表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者イサギの魔王譚  作者: イサギの人
Episode:9 意志断つ剣は、誰が為に
108/176

9-13 強く儚い者たち

 慶喜の演説は続く。

 確かに言い分は拙いところもあり、とても褒められはしないレベルの語り口だ。 

 

 それでも、愁や廉造ですら邪魔立てできないなにかがそこにはあった。

 

「ぼくたちのそばにはいつだって大切な人がいる!

 だから、戦うとしたらそのためだけにあるべきなんだ!」


 馬上で腕を振り上げながら叫ぶ慶喜。

 その姿を見て笑えるものはどこにもいない。もう誰も彼を笑うことはできないのだ。


「確かにぼくたちはいつまでも分かり合えないかもしれない。

 だって大好きな女の子の心だって、ぼくはよくわかんないんだから。

 大陸も違う、生まれた場所も住むところも違うぼくたちだ。

 なにもかもが違って当たり前なんだよ、だけど、歩み寄ることはできるだろう!?

 ぼくだって毎日考えているよ、あの子がなにを好きで、

 なにが大切で、どんなことにときめいて、なにが嫌いかってさ!

 ホントにずっと考えている! 考えても考えてもわからないけど、それでも考えるんだ!

 だって大切なんだから! 少しでも近づけるようにさ!

 こんなコミュ症で空気が読めないぼくができるんだから、みんなができないわけがないだろ!」

 

 その叱咤には、情熱があった。想いが溢れていた。

 信頼があった。希望があった。なによりも、愛があった。

 

「自分が死んで歴史が変えられると思ったら、大間違いだ!

 みんなは生きて、そうして歴史を作らなきゃいけないんだよ!

 それがどんなに辛くても、苦しくても、相手に拒絶されるかもしれなくても、

 繰り返して、すがりついて、泥に塗れてもあがいてさ!

 格好良くなんてできなくたっていいんだ! ぼくもそうだったから!

 ロリシアちゃんに蔑んだ目で見られるたびに、なんだかもう死んでしまいそうなほどに自己嫌悪して、

 一晩、寝れなかったり、もっと他になにかうまい言い方はあったんじゃないか、とか、

 どうにかやれたんじゃないか、とか、恥ずかしくて悶絶して死にそうになるけど、

 そういうことを積み重ねて、生きていかなきゃだめだろう!

 ぼくたちは思いやり、思いやられてそうして過ごしてゆくんだから!

 誰かをブン殴って言うことを聞かせるだなんて、一番恥ずべき生き方じゃないのかなあ!」

 

 皆にそう訴えかける慶喜のひたむきさを、冷笑であざ笑うものたちもいた。

 だが、それと同じぐらい、感じ入るものたちもいる。

 

 人ひとりの言葉が万人の気持ちを揺さぶることなどは不可能だ。

 どんなに良いことを言ったところで、受け止める側の気持ちが調和していなければならないから。

 

 だが、ハナからそんなこと、慶喜にはわかっている。

 一万人近い群衆の心理を煽動するなど、不可能だ。

 望んでなどいない。

 

 ――それでも。

 たったひとりになら。

 

 ひとりだけになら、届くかもしれないと願い。

 慶喜が語りかけていたのは、デュテュにであった。


「……」

 

