表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者イサギの魔王譚  作者: イサギの人
Episode:11 朽ちよ、身罷れ、地に絶えよ
125/176

11-3 愛のうた

 

 目を覚ましたイサギは、慌てて飛び起きた。

 全身にびっしょりと汗をかいている。

 しばらくの間、頭が真っ白だった。

 イサギは顔を覆い、それから荒い息をつく。


「俺は……」


 手を握り締め、首を振る。

 すると、隣に眠っていた少女が、小さく身じろぎをした。


「……どうしたの? イサギ」

「……」

 

 イサギは気付き、顔を向ける。

 下着を身につけただけの彼女は、心配そうにこちらを見上げている。

 彼女だ。紛れもなく生きている彼女が、そこにいる。

 その瞳が、水鏡のようにイサギを映し出していた。


 あまり、不安を分かち合うようなことは、したくない。

 己の中にしまっておこうと、一瞬考えたけれど。

 でも、こんなことに意地を張ったところで、どうするのか。

 イサギはたまりかねて、つぶやいた。


「嫌な夢を、見たんだ」

「……夢?」

「ああ、なんだか、わからないけど……。

 とても、悲しい、夢だった。

 ずっと、ずっと、お前を探していて。

 でも、どこにもいなくて……。

 もうこれ以上、歩き続けることは、できなくて。

 俺は疲れて、もう一歩も歩けなくなって。

 ……そして、なにもかも、諦めて……俺は、ここで……」


 口に出してみると、不安感よりも羞恥心がこみ上げてきた。

 こんなことをほざいてどうするのか。

 頬が熱くなってくる。まるで子どものようだ。

 握ったイサギのその手に、彼女がそっと手を重ねてきた。


「……大丈夫だよ、イサギ」

「プレハ……」


 彼女の声は甘く、その微笑みは花のようだった。

 

「あたしは、どこにもいかないよ。

 ずっと、イサギのそばにいるよ。

 だから、安心して。

 もう悲しいことは、起きないから。

 ずっと、一緒だから、ね」

「……プレハ……」

 

 イサギは彼女の手を握り、俯く。

 先ほどまで見ていた夢は、もう過ぎ去ってしまったけれど。

 でも、きっとこれだけはわかる。


 イサギは今、幸せだ。

 これは、疑いようもない事実だ。

 イサギは間違いなく、幸せだったのである。


 再び目を閉じて、まどろみの中に沈み込んでゆくイサギ。

 彼の髪を指で撫でながら、少女は悲しそうに微笑み、つぶやく。


「おやすみなさい……お兄ちゃん」


 

 



 勇者イサギの魔王譚

『Episode11-3 愛のうた』

 

 



 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 第三王女リミノと近衛騎士団団長エウレは伍王会議に伴い、ダイナスシティに招かれていたが、期日までまだまだ時間的な余裕があったため――というか、そのためにリミノが早く来たのだが――大森林ミストラルを回ることにしていた。


 街道によって整備されたとはいえ、徒歩なら二十日はかかる道のりだ。

 しかし、エルフ族のふたりにとっては、勝手知ったる庭のようなものである。大層な準備はなにもせず、身軽な旅姿での道程だった。

 森から森へ、かつて覚えていた村々を巡り、その荒れ果てた様に心を痛める旅路でもあった。


「それにしても、本当にエルフ族(なかま)は、どこにもいないんだね……」

「そうですねぇ。スラオシャ大陸の各地に散らばりましたし、中でもほとんどはエディーラ神国にいるみたいですし」

「エディーラかあ」


 森の小道をかき分けながらリミノはつぶやいた。

 その前をゆくエウレが、枝を払いながら言う。


「まあすんごい寒いところでしたよ。森から引っ張りだされたんじゃ、たまったものじゃないですよねー。飲まなきゃやってらんない感じでしたもの」

「エウレはお酒があったらどこでも幸せでしょ?」

「はっはっは、姫様もまたおかしなことをおっしゃいますなー」


 乾いた笑い声をあげるエウレ。事実酒浸りの日々だったので、反論はできなかった。

 エウレは元々リミノお付きの近衛騎士ではなかった。エウレが守っていたのは第一王女カトレノだ。


 ミストランドが攻め込まれた当時、エウレは城の外で軍団の指揮を取っていた。

 近衛騎士たちは奮戦したが、リヴァイブストーンを使用した不滅の冒険者の前、エルフはひとり、またひとりと倒れてゆく。

 せめて王女だけでも逃そうとしたものの、すでに城内に踏み込んでいたカリブルヌスの前、エウレは時間稼ぎすらもままならず、敗北を喫した。


 その後、彼女が目覚めたのはエディーラ神国へと護送されている途中の、馬車の中だ。

 有無を言わさず、奴隷として売り飛ばされた先は、エディーラ神国の地方のとある宿であった。


「ま、でも良いおじさんとおばさんに巡り会えたんで、姫様と連絡を取ることができて、ヨカッタですよ」

「そだね。私もエウレともう一度再会できて、心強いよ」

「っていっても、わたしの護衛なんて必要ないほどに、強くなっちゃいましたね、姫様」

「そう? 助かっているよ、エウレ。荷物持ちとか」

「荷物持ち」

 

