第5話
自宅に入った烈は自分の部屋に行き、制服から私服に着替える。リビングへと降り、昼食を食べようと備蓄しているカップラーメンを棚から取り出す。ラーメンを食べ終えると、空容器を片付けてから、自分の部屋と戻っていった。
特にやることもないので、部屋の掃除をすることに。部屋の隅に重ねた何週間も前の雑誌をまとめていると、とあるものを見つけた。
「そういや、こんなもんも買ってたな」
それは青薔薇の貴公子の特集記事が書かれた週刊誌。萌絵についてのゴシップを確かめようと、購入したものだ。烈は片付けの手を止め、週刊誌を開く。途中で明里に読むのを制止されて以降、続きには目を通していなかった。今更読んでも意味はないのだが、せっかく金を出して買ったのに、全ての中身を読まずに捨てるのはもったいない。
貧乏根性で読み進める烈。青薔薇の貴公子の特集部分を読み返すが、相変わらず不快な記事だ。被害者の実名や家族構成なども平気で載せており、プライバシーのへったくれもない。
「……は? なんだよこれ?」
とある被害者の情報に、烈の目は縫い付けられた。何度も何度も読み直す。そこにはとある驚愕の事事実が記載されていた。
ちょっと待て。だとしたら、あいつのあの言動はおかしくないか?
「とにかく、明里に相談しないと……!」
烈は自室を飛び出し、一階へと駆け降りる。明里の家に行くため玄関の扉を開けると、明里と出くわす。突然玄関が開いたことに明里は「うわ!」と驚き、後ろに咄嗟に下がった。
「ちょっと烈くん、あぶないじゃないか! あやうく女の子の顔に傷がつくところだったぞ。もしそうなっていたら、君は責任を取ることになっていたからな」
「悪い悪い。お前がいるとは思わなくて」
「まったく。それで慌てていたようだが、どこかに行くのかい?」
「ああ。明里に伝えたいことがあってな」
「ボクに?」
「とある人物について、思うところがあるんだ」
明里はニヤリと口角を上げる。
「奇遇だね。ボクも君と話をしたくてね。……どうやら、お互いに話したい内容は同じようだ。君も気づいたんだな? あの人に」
「ああ。花咲の件はまだ終わっていなかった。いや、それだけじゃない。もしかしたら、八年前の青薔薇の貴公子事件も解決できるかもしれない」
「ほう?」
明里の語尾が上がる。とても楽しげだ。
「今の烈くんは、ボク以上に先が見えているようだね」
「分かったんだ。一連の事件の黒幕が」
「黒幕とは、あの人だよね? 黒幕だと分かった理由を聞かせてくれないか?」
烈はこれまで得た情報、そこから導き出された結論を明里に伝える。
「なるほど。そういうことか。だとしたら、奇妙な行動にも合点がいく。だが、烈くんの情報だけではダメだ。黒幕は柳先生よりも圧倒的に手強い。なんたって八年も警察の捜査を掻い潜ったんだから。念入りに準備をしなければいけない。言い逃れできない証拠を集めて、今度こそ捕まえるんだ」
「分かってる。だけど、どうする? 今更、証拠を見つけられるのか? あいつは柳と違って、自分がこれまでの事件に関わっているという痕跡を残していない。だから、警察もあいつの存在には未だに気づいていない」
「いや、痕跡なら一つだけ残しているよ」
明里は烈に痕跡の説明をする。説明を聞いた烈は、自身の頭の隅で燻っていた疑問が一気に解決した。
「そうか。あれはそういうことだったのか。じゃあ、あの時の明里の行動も?」
「うん。ボクもあの人の行動には小さな違和感を抱いていたが、烈くんの話を聞いてようやく全てが繋がったよ。だけど、まだ弱い。痕跡とあの人を結びつける証拠を手に入手しないと」
「どうやって?」
「その証拠は、相手がまだ持っている可能性がある。証拠は本人自身に吐き出させる。いいかい、よく聞いて」
明里の作戦を聞き、烈はこの場ですぐに思いつくものだと感心する。やはり、彼女は頭が相当キレる。
「烈くん、ここから正念場だ。気を引き締めよう」
「ああ!」
烈は明里の言葉に力強く頷く。
明里の言う通り、相手は手強い。だけど、萌絵の仇を今度こそ完璧に討つため、負けられないのだ。