 しかし、彼女の表情はまるで変わらない。

 大仰な身振り手振りも、通用はしない。

 デュテュは幼い頃から多くの式典に参加し、聞き飽きるほどのスピーチを子守唄代わりに育った娘。

 慶喜の熱弁ですら、彼女の心を揺り動かすことはない。


 ――慶喜の言葉が響いたのは、意外にもピリル族の若者たちだった。

 彼らは一族を捨て、家族を捨ててここまでやってきたものたちだ。

 レ・ヴァリスだけを信じてついてきたのだ。

 彼がいなくなったなら、もはやその士気は半分以下になってしまったようなものだ。

 若者たちは、自らの生き方を、立ち位置を、もう一度問い直すときが来たのだと知り。


 もしかしたら、本当に戦う理由などなくなったのかもしれず――。


「――ですが」


 なればこそ、デュテュとて黙ってはいられない。

 慶喜の弁論がいかに拙いものであろうとも、その効果がある以上、捨て置くことはできないのだ。

 動揺の伝播を防ぐように、改めて腕を掲げるデュテュ。

 彼女もまた、雄弁する。


「わたくしたち魔族帝国には待っている人など、どこにもいません。

 大事な人も、帰る場所など、どこにもないのです!

 すべてを捨てて、この大陸に来たのですから。

 わたくしたちの歩んだ先に、新たな歴史が生まれます。

 だから、先に進むしか――」


 その言葉を遮るのは、本来ありえないことだけれど。

 慶喜はデュテュだけに通用するカードを切った。

 

 それは――あの日の思い出だ。


「なにをそんな澄ました顔をして、どこかで聞いたようなことばかり喋ってさ!

 らしくないんだよ、デュテュさん、全然、さ!

 ――だって、きみにだって好きな人がいただろ!」

「な、なんの話ですか」

「わかっているだろ! 魔王城で、きみは!」

「――」


 デュテュの表情がわずかに崩れる。

 それは彼女の仮面を打ち貫いたかのようだった。


「ずっと彼のことを追いかけ回してさ、大事だったんじゃないの!

 そばでいつも微笑んでいて、そんなきみたちがぼくはどれだけ妬ましかったか!

 あの魔王城の日々が、羨ましいと思っていたか!」


 デュテュの芯がわずかに揺らぐ。

 慶喜は彼女を追い詰め、逃さない。

 引きずり込む。


「きみたちはもう、誰からも憧れられるようなものを持っていたのにさあ!

 今からだって、やり直せるんだよ! あの日々を取り戻せるのに!

 どうしてきみは認めようとしないんだよ!」


 その行為はまさに――慶喜自身がゴールドマンとの戦いの前に言っていたことであった。

 引っ掻き回し、機転を利かせ、自らのペースに持ち込む。

 そも、慶喜がどこまで考えていたかは定かではないが。

 成就したその戦法の前に、デュテュは顔を赤くしながら叫ぶより他ない。


「今さらそんなことを言われても、どうしようもありません!」

「好きだったんじゃないの!? 添い遂げたいと思っていたんじゃないの!?

 ずっとずっと、あんな風に生きていけばよかったんだよ!

 それが幸せじゃないっていうんだったら、なんだっていうのさ!」

「わたくしは――」

 

 デュテュは片手で頭痛をこらえるようにこめかみを押さえた。

 非対称の眉が歪み、唇は小さく震えている。


「わたくしは、なにも知らない、子どもだったから……」

「なんだよそれ!」

「知らなかったから、幸せだったんです!」

「だから、なにが!」

 

 魔王の名を冠するふたりは戦場を挟み、怒鳴る。

 それは対話という名の殴り合い以外の何者でもなく。

 両者一歩も引かず、感情と理性の間でギリギリの丈をぶつけ合う。


「あなたにはわかりません!

 わたくしたち魔族が、一体どんな気持ちでいたかだなんて!

 この世界に召喚された異世界人であるあなたには!」

 

 その言葉に――。


 ついに慶喜が、ブチキレた。

 目を真っ赤にして、手を大きく振り上げて、誰かの気持ちを代弁するように。

 魔王は吠える。


「ふざけるなよ!

 呼び出したのはそっちだろう!