 確かに女性にしては長身だが、エウレはがっかりと肩を落とした。

 ともあれ、またこうして同族の姫を守ることができるのは、自らのアイデンティティを再び得られた感覚だ。宿で酔っ払いながら冒険者たちをあしらうだけの毎日とは違う。幸せなことである。


「わたしはともかくですね、姫様が元気そうで良かったですよ。ずいぶんと大変な目に合っていたって噂でしたからね」

「んー」

 

 リミノは下唇をつつきながらうなる。

 

「まあ、色々あった、かな。私も」

「……でしょーね」


 弓を弾いたことすらなかったリミノが、熟達した術式を習得したのだ。

 そこには血のにじむような努力があったことだろう。

 エウレは少しの間、姫の苦難の道に思いを馳せた。


 彼女を守護して暗黒大陸に送り届けた親衛隊も、全滅したと聞いている。

 それでいて、たったひとりでスラオシャ大陸に乗り込んできた彼女の決意たるや、エウレの想像を遥かに超えるだろう。


 リミノは次代の王だ。エルフ族を継ぐ女王となるのだ。それほどの覚悟を持って生きていかねば、ただでさえ厳しい立場のエルフを率いることはできまい。

 

 再会した今、リミノにはその器があると、エウレは思った。姫の姿は、かつてのエルフ族の美しき女王の面影を残し、それでいて前に進む意気と生命力に溢れていた。

 離れ離れになってから十五年。まだ幼い子どものようだったリミノは変わった。彼女は優れた王になるだろう。


「……ずいぶんと、立派になったみたいでして」

「ど、どうしたの、そんな突然」


 誰もいない森の中、エウレは思わず目元を拭う。

 ひょうひょうとしているように思われるエウレだが、実は人情に厚く、涙もろい性分なのだ。

 

「さ、次の村まであと少しです。せめてひとりぐらい、エルフ族の生き残りと出会いたいものですね。姫様のご健勝な姿を見せてやりたいものですよ、うえっへっへ」

「前から思っていたんだけど」

「はいはい?」

「エウレの笑い方って、ちょっと悪者っぽいよね」

「ワルモノは嫌いですか、姫様……」

「んー」

 

 リミノに指摘され、エウレはしょんぼりとつぶやく。

 だが姫は、少し考えた後、こんなことを言った。


「別に、キラいじゃない、……かな」


 それは森の葉擦れの音にかき消されそうなほどに、小さなささやき声。 

 彼女が思い浮かべていた人は、眼帯をつけたひとりの不器用な少年のことであった。


 次に向かった村で、リミノは運命の再会を果たす。

 それは愛する人の――変わり果てた姿であった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ひとつだけ真新しく整えられた家屋があった。

 こんな大森林ミストラルの果ての、辺鄙な廃村に、だ。

 当然、リミノとエウレはこれが一体なんであるかと、想像を巡らせる。

 たったひとりだけエルフ族が残っているのか、あるいは他の誰かか。

 

 結局、彼女たちは確かめてみることにした。そのために村々を巡っているのだから。

 


 エウレが遠くから入り口を弓矢で狙い、リミノが近づく。

 無論、エウレは主人を危険に晒すことに対して、わずかな反発を抱いたけれど、そこはリミノが説き伏せた。


『術師とは、世界を我が物とする能力者であるぞ』


 師はこう言った。

 それは魔王城とブラザハスを往復する彼女に連れられ、数々の術師と戦わせられ、様々な技能を詰め込まされている日々の中だった。

 嵐のような毎日だった。


『己を知り、相手を知る。そして世界を知り、それを支配するのじゃ。

 どんな時でも冷静に、決して心を乱してはならぬ。

 詠出速度に影響が出れば、それはいずれ己を殺すじゃろう。

 術師の完成形は、シルベニアじゃ。あやつを目指すが良い』


 その最中、魔王慶喜と何度か手を合わせたこともある。

 結果は、リミノの全勝だった。

 慶喜は座学はともかく、実戦は笑えるほどに弱かった。

 あれが悪い見本だ、とキャスチはこめかみを抑えながら語っていた。


 シルベニアと手を合わせたこともある。

 彼女を負かせたことは、一度もなかった。

 魔法を使われずとも、魔術だけで完敗したのだ。

 それでもリミノはチャンスがあれば、挑戦することをやめなかった。

 自分が強くなれば、もっともっと様々なことができるのだと思っていたから。

 

