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国主様と猫  作者: 灰波
国主様と猫と婚約者
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2.はらはら護衛騎士

結局、国主様が戻るまでに反乱は起きなかった。

しばらくずっと気を張っていたが、特に不穏な動きもなかった。

あれ以来、密会にも出くわさなかった。

俺から見た感じなので、裏で何があったかは知ったこっちゃない。

だが、俺が必死に報告に行った成果だ、というわけではないだろう。

騎士団長に拝み倒してサエを頼んでまで報告には行った。

何故か騎士団長には同情されて朝まででも変わってやるぞと言われた。

ついでにお勧めの娘がいる店を教えられたが誤解だ。

そんな思いをしてまで行ったのに、待っていたのは冷笑だった。

そのまま引き返したい気持ちを抑えて一から十まで報告していく。

終わった時に宰相はこれで五つ目ですか、と呟いただけだった。

だが、その瞳は好戦的な色を帯びていた。

あれは絶対、鼠を見つけた猫の顔だ。

何をどうやって計画を潰したのかは分からないが、相当いたぶられた事だろう。

当事者じゃなくて良かったとしみじみと思ったものだ。

どうせなら、関わり合いが一切無ければもっと良かったのだが。

近々、国主様が戻ると聞いて、この張りつめた日々がようやく終わると安堵した。

戻ったら戻ったで寝耳に水の話を聞かされるのを、この時の俺はまだ知らなかった。


国主様が城に戻ってきたのは、まだ日も高い内だった。

相変わらず、国主様は無駄にお綺麗な顔をしている。

一見中性的でも、勢い良く飛び込んでいったサエを軽々と受け止めるあたりは男だな。

普通の子供と同じくらい肉がついたサエに全力で当たられると、俺でもよろける。

体重自体はそうでもないのだが、速度が速いのだ。

こんな辺境の地で無駄になっているが英雄は伊達では無い。

毎日、騎士共を投げ飛ばしているとは言え、よく鈍らないよなぁ。

サエをそのまま抱え上げた国主様は、妙に機嫌が良さそうだった。

享受イセルタで上手くいったのかね。

久しぶりに会えた国主様に、サエも嬉しそうだ。

ようやく平和な日常に戻るな。

そんな事を思っていたら、国主様が笑顔で婚約者を作ってきたと報告しやがった。

固まるサエ。

気付かず話を続ける国主様。

今まで国主様をほぼ独り占めにしていたサエからすると、衝撃だろうなぁ。

いかにも政略結婚っぽいが、国主様の様子を見るに悪い話ではないのだろう。

国主様はサエも気に入ると思うと言っていたが、どうなることやら。

せめて先に俺が知っていれば国主様やサエに助言や配慮が出来たんだが。

いや、護衛の分際でしゃしゃり出るのも良くないか。

夜の報告の時に、サエが寂しがっていたので構ってやって下さいとだけ言っておいた。

戻ったばかりで仕事が溜まっているのは分かるが、これくらいは許されるだろう。


それからは婚約者が来るまで城の中が浮き立っていた。

今まで使われていなかった部屋の掃除やら何やら騒がしい。

女性陣がやけにやる気だが、なんで女ってこういうイベントが好きなんかね。

俺はいつもより元気が無いサエに不安になるんだが。

国主様も朝の鍛錬だの何だのとサエに気を回していてくれているが、忙しそうだ。

せめて俺だけはサエを一番に見てやらないとな。


婚約者はそれからしばらくしてやってきた。

もう数日で怒竜期になるだろうという日だったが、明けてから来りゃ良いのにな。

サエも気になっているのか、来たと聞くなり飛んでいった。

追いかけていけば、ぴょこぴょこと飛び跳ねている。

人の壁の前に見えないようだったので、肩車をしてやった。

遠目にも行列が見える。

享受イセルタの黄金の馬車に使用人の群れ。

裕福な国とはいえ、豪勢なもんだな。

婚約者とは名ばかりで、もう一足飛びに結婚してもおかしくない雰囲気だ。

だが、馬車から出て来たのは思ったよりも平凡そうな娘だった。

と言っても国主様の顔を見過ぎて俺の感覚が麻痺している可能性もある。

俺達はうやうやしく国主様にエスコートされていった婚約者を見送った。

朝は普通に近くにいたのに、なんか凄い疎外感だな。

サエはその後ろ姿を無言で眺めていた。


婚約者とサエの顔合わせは夕食の時にやってきた。

まぁ、基本的にこの時間までサエは城内をうろちょろして捕まらないもんな。

婚約者は白い知識の狐ヒルトナーナと名乗った。

第一印象は優しくておっとりしていそうな人、だった。

白狐ヒナで良いと言ったり、彼女なりにサエと歩み寄ろうとしてくれているらしい。

国主様はなんて説明してたんだか知らねぇが。

とりあえず、俺としてはサエがしっかり挨拶出来ただけで満足だ。

今までの勉強の成果があったなぁ。

微妙にサエが距離を測りかねている感はあるが、夕食は和やかに進んでいた。

どうやらコックが気を利かせたらしく、夕食には享受イセルタの郷土料理が並んでいる。

サエは好き嫌いが無い子だが、一口食べるなり不思議そうな顔をしていた。

享受イセルタの味は薄味だからなぁ。

食後にサエの部屋に戻った時、サエが真剣な顔をして聞いてきた。

「国主様って胸が大きい人が好きなのかな?」

ああ、婚約者は胸が大きかったもんな。

食事よりそれが気になったのか。

でもな、サエ、お前がまないたなのはまだ子供だからだ。

ぺたぺた触っても大人にならない限り、胸が大きくなるかは分からんからな。

変な所で色気付かないでくれよと切実に思う。

俺はどちらかと言うと胸より尻派だが、そもそも子供が言う話題じゃねぇ。

一応、国主様の好みで選んできたわけじゃないと思う、と言っておいた。

婚約者の存在がサエの教育に悪影響を与えたりしないか、不安が募る。

何故だか今まで以上にストレスが溜まる日々が始まりそうなんだが。


その内、胃薬が必要になっても驚かねぇよ、もう……。

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