第8話
翌朝、烈はスマートフォンのアラームが鳴るよりも前に目が覚めた。家でのんびりしていても意味がないと、そのまま早めの登校をすることに。
昨日の俺達のやりとりを見た生徒はいないか? 学校には知られていないか?
学校に向かう生徒達の会話に聞き耳を立てるが、誰も話していない。烈は大丈夫そうだなと少し安心するが、いつもと違う点に気づく。
通学路に教師達が立ち、誰かを探しているように生徒一人一人の顔を確認している。今井の件がバレたのかと思わず身構えた。しかし、ちょうど登校中だった今井が教師の横を通り過ぎても呼び止められることはなかった。どうやら今井の件ではないらしい。
烈は玄関で上履きに履き替え、自分の教室に入る。
萌絵はいつも一番早くに登校しているのだが、今日は姿が見えない。
寝坊でもしたか。珍しいな。昨日の電話の用事を聞こうと思ったのに。
烈は特に深く考えず、萌絵が登校してくるまでのんびりと待つことにした。だが、萌絵はホームルームの時間になっても来ない。それどこか担任の多野も遅れ、ホームルームが始まらない。クラスメイト達も何かがおかしいとざわつき始める。
予定の時刻をしばらく過ぎてから、ようやく多野と逢蕾花が来た。二人とも顔が暗い。多野は重々しく口を開く。
「えー、昨日から花咲さんが行方不明となっています。学校から自宅には戻っておらず、連絡も繋がりません。これから教師側で会議をするので、皆は自習をしていてほしい。もし、花咲さんと連絡がついたら、すぐに教師に教えるように」
そう言い残し、多野は逢蕾花を連れて教室を出ていった。多野達がいなくなると、クラスメイト達は一斉に騒ぎ出し連絡を試みる。烈も萌絵に電話やメールをするが返事はなし。
なんで返事をしてくれないんだよ! どこにいるんだ!
烈は萌絵を心配し返事を切望するが、それでも連絡が彼女から返ってくることはなかった。
教師達の会議は長引き、午前中だけではなく午後の授業も全て自習に変更。帰りのホームルームにおいて、多野は烈達生徒に全ての部活が中止となったので、寄り道せずに帰宅することを何度も念押しした。
烈はこれからどうするかと考えていると、クラスメイトの男子達の声が聞こえてきた。
「もしかして、花咲は青薔薇の貴公子にやられたんじゃないか?」
「おい! いくらなんでも不謹慎だろ!」
「そ、そうだよな。冗談でも言っていいことじゃなかった。すまん」
その会話を聞いた烈は荷物をまとめて学校を飛び出した。
そうだ、青薔薇の貴公子だ。そいつは女性を狙って殺害している。だから、教師達は花咲の失踪を重く考えていたんだ!
烈も教師陣同様、最悪の考えが頭をよぎり、萌絵を探そうと街中を探し回る。
萌絵が行きそうな場所を片っ端から回るが、見つからない。他に探すべき場所はないかと必死に考えていると、とある場所が浮かんだ。
「……あそこか?」
烈が萌絵とクラスメイトになってから少し経った頃。烈は彼女にとある場所に連れて行かれた。その場所は学校から少し離れた小高い場所にある古びた公園。街の風景が見下ろせ、人があまり来ない静かな場所。萌絵は何か悩みがあり、一人になりたい時にその公園に来ると言っていた。烈を連れてきた日も何か悩み事があったようで、烈と二人ベンチに並んでしばらくの間街の風景を見ていた。
「頼むから、そこにいてくれよ……!」
ひび割れた石製の階段を一歩ずつ登っていく度に、烈の心臓の鼓動が大きくなっていく。顔の汗を拭いながら、ようやく公園に辿り着いた。
見つけた。
見つけてしまった。
ところどころ剥げた木製のベンチ。その上に仰向けで寝そべる彼女の姿を。
夏日だというのに顔は青白く、生気が感じられない。胸の上で両手を組まされており、青い薔薇が一輪添えられていた。それはまるで安らか死後への旅路を祈るようだった。
「……嘘、だろ……」
萌絵の遺体を目にした烈はその場に力無くへたりこんだ。




