第11話
逢蕾花の笑顔は、彼女が今まで見せていたものとは明らかに異質だった。相手も自然と頬が綻ぶものではない。
暗く、仄暗く、見た人間が後ずさるような強烈なものを秘めている。烈も彼女の表情に、思わず息を呑む。
「全く、週刊誌にも困ったものよね。本当に余計なことしか書かないんだから。当時も中学生の私に付き纏って事件の感想を聞いたり、同級生や近所にも恥ずかしげもなく家の事情を聞こうとした。自分の仕事を恥ずかしいと思わないのかしら」
言葉の端々から、彼女が苛ついていることが窺える。
な、なんだ。雰囲気が変わった? まるで別人じゃないか……!
逢蕾花の姿に、烈は戸惑いの色を隠せない。
明里は逢蕾花の愚痴を軽く流し、「ご自身が青薔薇の貴公子だと認めるということですね?」と念押しする。
「ええ、そうよ。今更誤魔化しても無駄だしね」
逢蕾花はきっぱりと言い切った。何も恥ずかしいことはないとでも言わんばかりに。
「青薔薇の貴公子よ」
烈は心の中でガッツポーズ。逢蕾花本人の言質を取った。今の様子は烈達のスマートフォンで録画した。これで烈達の勝利条件を満たした。
「ねえ、剛村くんと明日見さん。君達は今幸せ?」
烈と明里は質問の意図が分からない。油断させて逃げる気かと、二人は警戒。
逢蕾花はお構いなしに問いかけを続ける。
「家庭環境はどう? 家族はいい人? 親は愛情を注いでくれる? 辛くて死にたいと思ったことはない?」
ネガティブな質問を矢継ぎ早にする。烈達は何をしたいのかと戸惑うばかり。
「うん、君達の反応で大体察したわ。私の質問が理解できないって顔。恵まれた環境で育ったようね。もし、家庭環境が悪かったら悪態をついたり、不快感が顔に出たり、何かしら態度に出るもの」
「苫米地さんはどうなんですか?」
明里は逢蕾花に聞き返す。逢蕾花の意図を見極めようとしているようだ。
「私の家はね、最悪だったわ。この上なく、ね」
暗い笑顔で言い切った逢蕾花は、何故自分が殺人鬼になったか、自身の身の上を話し始める。