 かつてリミノは何度も死ぬような目に合った。

 そのたびに誰かが犠牲になり、助けてくれた。

 

 魔王城に冒険者が攻め込んできたあの日、リミノはかつての親衛隊のように、自分が犠牲になって慶喜やロリシアを助けられるのなら、それもいいと思っていたのだが。

 結局、そんな都合の良いことにはならなかった。

 イサギにまた命を救われ、リミノは今度こそ決心をした。

 古いエルフ族のしきたりを捨て、今こそ強くなるべきだと。


 絶対に会おうと、イサギと誓ったから。

 彼は死なないと、そう言ってくれたから。


 彼とのキスの思い出を胸に、リミノは戦い続けた。

 辛く長い日々だが、それだけではなく、とても価値のある毎日だった。



 朝も昼も夜もなく、リミノの修行の日々は続いた。

 そして今、どんな相手が出てきても、リミノはそれなりに対処ができると信じていた。

 師匠である術式教授(プロフェッサー)キャスチから教わった戦闘術は、術式だけに留まらず、戦場での生存方法についてもだった。


『よくぞきょうまで頑張った、リミノよ。

 そなたは、わしがこれまで育てた生徒たちの中で、3番目に優れた素質を持っておったの。

 スラオシャ大陸に渡っても、十分に生きてゆけようぞ』


 二年かけて、リミノは目覚ましいほどの成長を遂げた。

 それはエルフの王族に流れる魔力の総量が極めて高かったのと、優れた師に恵まれたのと、そしてリミノ自身が非常に高い目的意識を持って取り組んでいたからであった。

 三位が一体となり、リミノの戦闘力は並外れたものとなっていた。



 そのリミノは家屋に近づこうとしたそのとき、ぞくりとした気配を感じた。

 いる。あの扉の向こうに。


 彼女は今の今まで、対処ができると信じていた。だがそれは相手によるのだという当たり前のことを、完全に失念していた。

 まるで心臓を鷲掴みにされたような気がした。家の中に立つのは、魔人だ。禍々しいそのオーラは、ドアの隙間から漏れ出て、リミノの足を引きずり込むようだった。


 エウレはまだ気づいていない。

 リミノが振り返って助けを呼ぼうと思ったその瞬間。


 ――ドアが開いた。

 彼が、いた。

 


 リミノの頭が真っ白になる。

 まさか、知っている顔が出てくるとは思わなかった。

 

 彼は、イサギだ。

 魔王城から出た彼を見送り、その後、デュテュやキャスチから話を聞くことしかできなかった、彼がいる。


 離れ離れになって、もう一年半以上。

 彼のことを思わなかった日など、一度もなかった。


 遠い空の下で彼が戦っているからこそ、リミノだって強くなれたのだ。


「お兄ちゃん……?」


 幻だろうかと思ったが、この自分が見間違えるはずがない。

 少しだけ背が伸びて、痩せて、そして大人びたような気がする彼は、やはり呆然とこちらを見返している。

 血のような真っ赤な眼をしていた。眼帯はもうつけていない。


 彼の口が少しだけ動いた。

 恐らく自分の名を呼んだのだと思った。

 

「お兄ちゃん――」

 

 リミノは彼に駆け寄った。

 先ほどまで感じていた魔人のような雰囲気は、とうに霧散している。

 リミノは、その細いけれどたくましい体に抱きついた。彼からの拒絶はなかった。

 

 こんなところで出会うだなんて、これが運命と呼ばずしてなんというのか。

 胸に頬ずりして、イサギの顔を見上げるリミノに、声が振りそそぐ。

 夢の中で何度も何度も願い、乞うた、彼のその言葉が――。


「プレハ……?」


 ――リミノの脳髄に、突き刺さった。



 そしてリビングに入ったリミノは。

 そこにあった極大魔晶(プレハ)を見て、すべてを察する。

 

 心臓が凍りついたような気がした。

 リミノですら、ショックを隠し切れなかった。


 姉と慕っていた、あの気高き金髪の女性は、もう。

 ただそこにあるだけの、物言わぬ像と化していた。


 プレハの姿をした、極大魔晶。

 一体どこにいたのだろう。

 地下迷宮ラタトスクは最近攻略されたと噂で聞いていた。

 ならば、プレハはそこにいて、そして魔晶化し、命を落としていて。

 恐らく彼は、迷宮の奥深くで、彼女を見つけ出したのだ。

 

