第4話
柳が沈黙してから一分ほど経とうとした時、ようやく柳は口を開いた。
「……分かった。認める。認めてやるよ」
「ボク達の推測が正しい、自分が花咲さん殺害の犯人だと認める、ということですね?」
明里は、柳自身の口から明確に自分が犯人だと言わせようとする。
だが、返ってきた柳の言葉は懺悔ではなかった・
「いいや、違う。色々な問題のせいで、俺の家庭の経済状況は良いとは言えない。だが、それが何故美人局と繋がる? 金がない、イコール美人局とはならないだろ。金銭的に困窮している人間は全員犯罪者か? お前達は差別主義者か?」
この期に及んで否定するのか?
烈は柳の往生際の悪さに怒りを募らせる。一方の明里はあくまで冷静に、淡々と相手を追い詰めていく。
「あくまで美人局の件については、お認めにならないんですね?」
「当たり前だろ。身に覚えがないんだから」
「では、決定な証拠を提示しましょうか。反論の余地も無い証拠を」
明里は近くに置いてあった自身のカバンに駆け寄り、中を弄る。その間、烈は柳が逃げないように睨みを聴かせていた。
目的のモノを取り出した明里は、「どうぞ、それが決定的な証拠です」と柳の足元に向かってそれを投げた。A四サイズのクリアファイルであり、柳は腰を屈めて拾い上げる。
「明日見、これはなんだ? 知らない女性が写っているが、俺には全くわからないな」
「その画像すらも分からないと仰るのですね。それは花咲さんがマッチングアプリのプロフィール画像じゃないですか? メッセージを受信した時も見たはずなんですけど」
「だから、俺はマッチングアプリなんてやっていない!」
「いくら白を切っても、今更意味はありません。画像を見てください。花咲さんの左手の薬指を!」
明里に一喝された柳は彼女の勢いに押され、画像に視線を落とす。
「画像が小さいからと、ボクがわざわざ印刷したんですよ。その画像なら見えるはずです。何が見えますか? 指輪が見えるはずですよね?」
「……ああ。見えるが、だからなんだ?」
「ボク達は美人局の被害に遭った男性と接触し、女性が花咲さん、夫を名乗った人物があなたであるという証言をもらった。あなた達はその指輪をつけ、夫婦を演じて男性からお金を巻き上げたと」
「ありえない。その男の見間違いだろ! 今すぐそいつをここに連れてこい。俺じゃないと言わせてやる!」
「彼を呼び出す必要はありません。画像の指輪は、あなたがかつて装着していた結婚指輪ですよね」
「こんな指輪……」
「どこでも売っている、つけている人間は大勢いると言うつもりですか?」
言葉の応酬をする明里と柳。柳は更なる反論をしようとするが、明里が遮る。
「既製品ならそうでしょう。ですが、柳先生。あなたは生徒に対し、過去にこのような発言をしていますね。俺の結婚指輪はオーダーメイドで作ったもの。金はかかったが、この世に一組しかない。お前達もこんな指輪を送れるよう、送ってもらえるような人間になれと」
明里はトドメの言葉を、柳にぶつける。
「その指輪を持っている男性は柳先生、あなたしかいないんですよ!」
「……!」
今度こそ、柳は敗北を認めるしかなかった。
彼に反論材料はなく、完全に沈黙する。