 今さら他人行儀じゃ済まないんだよ!!」

「――っ」

 

 首を絞められたような顔でデュテュは自らの口元を押さえた。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 頬をかくイサギ。

 気恥ずかしさを舌打ちでごまかすようにしてつぶやく。


「……ったく、あっちは盛り上がってんなあ」

「早くしないと俺様の軍が取り込まれちまうじゃねえかよ」

 

 ブレイブリーロードの行く先に立つレ・ヴァリス。

 彼の右腕のオハンは修復が完了していないのか、未だ輝きを帯びていない。

 だが、レ・ヴァリスの不安要素はその程度。


 先ほどからイサギは立ち続けるのも苦しそうに、荒い息をついている。

 コンディションの差は明白だ。

 

 平野に向かい合うふたり。辺りにはなにもなく、誰もいない。

 以前の大勢に見守られた戦いとは大違いだ。


「あの魔王、なかなか良いことをほざいているんじゃねえか。

 だが俺様が追いついたら、『魂砕』の一撃でオシマイだけどな」 


 レ・ヴァリスが拳を突きつけながら牙を剥く。


「……そうだな」


 この男の破術の前には、どんなものも通用はしない。

 慶喜も、廉造も、愁も、破術を持たないのならば皆等しく即死だ。

 どんなに巨大な法術を操れたところで変わらない。


 ――だから、行かせるわけにはいかないのだ。

 ここで決着をつけなければ。


「結局は、この世界はすべてが俺様の都合の良い方向に回っているんだよな。

 なにもかも、この魂が破術を手に入れたその日からな!」


 自らの盤石の勝利を疑わないレ・ヴァリス。

 過程がどうであれ、彼にとってはイサギを叩き潰したという結果が大事なのだろう。

 だからこそ、こんなところでひとりで待ち構えていたぐらいだ。


「どうだ、貴様。最期になにか言いたいことはあるか。

 この俺様、三界の覇王レ・ヴァリスが、責任を持って聞き遂げてやろうではないか」

「……そうだな」

  

 頭をかくイサギ。

 きょうは普段と違って、うまく頭が回らない。

 想いがフワフワと、指の先を蝶のように舞っていた。


「言いたいことは、山ほどあるようなんだよな、どうやら。

 でもそいつを言葉にするとなると、少し難しい。

 ああ、慶喜のこと笑えねえな、俺も。

 まさか先越されちまうとは思わなかったぜ」

「わかるぜ、大事なことほど口には出せねえんだな」

「……お前に共感されても仕方ねえんだけどさ」

 

 鬱陶しそうにレ・ヴァリスを見やり、イサギはため息。


「なんでか、忘れていたんだよな。

 そんなはずはないって思ってたんだけどさ、

 これがきっと神化病ってやつなんだよな。

 ったく、マジでシャレになってねえよ。

 俺があいつのことを忘れちまうとか、勘弁してくれよ」

 

 彼はなにを言われているかわからないだろう。

 イサギも相手に聞いてほしいわけではないから、釣り合いはとれている。


「思い出したのも、偶然っていうか、死にかけたからっていうか……。

 まあそこらへんはよくわからねえけどさ。

 あのカリブルヌスも様子がおかしいときはあったから、きっと本当に『忘れて』いるだけなんだろうさ。

 いざ自分の身に降りかかると、参ったな、怖くて仕方がない。

 まだ進行が進んでいなくて良かったというべきか。

 もうこんなことは懲り懲りだ、というべきか……な」


 レ・ヴァリスは戦いの行なわれている平野を一度だけ肩越しに振り向き、イサギを促す。


「それで、なにか言いたいことはあるのか?」

「いや、いいさ。お前を倒した後で、直接本人に言うよ。何年かかっても」

「その望みが叶えばいいがな」

「願いっていうのは、望むものじゃなくて、叶えるもんだ」

 

 鞘から引き抜いたカラドボルグが雷光を発する。

 いまだこの手に神剣クラウソラスはない。

 すぐ近くにまで来ているはずだが。


 まあいい。

 あろうがなかろうが。


 イサギが目を伏せると、レ・ヴァリスは淡く毒気を抜かれたような顔で。


「……貴様、あの時と同じ人間族だよな?」

「あ?」

「その割には雰囲気が……いや、構わんか。

 どうする? あのときに撃てなかった俺様を『一撃で倒す技』を使うか?」

「あー」

 