 見つけ出して、そして。

 ああ。

 彼の心はもう。

 ああ。


 俯く彼の頭を撫でながらも。

 リミノはもうどうすればいいかわからず、唇を噛む。


「どうして、ここが……お前は、だって……。

 プレハ……なんで、こんなところに、いるんだよ……」

 

 まるで赤子のように彼は泣いている。

 誰よりも強く、誇り高く、そして優しかったあの彼が。

 もはやその見る影はなく。

 誰も、すがりつく人もいないように。


「プレハ……プレハ……」


 そのとき、リミノの心中は、いかなるものだっただろうか。


 一年半ぶりに再会した想い人が、自分を見て、かつて姉と慕った人と思い込んでいることに対して、リミノはなにを思っただろうか。


 血のにじむような努力を続けてきた。

 傷めつけられて眠れない夜も、彼の顔を思い浮かべて、耐えてきた。


 だが、彼はリミノを見てはいなかった。

 リミノを『リミノ』と認識することすらなかった。


 イサギの前、リミノという少女は存在を許されなかったのだ。

 それほど残酷な事実が、あるだろうか?

 

 そもそも、なぜイサギがリミノをプレハだと、見間違えているのか。

 それはもしかすると、リミノがプレハに憧れ、彼女のようになりたいと願い、髪の長さもそのように揃えていたからこそ、だったのかもしれない。

 かたや純血のエルフ、そしてもうひとりはエルフの血が混ざった人間族だ。

 それとも、魔帝戦争の最中から彼を知っているものとして、イサギの心の中、リミノとプレハを結びつけるなにかがあったのだろうか。

 わからない。


 リミノにはわからない。

 彼が『神化病』と呼ばれる不治の病に犯されて、真実を見失っていることなど、わからない。


 もうなにも、わからない。

 泣き出したいのは、リミノのほうだ。

 どうして自分では駄目なのか。

 なぜプレハで、なければいけないのか?

 

 彼を想う心なら、絶対に負けていないはずだ。

 20年という月日だって、リミノは過ごしてきた。

 耐え忍んで、彼のことを想いながら。

 それなのに、どうしてプレハなのか。

 彼女は、だって、もう、生きてはいないのに――。


 リミノの心もまた、張り裂けそうだった。

 彼との再会が、こんな形になるだなんて、想像もしてなかった。

 

 ああ、もう。

 どうして。


 ドス黒い気持ちが、胸の中に生まれ、そしてリミノは唇を噛む。

 感情の渦に飲み込まれ、この場から消えてしまいたかった。


 せっかく、せっかく会えたのに。

 がんばったね、と言ってほしかったのに。

 抱きしめて、撫でてほしかった。

 彼に会えたら、いっぱい甘えようって、そう思ってたけど。


 ――けれど。

 

 リミノは唇を歪め、なんとか笑顔のような形を作ると、イサギの頭を抱く。

 まるで赤子にそうするように、リミノは彼を抱き締めた。


 彼が望むのなら。

 それが彼の願いなら。


 ――構わない。


 リミノは目を細め、泣き笑いのような表情で、イサギにささやくように、こう告げるのだ。


「――あなたに会いたかったからだよ、イサギ」


 その言葉に。

 イサギは救われたような顔をした。


 リミノではなく。

 リミノが『プレハ』として放った言葉に、彼は救われたのだ。


 こんなことって、ない。

 少女の想いは、踏みにじられたのだ。

 

 だが――。


 ああ、とリミノはまた思う。

 良かったのだ、これで。

 彼のためを思うなら、こうするべきなのだろう。

 幸いにも、リミノはプレハを知っている。

 今の彼の前でなら、そう成りきることもできるかもしれない。

 プレハの仮面をつけて、過ごすことができるかもしれない。


 できるのなら。

 それで彼が救われるのなら。

 それが彼の幸せなら。


 ――それでも、いい、のかもしれない。


 だから、決めたのだ。

 その瞬間、決意する。

 リミノは『プレハ』になろう、と。


「イサギを見ていたら、わかるよ。

 がんばったんだね、うん。わかるから。

 だから、いいの。もういいんだよ、イサギ」


 まさか自分がそんな言葉を言ってしまうだなんて。

 イサギは滂沱の涙を流している。

 彼のそんな姿を見るのは、初めてだ。


 辛かったのだ。

 悲しかったのだ。

 たったひとりで、こんなところで暮らすほどに。

 すべてを捨てて、極大魔晶(プレハ)とふたりきりで隠れ住むほどに。


 いいじゃないか。

 イサギは戦ってきたのだ。

 魔帝戦争の時代から、ずっと、ずっと。

 何度も何度も世界を救ってきた。


 そんな彼が幸せにならないなんて、おかしな話だ。

 彼だけは幸せにならなければいけないのだ。

 他の誰が、世界が、運命が、イサギに苦難を与えるのなら。

 せめて自分だけが、リミノだけがイサギの味方でいてあげなければ。

 

 ならないから。

 

「ね、イサギ……もう、キミは、がんばらないでいいんだから、ね。

 一緒に、ここで、暮らそ? ね……?

