばしてしまいますし。

むしろ収穫が終わってから吹くことを喜ぶべきなのかしら。

小さな畑なら簡易に覆えますが、全ての畑に導入できない方法なので困ります。

何か良い方法がないかしら。


丁度、朝の鐘が鳴る頃に畑の手入れに一区切りをつけて、庭園を見て回ります。

少し寂しかったので、荒野に生えていた花の種を採集して蒔いてみました。

花が咲くのはまだまだですが、来年が楽しみです。

作業が一段落ついたところでお城の中に戻りました。

この時間、アヌート国主様は政務を、サエさんは勉強をされているようです。

アヌート国主様の周囲はまだまだ大変なご様子。

わたくしもどうにかお手伝いできないかしら。

まだ婚約者なのででしゃばりすぎは良くないかしら。

とりあえず、今日は貴族の方と交流を深めることにしました。

少しでも味方が増えればアヌート国主様も楽になるでしょう。

何とか反・アヌート国主様派の方を引き込めたらいいのですけれども。


お昼はサエさんといただきました。

サエさんと仲良くなって以来、一緒に食べてくださっています。

サエさんの護衛騎士のノイさんもです。

わたくしが来るまでは二人で食べていたとのこと。

人が多い方が食事は楽しいですし、二人の仲を引き裂くだなんて申し訳ないですからね。

固辞するノイさんを説得するのは大変でした。

本当はサエさんに着せ替えもお願いしたいんですが、まだ早いかしら。

いつも動きやすい服装だけど、もっとドレスを着てもいいと思うんですよね。

それともそんな服が無いのかしら?

なら仕立屋……は無駄遣いと思われてしまうかしら。

いえ、それならわたくしの小さな頃の服を送ってもらってもいいですわ。

そのためにも仲良くなることが第一ですね。

今日は一緒にお菓子を作る約束も取り付けてあります。

この間は馬のお世話をするんだって断られてしまいましたから、予約しておいたのです。

サエさんはお城の皆さんとも仲が良いので、かなり競争率が高いのですよ。


お菓子作りの時に、サエさんから冬厳式のことを教えていただきました。

昨年はアヌート国主様自ら舞われたそうです。

アヌート国主様は国教と信仰が違う気がするんですが、問題なかったのかしら。

わたくしが黒強竜ノラントアーグ信仰に変えた方が心証は良いかしら。

本当にわたくしがアヌート国主様と結婚したらの話ですが。

異国出身の国主様に、異国の妃、異教では納得できない方もいらっしゃいそうです。

せめてわたくしだけでも変えれば、和解の糸口ができるかもしれません。

でも、そうなったら金豊狐セネンナーナ様をお祈りできないのは残念ですね。

まぁ、公に祈れないだけですし、金豊狐セネンナーナ様には許していただきましょう。


サエさんと作ったお菓子をアヌート国主様に持って行けば、冬厳式のお話。

サエさんはどうしてもアヌート国主様に舞っていただきたいようです。

これはサエさんからの好感度アップのために一肌脱ぐべきでしょうか。

思いつきとほんの少しの欲望で、一つの案を提案してみました。

だって、舞うサエさんはきっと可愛らしいですわ。

アヌート国主様がお教えになるなら、アヌート国主様の舞も見る機会がありそうですし。

運動神経の欠如したわたくしには無理ですが、お二人の舞はきっとすばらしいでしょう。

結局、わたくしの案が通って、サエさんが舞うことになったのでした。


けれど、一つ問題がありました。

その舞とやらは詩も一緒に捧げるらしいのですが、サエさんはその、個性的な……。

いえ、歌う才能は無いようなのです。

わたくしも運動の才能は無いですし、そんなこともありますよね。

どうやらアヌート国主様は歌もお上手な様子、天は二物も三物も与えるんですねぇ。

アヌート国主様との相談の結果、詩はわたくしが担当することになりました。

言い出したのはわたくしなのですから、これくらいのことは当然です。

わたくしも本業には敵いませんが、少なくともサエさんよりはましですから。

何故か侍女が狂喜乱舞していましたが、わたくしは所詮助っ人ですのよ?

歌う時も施慈院という所の子供達と一緒ですし。

施慈院は身寄りのない子供や職の無い方を助けるための施設らしいです。

まだできたばかりとの話でしたが、なかなかに興味深い施設です。

一緒に歌うので、練習と称して行ってみようと思っています。


サエさんはまだ歌うことを諦めきれないようですので、練習に付き合うことにしました。

これならわたくしが歌っていても不思議ではないですしね。

わたくしと施慈院の子達が歌うのは確定事項ですが、サエさんに言ってませんし。

こっそり練習に行っているのはまだ内緒です。

万が一にも上達すればサエさんが歌っても構わないのですが、本当に万が一ですものね。

舞はアヌート国主様も手放しで褒める程に上達しているのに。

朝の鍛錬の時に教えていると聞いたので、わたくしも何度か拝見しに行きました。

舞を踊るアヌート国主様も一生懸命付いていくサエさんも素敵でした。

運動ができる方って本当に憧れます。

増えた生徒を前に分かりやすく教えるアヌート国主様は、教師の才能もおありですね。

わたくしももう少し、サエさんに教えるのが上手かったら上達したのかしら。

結局、猛特訓にも関わらず、サエさんの歌が上手くなることはありませんでした。


舞の衣装は以前、アヌート国主様が使用した物を参考に、わたくしと侍女で決めました。

勿論、仕立屋のアドバイスはいただきましたが、納得のできる物に仕上がって満足です。

サエさんもアヌート国主様が着ていたのに似ていると喜んでくださいました。

他の子達にもお揃いで作りましたが、皆さん嬉しそうでした。

歌う側も同じに統一してますので、私もほぼ同じデザインです。

また来年も同じように舞うことも考えて、サイズの調節がしやすいようにしています。

来年も同じ子が同じ体格で踊るとは考えにくいですしね。

アンダーさえ各自で用意していただければ、しばらく使えるはずです。


冬厳式の当日は、多くの人で賑わっていました。

アヌート国主様に婚約者として紹介されるのはどうにも恥ずかしいですね。

わたくしより美しい方の隣にいるだなんて、気後れしてしまいます。

今日の服装は式典用で華麗ですし。

わたくしも精一杯おめかししたのに、霞んでしまいますわ。

抱き寄せられるともう心臓が爆発しそうです。

すぐに童子舞の披露をすると言われたので、内心助かったと思いましたもの。

あのままだったら、わたくし緊張で倒れてしまいましたわ。

その後の舞は、誰も失敗することなく無事に終えることができました。

綺麗な衣装を着たサエさんの可愛らしいこと。

着せ替えの第一歩は達成かしら。

相談仲間の侍女も満足そうにしていたので、わたくしも嬉しいです。

舞が終わった後は、黒強竜ノラントアーグ信仰者にご挨拶に伺いました。

興味を持っていることを伝え、しばらくお話を聞きました。

信仰者の方は喜んで歓迎してくださいました。

黒強竜ノラントアーグ信仰の他の貴族の方にも渡りをつけていただけるとのこと。

これからもたまにお話を聞きに伺えば根回しは完璧かしら。

これで改宗する時にはスムーズに事が済みそうです。


次の日にはアヌート国主様自ら労いの言葉をかけていただきました。

力を尽くしてくれて感謝するとかおっしゃる姿がもう絵になりすぎなんですけど!

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