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明日見明里は退屈が嫌い  作者: 河野守
第3章 点と点

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第8話

 打ち合せを開始したのは午後三時。本来なら午後一から始めるはずだったが、明里の家庭の事情のため、少し開始時刻が遅れた。

 小腹が空く時間帯なので、烈はコーヒーと軽食代わりのチョコクッキーを用意し、明里と共に自室へと入る。いつものように資料を床に広げ、腰を下ろす。

「さて、まずは何を話そうか?」

 そう切り出した明里に、烈が手を挙げて見せる。

「俺からいいか? ちょっと話したいことがあるんだ」

「お。今日は積極的だね。どうぞ」

 烈は萌絵が水曜日に友人宅によく泊まっていたこと、水曜日が定休日の職業が多いこと、そこから犯人像を推測したことを報告する。

 烈の話を聞いた明里は感心したように頷く。

「なるほど。水曜日が休みの職業か。そこはボクも思い至らなかったな。それにしても烈くんも段々探偵脳になってきたな」

「なんだよ、探偵脳って」

「その名の通りさ。探偵のように複数の点の情報を考察し、情報同士の繋がりを見出す思考回路のことだよ」

 明里は何かを思いついたように、手を合わせる。

「そうだ。将来、ボクと烈くん二人で探偵事務所を開かないかい?」

「探偵事務所? なんだよ、唐突に」

「君は事件、事故を引き寄せる体質だ。君がいれば、事件の方からどんどん事務所に転がり込んでくるから儲かるぞ。中々いい商売だと思うんだけどね」

「人を招き猫みたいに言うんじゃねーよ!」

 事件を呼び込む招き猫なんて御免である。いや、疫病神と言った方が正しいかもしれない。そのような縁起の悪い存在になるのは絶対に嫌だ。

「なんだい、何が不満なんだい? ボクは知的好奇心を満たせる。君は人助けができる。お金儲けもできる。良いこと尽くしじゃないか」

「良くねーよ。お前にしかメリットないだろ。俺は平凡な生活を送りたいんだ。波乱万丈さはいらない」

 たださえ気をつけているというのに、烈は面倒事に巻き込まれてしまう。探偵事務所なんて開いたら、今よりもずっと大きく厄介な事件に関わることになるだろう。退屈が嫌いな明里はドラマチックな人生で楽しいかもしれないが、烈として波風の立たない普通の人生で十分だ。

「冗談言ってないで、それより捜査に話を戻すぞ」

「……ボクは君との将来を本気で考えているんだが……」

「なんか言ったか?」

「なーんでも。では、烈くんの言う通り、花咲さんを殺害した犯人は水曜日が休みの職業と仮定しよう。他の事件もそうか検証してみようか」

 烈は明里と共に青薔薇の貴公子事件が水曜日に発生しているか確認。第二次の犯行日は毎週水曜日であることが判明した、だが、第一次の場合は曜日がバラバラであった。

 烈は脳に糖分を補給するため、クッキーを一枚手に取り頬張る。

「第一次と第二次の犯行の曜日の違い、この違いはなんだ? 第二次の犯人は水曜日の活動時間が長い。この推測は合っているよな?」

「おそらくね。ただ、第一次の場合は職業が違ったんじゃないのかな。休みが日に寄って違う、または残業が少ないとか」

「うーむ……」

 二人は第一次と第二次の違いを考える。だが、どれだけ考えても理由が思いつかず、ただ部屋には時間と沈黙だけが流れる。

「……烈くん、自分で言っておいてなんだが、当初の方針通り花咲さん殺害の犯人にのみ焦点を当てよう」

「そうだな。だけど、それに限定しても犯人は特定できない。もっとこう、決定的な情報が欲しいよな」

「同感だね」

 水曜日が休みである人間はごまんといる。烈達が求めているのは、この人物が犯人だと示す確たる情報、証拠なのだ。

 烈が二枚目のクッキーに手を伸ばした時、部屋の中で電子音が響き渡る。

「ボクのスマホだ。……ちょっと失礼」 明里は電話をかけてきた人物を確認した後、烈に断りを入れてから電話に出た。手持ち無沙汰の烈はクッキーを頬張りながら、明里の会話になんとなく耳を傾ける。

「はい、もしもし。うんうん。……少し待ってくれなかい?」

 明里は自身のスマートフォンを烈に見せ、指で軽く叩く。傾聴しろと指示しているようだ。烈が自分に注目したのを確認した明里は、通話をスピーカーモードに切り替える。

「今井さん、お待たせ。それで花咲さんについて話したいことって何かな?」

 今井? あの今井か? 花咲について話がある?

 烈の緊張の度合いが一気に上がり、瞬時に電話の内容に意識を集中させる。

「……あの、私の勘違いかもしれないけど……」

「大丈夫、勘違いでもボクは責めたりしない。なんでもいいから、情報が欲しいんだ。教えてほしい」

「じゃ、じゃあ言うね。……前に私が『コネクト』っていうマッチングアプリを使っていたって教えたでしょ」

『コネクト』は、今井のストーカートラブルのきっかけとなったものである。

「実はね、アプリ内で花咲さんらしき人を見たことがあるの」

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