 あたしは、ずっとずっと、イサギのことを、大好きだったよ。

 ふたりで、これから、ずっと……」


 だから。

 

 このとき、この瞬間、リミノはたったひとりの少女だった。

 女王という立場も忘れ、ただひとり、イサギに恋するだけの少女だった。


 イサギは彼女(リミノ)の肩を抱く。


「ずっと、ずっと好きだったんだ、プレハ。

 おまえを、おまえだけが、好きだった。

 俺の初恋は、プレハだったんだ」


 わかっている。

 知っていたから。

 ずっと、ずっと。

 イサギがプレハしか見ていないことを。

 リミノはずっと、知っていた。

 知っていたけれど、でも、それでも良かった。

 

 この恋は実らないって、最初から、ずっと前から。

 リミノが初めてイサギに助けてもらった23年前から、ずっと知っていたのに。


 でも、いい。

 彼が望むなら、それでいい。



 リミノはイサギと口づけを交わした。

 そのキスは、失恋の味がした。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「どうするんですかね、姫様」

「……なにが?」

「それ聞く意味あります?」

「……」


 イサギが狩りに行っている間、エウレとリミノは村の端で待ち合わせていた。彼の索敵範囲は獣よりも広く、落ち合わせるのも苦労をした。

 しばらく空気を読んで突入を見合わせていたエウレから散々小言を聞かされた挙句の、追求だ。

 

 リミノは目を逸らし、口をつぐむ。

 エウレはことさらに大きなため息をついた。


「わたしはあの人のことをよく知りませんが」

「……」

「これは姫様が国を統治するために必要なことではないと、わたしは思いますよ」

「……うん」

 

 それは、エウレの言うとおりだ。

 リミノは反論する言葉を持たなかった。なにを言っても言い訳にしかならないと思ったのだ。


 この関係をいつまでも続けることはできないとわかっているのだ。

 リミノは姫だ。エルフ族を救うために、この大陸にやってきたのだから。

 

 エウレはそんなリミノを横目に、小さくため息をつく。


「いや、まあ……わたしも鬼じゃないですから、わかりますよ。

 姫様が、そんなに、その……凹んでいるなんて、よっぽどショックだったんでしょうし。

 あの人、なんかもう、相当参っているみたいですしね」

「……」


 うなだれるリミノは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 少し前の未来への希望を抱いていた強いリミノが嘘のように、しょげかえっている。


 酒場で様々な人たちを見てきたエウレだから、わかる。

 リミノのショックは本物だ。彼女は精神的に参ってしまっていた。

 主人を責めるつもりはなかったのだ。これではエウレが悪人のようではないか。


 ぽりぽりと頬をかき、エウレは努めて優しい声を出す。


「……まあとりあえず、伍王会議までは、まだ時間がありますからいいんですけど……。

 その間に、どうするか決めてくださいね」

「……うん、ごめん。ありがと、エウレ」

「いや、わたしは全然いいんですけど……その間、他の村を回ってこようかな、って思ってますし」

 

 リミノも女王である前に、ひとりの女性だ。

 気持ちを落ち着かせるだけの時間は必要だろう。


 だが、彼女の身を慮るものとして、ひとつだけ必ず確認しなければならないことがあった。

 

「……危険はないんですよね?」


 リミノはキッとエウレを見据える。

 その表情は、愛する人を侮辱された少女そのものであった。

 

「お兄ちゃんは、そんな人じゃないもん!」

 

 手をぎゅっと握り締めて叫ぶリミノは、イサギのことを信じ切っているようだ。

 しかしエウレが主人を見る表情は、やはり痛ましいものでしかなかった。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「なあ、プレハ、きょうは――」