 前にレ・ヴァリスと戦ったときにイサギが言った言葉だ。

『これからの一撃は絶対に避けられない。だから降伏しろ』と。

 鼻の頭をかくイサギは、剣を肩に担ぎながら。


「なんだよお前、あんなの信じていたのか」

「な!?」

「ハッタリに決まってんだろ。

 ビビりか? だっせえな、王。

 詐欺には引っかからないように気をつけて生きろよ」

「――貴様!」

 

 激昂して髪を逆立たせるレ・ヴァリス。

 二本足のオハンを操り、宙に浮遊する彼のそれはもう、見慣れた姿だ。


「あのような極限の状況でなめた真似を……。

 今度こそ殴り潰してやるわ!」

「シャレの通じねえやつだな。

 ……まあいいか、最期に分かり合えちまうよりはマシだ」

 

 イサギは大きく息を吸った。

 まるで取り込んだ空気によって体を巨大化させるように。

 

 レ・ヴァリスの『魂砕』のようなものがあれば別だが、イサギはただの人間だ。

 元々、才能といえば神剣クラウソラスを扱えることができる素質だけ。

 相手の防御を無効化するような都合の良い攻撃手段などはない。


「――だが、今度の一撃はまさしくそれさ」

「は!」

 

 イサギの眼光を受け止めて、レ・ヴァリスは鼻で笑い飛ばす。

 今度もまた脅しだと感じたか? ならばそれもよし。

 所詮は相手の『覚悟』も見極められぬ男、ということだ。


 かつてバリーズドはイサギを救うために、魂を込めた斬撃を放った。

 セルデルはイサギを殺すため、己の魔力のすべてを振り絞り、そして死んだ。 


 イサギがこれから放つのは。

 ――未来を乗せた一撃。

 

「死ね、『最強』!

 貴様を殺して俺様は高みへと至る!」

「いいさ、レ・ヴァリス」

 

 両足から複雑な噴射を絡み合わせながら突進してくるレ・ヴァリス。

 その変幻自在の軌道を、イサギはもはや目で追ってはいない。

 ただ己の間合いに入ったその瞬間を感じるのみだ。

 

 来た。

 

 左斜め前。紫色の光をたなびかせて、もはや加減もなにもない全力の速度。

 最後は自分の拳でトドメを、ということなのだろう。

 これだから戦いに美学を持ち込む男は、嫌いではないのだ。

 

 イサギは半身になり、左の手のひらを突き出す。

 なけなしの、振り絞るような魔力を闘気に変えて。


 見ろよ。

 口内で告げる。

 これが俺の――覚悟だ。


「――!?」

 

 迫り来る左拳に、金色の燐光をまとうイサギは手のひらを突き出す。

 紫と黄金。ふたつの光がぶつかり合いながら火花を散らした。

 レ・ヴァリスの全身を気流のように包み込む魂の輝き。

 一方、イサギの背中からはそれに負けぬ推力を得るために翼が浮き出ていた。


 激突。

 ふたりの魔力が爆発し、地から立ち昇った光が天を割る。


 オハンと衝突するイサギの手のひら。いくら煌気をまとっていようが、受け止められるはずがない。

 五指が爆散したかのように広がる。肉が弾け骨が見えた。

 脳が焼き尽くされるような激痛に全身が逃げ出そうとするのをイサギは意志の力で無理矢理押しとどめる。

 さらにオハンの勢いは止まらない。

 分厚い木の皮を引き裂くかのように、イサギの左腕が砕け、ひしゃげ、その破損はすでに肘まで到達する。

 アラームコールは真っ赤な視界となって現れた。


「――ッ」

「腕一本と引き換えに俺様を倒すつもりか!?

