第2話
萌絵が亡くなってから二回目の月曜日。そして、この日には二回目の全校集会が開かれる予定である。
今回も通学路や学校の周りには報道陣が並んでいた。ただ、萌絵殺害の時一点違うところがある。それは、彼らが積極的に生徒にインタビューを試みようとしていることだ。
前回は被害者的側面しかなかったが、今回の学校側は加害者も出してしまった。この状況なら生徒にインタビューしても、世間からバッシングを受けないと踏んだのだろう。
記者やテレビ局のアナウンサーが果敢にも生徒に声をかけるが、ほとんどの生徒は無視を決め込んでいる。たまに柳に恨みを持った生徒が応えると、記者達はその生徒を囲んで質問責めにしていた。
烈も自分に向けられるカメラとマイクを無視し、学校へと入る。教室に到着すると、クラスメイト達は柳の批判の大合唱をしていた。日頃彼から受けていた仕打ちの鬱憤も併せて、萌絵を殺害された恨みを少しでも晴らそうとしているのだろう。
死人に鞭を打つのが好きではない烈も、今回ばかりは彼らを咎める気にはなれない。
自分の席に腰を下ろした烈は、空席が多いことに気がついた。いつもならこの時間にすでに来ているクラスメイト達が来ていない。
やがて、担任の多野が教室に来た。多野は詳細を言わなかったものの、クラスメイトの休みの理由は精神的問題のようだ。
ホームルーム終了後、烈達生徒は多野に連れられ、体育館へ。
他のクラスでも、休んでいる生徒が多いみたいだな……。
体育館に集まった生徒達も、いつもより数が少ない。柳が萌絵殺害の犯人だという事実は、烈の予想よりも影響が大きいようだ。
春野校長が登壇し、全校集会が始まる。春野校長は更にやつれており、烈達生徒は彼の姿を見て、彼の置かれている状況に同情してしまう。
春野校長は柳については触れず、学校が今厳しい状況にあるとだけ説明。
「しばらくの間、この学校にはスクールカウンセラーが滞在します。もし、何か相談事があったら、その方に相談してください。また、教師も話を聞きますので、決して一人で抱え込まないように!」
春野校長の話を聞きながら、烈は生徒の現在の心情を推し量る。おそらく生徒達は殺人犯が自分の近くにいたことに、精神的ショックを受けたのだろう。もしかしたら、自分が殺されていたのではないかと。
高校生は多感な時期だ、身近で事件が起きれば精神的に不安定になるのも当然。柳と直接対峙し、殺し合いをして尚も平気な烈の方がおかしいのだ。
あいつは死んでからも、周りに悪い影響しか与えないな。
集会が終了後、烈達はクラスに戻り、そのまま帰りのホームルームへと移行。今日は授業なしで終わりだ。
多野は先ほどの春野校長と同じ言葉を繰り返し、ホームルームは短時間で閉じた。
「なあ、剛村」
烈が帰り支度をしていると、水原が話しかけてきた。
「なんだ?」
「柳が犯人であることを突き止めたのって、お前と明日見さんっていう噂は本当か?」
「あー……」
もう出回っているのか……。どう言えばいいか……。
烈が答えに窮していると、烈の様子を見て水原は察した。
「その反応だと、噂は本当みたいだな」
「このことは広めないでくれないか。警察から色々と口止めされていてな……」
「分かってる、分かってる。前も言ったが、俺の口は超合金製だぜ」
軽口を叩いた後、水原は真面目な表情になり、「話は変わるけどさ」と続ける。
「うちのクラス、休んでるやつ多いじゃん。それで見舞いに行こうと思うんだ」
「見舞いに?」
「ああ。やっぱ、心配でさ」
水原なりに、クラスのために出来ることをしようとしているのだろう。烈は彼のような人間と同じクラスであって改めてよかったと思う。
「水原。お前、実はいい奴なんだな」
「なんだよ、実はって! どっからどう見ても、俺はいい奴だろ! 聖人だろ! 法王だろ!」
「法王って、意味わからん」
「とにかくだ、俺はこれから見舞いにいく。他のクラスメイトも誘ってる。お前も一緒に……」
「剛村くん、剛村くん」
水原と戯れていると、烈を呼ぶ声が聞こえてきた。声の方向に目を向けると、教室の扉の近くで逢蕾華が烈を手招きしていた。
「ちょっといいかしら? 話があるの」
「うん、大丈夫!」
烈は逢蕾華に返事をした後、「すまん、水原。見舞いはまた今度参加するわ」と断りを入れてから逢蕾華について行った。