「うん、うん」


 イサギが話すのを、リミノはとても楽しそうに聞いている。

 今だけは、たったふたりの時間だ。

 ずっとずっと欲しかった、ふたりだけの。


「それで、すごく綺麗な川が見つかったんだ。

 もし良かったら、今度ふたりで――」


 安らいだ笑顔を浮かべながら語る彼を見つめ、リミノは思う。

 もしこのまま、ふたりだけでいられたら、と。

 そんなことを思わずにはいられなかった。


 リミノがずっとプレハを演じて、プレハの仮面をかぶり続けていたら。

 イサギはリミノだけを見てくれるだろう。

 それが幻の幸せだったとしても。


 リミノにはエルフ族の新たなる女王として、果たさねばならない責務がある。

 一日一日ごとに。

 あるいは一秒ごとに、リミノの時は迫ってくる。

 

 そんなものから目を背け、リミノはここでイサギとふたりだけの日々を過ごしている。

 後ろ暗く、罪の意識を覚えるような暮らしだ。


 これはきっと、いけないことなのだろう。

 エウレの言葉通りだ。

 リミノにとって、逃避に他ならない。


 ――だけど、どうすればいいのか。


 プレハはもういない。

 イサギだって、壊れてしまった。

 こんなイサギを幸せにできるのが、リミノだけなら。

 リミノだけはせめて、イサギのそばにいてやらなければならないだろう。


 彼は夜に怖い夢を見て、飛び起きることが多くある。

 だけど、リミノの顔を見ると、母親を見つけた赤子のように安らぐのだ。

 

 テーブルに頬杖をつきながら極大魔晶(プレハ)を見上げ、泣いているときだってあった。

 そんなとき、リミノが彼の手を握ってあげなければ、誰が彼の助けになってやれるというのか。


 彼が好きな人は、プレハだけだ。

 リミノを愛してくれることはない。

 これから先も、きっと。

 だが――この日々が続く限り、リミノはプレハとして、今だけはイサギに愛情を注いでもらえる。


 それはとても卑怯な考え方かもしれない。

 エルフ族の仲間たちを裏切りながら、リミノだけが幸せになるような行ないかもしれない。


 それでも、彼に愛してほしい。

 彼に求められたい。

 彼の心を救ってあげたい。

 彼のそばに、いたい。


 ひとりの少女としてそう思うことが、そんなに悪いことだろうか?


 叶わぬはずの願いが、今こうして、現実のものとなったのだ。

 イサギだって、リミノがプレハでいるのなら、きっと自分のことをいつまでも変わらずに、愛してくれるはずだ。

 これから先、ずっと、ずっとだ。

 それを幸せと呼ばずに、なんと呼ぶのか。


「なあ、プレハ」

「……なあに? イサギ」


 彼が優しく呼ぶのは、自分ではない女性の名前だ。

 だけど、彼の赤い瞳に映るのは、自分だ。

 

「今までずっと、ごめんな。

 待たせちまって、本当に、ごめん」

「……いいんだよ、イサギ。

 あなたが今、ここにいてくれているんだから……」


 イサギの指が、リミノの指に絡みつく。

 彼の唇が、リミノのそれに重ね合わされ。


「……ん」


 ずっとずっと、彼が自分だけを見てくれるなら。

 独り占めにできるのなら。

 リミノは――。


 ――そして、ふたりの間に、言葉は失われる。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「……ねえ、イサギ」

「ああ、プレハ」


「今、……幸せ?」

「幸せだよ」


「うん……良かった……」

「ありがとう」

「……うん」


「プレハ」

「…………うん」




「……ねえ、イサギ」

「うん?」


「リミノ、って子のこと、覚えている?」

「ああ、覚えているよ」


「……」

「懐かしいな、リミノ」

「……」

「まだ、暗黒大陸に、いるのかな」

「……」

「もう一度会おうって、約束したんだ」

「……そう。好きだったり、したり?」

「あ、いや、別にそんなことは。浮気なんて、してないよ、本当に。誓って」

「……キスぐらいは、したの?」

「え、っと……」

「……イサギ?」


「……すみません」

「……ううん、いいよ、イサギ」

「でも、あれは、不可抗力、というか……」

「ねえ、イサギ」

「あ、はい」

「もっと、リミノちゃんの話を、してよ」

「……えと」

「ねえ」

「……プレハが、そう言うなら」






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 幸せな日々は、続いていた。

 穏やかで、なにもない毎日。

 ぬるま湯のような、ふたりだけの時間。


 そんなある日、リミノはテーブルの上で一枚の手紙を見つけた。


「……あれ」


 リミノは思わず不安に駆られて、その手紙に手を伸ばす。

 もしかしたら、また誰かがイサギを戦場へと引っ張りだそうとしているのではないか、と。


「……」


 イサギがこれ以上戦わなければならない理由は、ない。

 もう彼は、ずっと休んでいいはずなのに。


 そんな思いから、リミノは手紙に手を伸ばす。

 イサギは自分が守らなければならないという、そんな気持ちで。


 だが、すぐに彼女は気づいた。


『親愛なる勇者さまへ――。』


「……え?」


 それは時を越えた、本物のプレハからの手紙だった。


 