 みくびるなよ!」


 そこからさらにオハンが加速した。

 自らの体が削岩機によって内部から破壊されてゆく感覚。

 赤い実が破裂するかのように、肩まで抉り取られた。

 イサギはゆっくりと剣を振り上げる。もはや間に合うはずがない。

 仮にここでレ・ヴァリスを倒したとしても、出血多量での死は免れない。

 

 そして拳は心臓に届く。

 逃すつもりなどない。レ・ヴァリスは獅子吼した。

 

「貴様の命、この俺様が殴り潰したぞ!」

 

 ――密着状態。ゼロ距離で放たれる『魂波』。

 イサギの胴体を、その心臓を真っ二つにする波動は、間違いなく男の腹を貫いた。

 背後の草が薙ぎ払われ、地面がズタズタに引き裂かれるほどの威力。

 これで生きていられるものがいるのなら、それはもはやヒトではない。


「ああ」

 

 ヒトではない。


「やるよ、俺の命は」

「――な」


 ヒトのはずがない。

 

「だが、この世界の未来は、もらってゆく」

 

 紅蓮の瞳をしたイサギの体が――。

 ――その四肢欠損が、瞬く間に修復されてゆく。


 これは。

 知っている、レ・ヴァリスはこの正体を。

 禁制品。

 あれはもう、ギルドによって取り締まりされたと聞いたのに。

 

 イサギの覚悟、それは――。

 ――ヒトの身を捨てること――。


「リヴァイブスト――ッ」


 唸るレ・ヴァリスの目が輝く。

 至近距離からの『魂砕』。だがイサギはそれを許さない。


「じゃあな」

 

 稲妻の速度で振り下ろされるカラドボルグに左腕が添えられて。

 バリーズドから受け取ったその剣は、レ・ヴァリスの体を斬り裂いた。

 

 

 

 

 晶剣を振って付着した血液を一瞬にして蒸発させると、イサギはカラドボルグをくるりと回して鞘に収めた。チィンという儚い音は風にかき消されてゆく。

 イサギは自らの左手を見下ろして。


「……ったく、とんでもねえ兵器だぜ、これは」

 

 リヴァイブストーン。


 セルデルが作り出したそれは、持ち主の魂を吸い取ることにより、肉世界の無限回復を可能にする魔具であり。

 代わりに失われてゆく魂はかけがえがなく。

 イサギの暗殺対象である『神化病患者』に、彼自身が成り下がってしまったことを表していた。


 イサギはよろめきながら、顔を押さえる。


 リヴァイブストーンを飲み込んで以来、脂汗が止まらなかった。

 決心していたこととは言え、仕方のないことだろう。

 イサギはこの石を使ったものたちの末路をもっとも近くで見てきたのだから。


 もはや過不足なく動く拳。開いたり握ったりを繰り返す。

 セルデルのときだ。すでに後遺症すらもない。

 胸の中にぽっかりと穴が空いたかのように、魂の喪失感だけがあったけれど。


 今度はなんだ。

 誰を、なにを忘れたんだ。

 自覚症状もなく、化け物へと変わってゆくのか。

 恐ろしくてたまらない。


 ――だけど。


 セルデルを倒した時に。世界中の冒険者を殺し続けていた時に。

 もう、諦め(かくごし)ていたことじゃないか。


 心の中を吹き抜ける風は乾いていた。

 もとよりイサギに迷いはない。


 自分の剣が、誰かを殺すことが、

 この世界の平和の礎となるのなら。


 慶喜やロリシアや廉造や愁や、

 見たことも聞いたこともない誰かの未来に繋がるのなら。


 だったらいいだろう。

 今さらさ。


「いいさ、なにを忘れたって、もう」


 イサギはレ・ヴァリスの屍を残し、歩き出す。

 振り返ることはない。

 

 過去も今も、未来すらも棄て。

 イサギは己の道(ブレイブリーロード)を征く。


「――最後にただひとつ残るものが、プレハなら、さ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