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国主様と猫  作者: 灰波
国主様と猫と冬厳式
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3.町娘、式を見る

その日、町は久しぶりにちゃんと行われる事になった冬厳式を前に浮かれてた。

もちろん、私もおふれがあった時からすごく楽しみにしてたの。

だって、新しい国主様のお姿が見られるって話だったから。

おばあちゃんは久しぶりに見る冬厳式の方が今日興味あるみたいだけどね。

私を含めたほとんどの人は国主様の方が気になるみたい。

突然やってきて、どんどん良い暮らしにしていってくれているんだもん。

気にならない方がおかしいよね。

お城で働いている幼馴染みが怒竜期に帰ってきたから聞いてみたけど、全然教えてくれないし。

こっちは先におじさんの酒場に来るようになった格好いい人の話教えたのに。

友達甲斐のないやつめ!

ああ、でもおじさんがあの格好いい人は国主様の私兵かもしれないって言ってたっけ。

何か、景気とか町の事を毎回聞いてるし。

国主様も全然違う国から来た人だって話だし、何か秘密裏に色々やっているのかも。

じゃなきゃ、新しい国主様がこんなに早くこの国を立て直すなんて信じられないもんね。

守秘義務ってやつかな。

下働きの人まで徹底させていても不思議じゃないよね。

そんな事を考えていたら、父さんが怒鳴り出す。

いいかげんおじさんの所まで荷物を持っていけだって。

うちは洗濯屋だ。

みんなのよそ行きの服とか、お店のカーテンやシーツとかを洗う仕事をしている。

おじさんの所は酒場で、宿屋も兼ねているから沢山洗濯物が出るのは仕方ない。

でも、あんなに重いのを私に運ばせるのって無いんじゃないかな?

布だって、沢山集まったら運ぶのすごく大変なんだから!


おじさんの店の前までよろよろとしながら持って行った所で、ひょいと荷物を持ち上げられて軽くなった。

「ありがと」

助けてくれたのは、おじさんの店で料理を作っている男だ。

そんなに顔は悪くないし、料理も美味しい。

彼だったら結婚してもいいかなって思うんだけど、いまいち向こうの気持ちが分からない。

私、手が荒れる洗濯屋なんてさっさと出ていきたいんだけどなぁ。

時代は女が押す世の中なのかしら。

おじさんに挨拶した所で、なんと、おじさんは店を閉め始めた。

どうやら、おじさんはそのまま冬厳式を見に行くらしい。

見れば周りの店も次々と看板を下げていく。

なんとまぁ、国主様効果って凄いね。

そう言えばうちも閉めるって言ってたっけ。

怒竜期でもないのに日中に閉店が並ぶのなんて初めて見た。


結局、私もおじさんと一緒に見に行く事になった。

どうせ届け終わったら行こうと思っていたから丁度良い。

広場まで行く途中に、常連さんまで合流して、大所帯になってしまった。

会場に着くなり、おじさん達はお酒を飲み始めるし。

お酒を勧められて困っている彼に、助け船を出す。

人が多すぎて見えないから、ちょっと様子を見てって言ったの。

すると、丁度始まったみたい。

折角だから、見えないから持ち上げてってお願いしてみた。

最初は動揺していた彼も早くって急かしたらやってくれた。

これは脈あるのかも?

舞台に出て来た国主様は仮面を被った変人だった。

何あれ、不細工だったりするのかな?

緊張しているのか、声も何か不自然だし。

人見知り激しいから、今まで出て来なかったのかしら?

そんな事を考えていたら、おじさん達の一人が声を上げる。

あの肌の白さは酒場に偶に来るあの格好いい人と同じじゃないのかって。

そう言えば、首元とか手の所を見ると、やけに白い。

あの人って国主様と同じ出身なのかしら?

おじさん達の中には、あの人こそ国主様じゃないのか、なんて邪推する人もいた。

髪の色が違うし、別人だと思うんだけどなぁ。

けど、国主様の話が終わって、神様に舞を踊る人が出て来た時、私達はみんなびっくりした。

だって、あの人そのままだったんだもん!

なんでそんな所にって思っちゃうわよ。

そりゃ、国主様と関係あるのかなって話はしていたけど、出てくるなんて思わないじゃん。

やっぱり、格好いい人が踊ると映えるのねぇ。

この踊りを見られただけでも冬厳式を見に来た甲斐があったかも。

そんな風にほれぼれとしていたら、やっぱりおじさん達の中の一人が気付いた。

国主様、黒くなってない?って。

えっ、と思って国主様が座っている所を見たら、確かにさっきより明らかに黒い。

私達と同じ位になっていた。

おじさん達はぼそぼそと話し始める。

やっぱり、あの踊っている奴が国主様なんじゃない?

だよなぁ、さっきの変な声ってあいつの声そっくりだったよな。

なんで替え玉なんて用意しているんだ?

そりゃお前、正体隠して酒場に来ていたんだから、ばれたくなかったんだろ?

あんな仮面付けて変な声出してまで、隠そうとしているのか?

大体、肌の色ですぐばれてるし。

誰か明らかにおかしいって注意してやるやつ居なかったのかよ。

マスター、あんたのせいじゃないのか?

この間あいつに、そろそろ此処の奴と同じ位日焼けしたかって聞かれて適当にうなずいていただろ?

だって何回も聞いてくるから面倒臭くて…。

宰相様震えてるぜ。あれ、絶対分かってて黙ってるよな。

っていうか気付かなかったのかよ、国主様…。

そこまで話した所で、ついにおじさんが吹き出した。

確かに、なんて間抜けな話だろう。

会った事のない町の人には変な国主様としか思われず、隠したい私達にはばればれだ。

でも、こんな国主様ならこの国をもっと良くしてくれるのかもって思えたんだ。

私も笑うついでに彼に抱きついた。

慌てながらもしっかりと支えてくれた彼にこっそり好きって呟いてみた。

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