2.皇子の計画
駄々を捏ねて、守りの鳥を契約まで連れてきてみて数日。
やはり守りの鳥は灰狼のことが気になっているようです。
けれど、顔を合わせばきつい言葉ばかり。
早朝に訓練風景を覗き見てはもどかしそうな顔をしているのを知っていますよ。
本当に言いたい事は全然違うのに、どうしてあんな言葉が出てくるのやら。
素直じゃない彼女が可愛らしいと思いますが、このままでは連れてきた意味がありません。
僕は事態を打開する為に動く事にしました。
まずはこの国の内情を確認してみることから始めます。
下働きの者達は皆、気の良い人達でした。
灰狼の評判はなかなかの様で安心しました。
彼女も彼がよく言われるのは満更でもないようでした。
口を開けば出てくるのは文句ばかりでしたが。
青猫ちゃんも良い子の様です。
甘い物が好きだとか。
子供らしくて良いですね。
ただ、この国の貴族達の阿諛追従には僕も辟易しました。
灰狼の苦労も忍ばれます。
適当に相手をしていたら、大体はすぐに居なくなってくれたのはありがたいですね。
馬鹿皇子に与す価値なしと見たようです。
それでもしつこくつきまとう方々は、守りの鳥がその眼光で追い返してくれました。
それからは、町の様子を見に行きました。
最初にこの国に来た時に感じた様に、あまり豊かな状況では無い様です。
それでも民の顔は明るく、生き生きとしていました。
話を聞けば、国主様が何とかして下さる、前より良くなったとの声。
運が良ければお忍びの国主様に会えるなんて言われたりもしました。
お忍びなのに堂々と皆にばれているあたりが彼らしいと言うか何というか。
まだ貴族の掌握も不完全なのに不用心ですね。
暗殺の一つや二つ警戒するべきなんですが。
まあ、彼の腕があれば護衛いらずなんでしょう。
守りの鳥の眉間に深く皺が刻まれた以外は些細な問題です。
結局、幸か不幸か僕の望む悪い情報はそれ程聞けずに終わりました。
どうしようかと思っていたんですが、城に戻った早々解決しました。
最後の一押しが向こうからやってきたんです。
貴族の一人が僕の姿を見るなり、灰狼について有る事無い事捲し立ててきました。
別に僕は何の権力も無いんですけどね。
それを聞くなり、彼女は射殺さんばかりの視線で貴族を黙らせます。
そして、僕の襟首を掴むと駆け出しました。
僕の護衛の仕事を忘れていないのは流石ですが、この引っ張り方ってどうなんでしょうか?
なんて文句を言ったら、肩に抱え上げられました。
そういう意味で言ったのでは無いんですが……。
まあ良いかと思っていると、予想通り彼女は執務室に乗り込みました。
珍しくも狼狽する灰狼の声が聞こえます。
皇子を荷物の様に担ぎながら突入したら、誰でも驚きますよね。
でも、貴重な彼の狼狽顔が見られなかったとは、尻を向けていたのが残念でなりません。
守りの鳥は僕をそこら辺に放り投げると灰狼に掴みかかりました。
「いい加減にしなさい!
こんな理不尽に黙っているつもりなの?」
どうやら、完全にスイッチが入っているようです。
誠実な彼女の事です。
このまま放っておけば勝手に自分の思いを吐露してくれるでしょう。
これを期に二人がもっと話し合ってくれれば良いのですが。
それは灰狼次第でしょうかね。
彼女の方は言い切るなり自己嫌悪で力尽きそうです。
僕は灰狼に宜しく頼むと仕草で伝えると、そのまま静かに退出しました。
落ち込んだ彼女を慰める為の根回しです。
いつも子供に泣かれたり怖がられたりしている彼女へのご褒美を確保に向かいます。
青猫ちゃんに笑顔で遊んでもらえれば彼女も喜ぶでしょう。
後は青猫ちゃんからも灰狼と仲良くする様にお願いしてもらえば完璧ですかね。
天の邪鬼も子供の願いがあれば上手く折り合いを付けるでしょう。
本当に手のかかる人ですね。
まあ、いつも彼女の真面目さに甘えているのだからこれ位は当然ですか。