「あ、プレハ、そいつは」


 後ろから、ばつが悪そうなイサギの声が聞こえてきた。

 リミノは手紙に目を落としたまま、振り返らない。


「……参ったな、片付け忘れていたよ。

 持ってきたの、バレちまったか。

 そうだよ、お前からの手紙だよ。

 たまに見返しててさ、そのたびに、なんかこう、ジーンとしちまってさ」


 文面を読み進めるリミノの背中が、震えている。

 イサギは後頭部に手を当て、恥ずかしそうにつぶやく。


「……俺はさ、もう二度とお前に会えないと思っていたから。

 だから、ここでずっと大人しくしているつもりだったんだ。

 プレハは極大魔晶になってしまった。

 俺にできることは、もう他にはない。

 そう思い込んでさ、ずっとふたりで、暮らすつもりだった。

 そうして静かに老いて……ゆっくり、眠ろうかって、思ってたんだ」


 リミノにその声は染み込んでゆく。

 それは紛れもなく、イサギの嘘偽りのない本心だったのだろう。

 

 リミノの視線はまだ、手紙に奪われたままだ。


「それもたぶん、幸せだと思ったんだ。

 もうこのアルバリススは、救われた。

 それなら俺が戦う理由はもう、どこにもない。

 だったら、ふたりで、誰もいないこの村で、さ。

 ずっと、暮らしていけたらいいな、って。

 ……俺が剣を振るえば、誰かが傷ついてしまう。

 もうそういうのは、いいかな、って。

 勇者の俺ではなく、ただひとりの男として、

 お前と暮らせたらって、思っていたんだ」


 プレハの手紙には、想いが溢れていた。

 リミノは、それをプレハが死ぬ寸前に書いたものだとは、知らない。

 知らないけれど。

 でも、込められた気持ちは、確かに伝わる。


「なあ、プレハ。

 俺も、一緒だよ。

 お前といた三年間の記憶があれば、これからも暮らせると思ったんだ。

 ずっと、ふたりで……静かに、さ。

 十年も、二十年も、ずっとだよ。

 穏やかで、なんにもない暮らしだけど。

 たぶん、悪くない、ってさ。

 俺はそう思ったんだ。

 プレハさえいれば、他になにもいらないんだ。

 お前のそばで年を取って、お前のそばで息絶える。

 それもきっと、幸せなんだろうな、って。

 だから、俺の旅は、もう終わったんだ」


 リミノの背を、イサギが抱き締める。

 とてもとても大事で、愛しいものをそうするように。

 その優しい手が、なぜだろう。

 今のリミノにとって、何よりも、悲しかった。


『あたしの初恋の人、イサギへ。

 あなたの初恋の人、プレハより。』


 プレハの笑顔が、リミノの脳裏に浮かぶ。

 優しくて、暖かくて、自分よりずっと年下のはずなのに、強かった少女。

 金色の髪をした、美しい彼女。

 眩しかった。


 憧れていた。

 あんな風になりたいなって思っていた。

 でも、どこか認めている自分がいた。

 あれはきっと、自分とは違う世界で生きている人なんだ、って。


 ――勝てないな、って思っていた。


 一緒の旅についていったとしても、リミノの立ち入る隙間は、どこにもなかっただろう。

 ふたりの絆の前、自分だけが遠い距離を感じてしまって、惨めな想いに苛まれるだけだ。

 現実を突きつけられて、リミノは泣いてしまうだろう。

 好きだけの想いで彼らを困らせてしまうような、そんな足手まといには、なりたくなかった。


 いつだって、知っていた。

 わかっていた。

 彼女の微笑みは、隣に立つ少年にだけ、向けられていて。

 少年の笑顔は、常に彼女のものだった。

 

 でも、リミノは、きっと――。


 ――そんなふたりが、好きだったのだ。



 手紙の結びの言葉を見た途端――。

 リミノの瞳から、涙がこぼれた。


「……め、だよ」

「え?」


 リミノはイサギの手を振り払い、彼に向き直る。

 見上げるその瞳からは、涙が流れ落ちる。


 もうだめだ。

 これ以上は、堪え切れない。


 こみ上げる想いを言葉にしなければ、リミノが壊れてしまいそうだった。

 彼女は最愛の彼に、ぶちまける。


「だめだよ!

 そんなの、そんなの、だめだよ!」

「……プレハ?」


 リミノは彼の胸を叩く。

 それは力なく、弱々しかった。

 だが、何度も、何度も繰り返す。

 彼の想いをこじ開けるように。


「イサギは、お兄ちゃんは、そんな、そんなの、だめだよ!

