第16話
明里の三つ目の質問をした後、久我には帰ってもらった。別れ際、明里は久我に対し、連続暴行事件及び青薔薇の貴公子事件について、近い将来警察に証言してもらうかもしれないと伝えた。久我は自分の痴態が世間に暴露されてしまうのではと消極的だったが、明里に抜かりはなし。
「久我さんの心配している事態にはさせません。この烈くん、警察とはとても仲良しです。配慮するよう、彼が口添えをしましょう」
そう言ってなんとか久我を説き伏せた。
「犯人はこれで確定したんだ。それで次はどうするんだ?」
明里は追加で注文したオレンジジュースのグラスの中で、ストローをつまんで回す。
「犯人を呼び出して、ボク達の推測をぶつけて、罪を認めさせる。警察への通報も考えたが、彼らはすぐに逮捕には動かないだろう」
「なんで?」
「彼らは過去に勇み足のあまり、冤罪を引き起こしてしまった。同じ過ちを繰り返さないよう、今度は慎重に裏取りをしてから逮捕に踏み切るだろう。だが、それでは遅すぎる」
青薔薇の貴公子は現在犯行を一旦止めているが、新しい獲物を見つけたら犯行を再開するかもしれない。新しい犠牲者の出現は、烈と明里にとって不本意である。元より二人で犯人を捕まえるつもりだった。
「だが、犯人が俺達の呼び出しに応じるか? 自分の正体がバレたと逃げるんじゃ?」
「問題ないよ。彼を呼び出す方法はすでに考えてある。これなら彼は必ず来るはずだ。彼の性格上、逃げることは絶対にプライドが許さない」
自信を滲ませる明里。彼女の考えた方法とやらは、犯人にとってかなり効果的なようだ。
「分かった。呼び出しについてはお前に任せるよ」
「言っておくが、烈くんも色々と準備しないといけないよ。ボクの予想だが、彼は素直に捕まらない。激しく抵抗するはずだ。おそらく力尽くで身柄を拘束する必要があるだろう」
明里は烈の肩に手を乗せる。
「そうなったら、君の出番だ」
「ああ。荒事担当は俺だからな」
「うん。期待しているよ」
明里はオレンジジュースを少し飲んでから、自分の唇をぺろりと舐めた。凄みのある、獲物を見つけた猛禽類のような笑顔を浮かべている。
「数多の点と点から、ようやく紡いだ真実の繋がりだ。この真実の糸で犯人を絡め取ってやろう。そして、後悔させてやるんだ。ボク達の友人を殺めるという蛮行を犯したことを」
明里の言葉を聞きながら、烈はテーブルの下で自分の両拳を強く握る。
あと一歩だ。あと一歩で憎き犯人を捕まえることができる。
烈は自分の目的がようやく達成できるという喜びと、犯人への暗い憎悪から身体を震わせる。




