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一章 崩壊の兆し 1話

 ひどく暗い所だった。光も何も無い、ただただ暗い。


「私は神だ。これから、世界の代償を払ってもらう」


 目の前にある黒い靄は無機質な声色で、俺に向かってそう言った。


 今にも背景と混ざり合って、終いには闇へ溶けていきそうな気さえするそれは、異物と捉える材料として遺漏なかった。


 ──実体はない。が、確かに人型の黒い靄は眼前にあった。


 形容し難い何か、目、耳、口など生命を保つ上で、重大な役割を担う器官が全て欠如している。更にはブラックホールのように全てを飲み込まんとするその風貌、異質な空気を漂わせるこの世に属さない何かに俺は猜疑心を抱かずにはいられなかった。


「今から、世界は崩壊を始める。そして『代償』はお前たちを許さない」


 男性とも女性ともとれぬ中性的でかつ、機械的な声色だった。理解が及ばず、口を開こうとするが発声する事すらままならない。

 必死に声を出そうとしても喉の奥に何かが突っかかったようで出るのはハッハッ、と情けなく途切れた息だけ。


 ──何度も、何度も何度も。


 懲りずに発声を試みる。

 しかし、その熱情的な行動とは反して徒労に終わる事となった。


(……か、体が動かない? ……違う、動かせないんだ……)


 俺は立ち往生を余儀なくされていた。神経の伝達が遅れているのだろうか。いや、厳密にその表現は正しいと言えない。


 地に足を付けている感覚とも違う……五感のうち触覚だけがどこかへ消えてしまい、第三者目線で見ているかのごとく、例えるのならば離人症的な感覚で身体と精神が乖離した妙な浮遊感。


 明らかに脳の根幹から当惑している。パニックに陥りそうだ。

 しかし、自称神とやらは間髪入れずに話を続ける。


「では、キミたちはどうせ性懲りもなくなんでこんな目に遭うんだと言うだろう。そんなキミたちに向けて私が助け舟を出そうと思う。一つ目は世界の崩壊に関して、二つ目は唯一の助かる方法、救世主に関して、だ──」


 世界の七つの地域に突如として、異空間が現れる。

 その異空間は得体の知れないバケモノを産み出すと同時に徐々に大地を侵食するといった到底信じられない内容だった。


 コンクリートは腐食し、草木は枯れて二度と植物は生えず、生き物が住めない土地に変貌する。それが『代償』らしい。


 これまで人間が行ってきた愚行や経済発展に伴う、環境問題──それらがトリガーとなっているようだ。 幾つか例を挙げるならば、資源エネルギー問題が引き起こす化石燃料への依存や産業革命以降の工業社会は地球にとって悪影響を及ぼしているのは自明である。


 不可視の副作用が累積、代償として具現化したと言われても無心で日々を送っている俺からしたら耳に入ってなお腑に落ちる形にはならない。

 バカなりに解釈するが、神が地球を掌握しているのだろうという空疎で程度の低い見解にしか至らなかった。


 また、中性的で人とも取れぬ音が耳朶を打つ。


「私も神だ。人間を創ったものとして、僅かな慈悲を与えよう。私はこの世界の覚醒者を創った。その力を持ってすればこの世界を救えるかもしれない」


『その覚醒者がこの世界を救うか救わまいがどちらでも構わない。もしかすれば、覚醒せずにこの世界が崩壊する可能性もあるが、これほどの温情をしてやったのだから有難いと思ってもらいたい』


 不安を煽る無機質な声は含蓄のある言葉を付け加えると、姿が暗晦に霧散した。

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