 そんな結末、だめだよ!

 絶対に、絶対に、絶対にだめだよ!

 だってそんなんじゃ、お兄ちゃんが、救われないもん!

 だめだめ、だめなんだからっ!」


 彼女の目に映るイサギは、戸惑っているようだった。

 なぜ急に彼女(リミノ)が叫びだしたのかわからない。

 そんな顔だ。


「お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、こんなのないよ……。

 こんなの、どうして、ふたりが……。

 だって、ふたりとも、ずっとずっと、がんばってきて。

 それで、世界を救って、たくさんの人を救って。

 その最期が、こんなところで、ふたりで、寂しく、なんて。

 だめだよ、わたし、そんなの、いやだよ」


 だが、リミノは訴える。

 その想いが届かなかろうと。


「ふたりは、絶対に、幸せにならなきゃ、いけないよ。

 他の誰が、なにが、どんなことがあって、ふたりを邪魔しても。

 絶対に、絶対に、幸せになるべきだって。

 こんなの、こんなのなんて、幸せじゃないよ、だめだよ。

 報われなくっちゃ、救われなくっちゃ、おかしいよ。

 おっきな都で、たくさんの人たちに祝福されて、

 みんなの心に勇気を与えて、みんなに愛されながら、

 光の中で、生きていかなきゃ、だめだよ。

 ふたりが幸せにならなかったら、こんな世界、意味ないよ。

 ――だって、ふたりが救ってくれた、アルバリススなんだから!」


 彼と、彼女の幸せを願いながら。

 リミノはひたすらに、イサギの胸を叩く。


「ねえ、お兄ちゃん……。

 お願い、だよ、お兄ちゃん……。

 目を醒ましてよ、お兄ちゃん……」

「……」


 彼は手をリミノの肩に置こうとして。

 だがそれができなくて、腕をあげたまま、視線を揺らす。

 一体リミノ(プレハ)がなにを言っているのか、わからないのだ。

 だから不安でいっぱいになって、こんなにもうろたえていた。


「……お兄ちゃん……っ、おにいちゃん! おにいちゃん……っ!」

 

 その後、「うえぇぇぇぇぇぇぇ」と子どものように泣くリミノの前、イサギは心から困ったような顔をして、落ち着きなく佇んでいた。

 そんな彼の優しさが、気持ちが、リミノには辛かった。



 そしてリミノは、決意する――。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 



 リミノはその夜ベッドを抜け出して、リビングにやってきた。

 

「……」


 闇の中、虹色に輝くひとりの少女。

 極大魔晶、プレハだ。


 リミノは泣き腫らした瞳で、彼女を見上げる。

 天使のような微笑を浮かべながら、彼女はもう何も語らない。


「……お久しぶりです、プレハお姉ちゃん」

 

 イサギは隣の部屋で眠っていた。

 取り乱したリミノよりも、何倍も心労を重ねたように。

 

「ごめんなさい、お姉ちゃん。

 わたし、たぶん、いけないことを考えていたんだと、思う。

 でも、もう、大丈夫。

 わたし、ちゃんと、いい子になるから」


 リミノは胸元に手を当てたまま、唇を噛む。

 しかしその表情はどこか、さっぱりとしたものだった。


 泣いて、泣いて、枯れるほどに泣いて。

 想いを流して、リミノは自分の足で、ここに立っていた。


「お姉ちゃんとお兄ちゃんを、このままにはしておけない。

 だから、任せて、リミノに。

 もしかしたら、って思ったんだ。

 あの人なら、なにか知っているかもしれない、って。

 でもね。

 それが駄目でも、絶対に、あたしがなんとかするから。

 何年かかっても、何十年かかっても、絶対に。

 きっと、お姉ちゃんと、お兄ちゃんを、元通りにするから。

 だから――」


 なにも言わない彼女に、リミノは笑いかける。

 20年ぶりに再会したイサギを迎えたあの日、魔王城で浮かべた、憑き物が落ちたような笑顔で。


「――そのときになったら、プレハお姉ちゃんから、

 正々堂々とお兄ちゃんを寝取ってやるんだから、ね」




 この二年間、誰よりも世話になった師匠。


 もしかしたら、あの人なら、イサギとプレハを救うことができるかもしれない。

 彼女は、魔晶漬けになって発見され、誰もが手遅れだと言って見限った銀魔法師シルベニアを、治療した術師なのだから。


 術式教授(プロフェッサー)・キャスチ。


 それが、魔帝戦争を生き延びた、ひとりの賢者の名であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