第3話
尿意を覚えた烈はこの休み時間で解消しておこうと、ノートを机の中に入れ席を立つ。
用を足し教室に戻ろうとした途中で、週刊誌を広めている男子達を見つけた。週刊誌には『青薔薇の貴公子は現在のジャック・ザ・リッパー? 犯行動機は世の中を憂う潔癖さ? あの女子高生もパパ活をしていた!』という文章が踊っている。
「おい、この週刊誌見たか?」
「見た見た。まさか花咲がパパ活をしていたなんてショックー」
「皆にいい顔しておいて、裏でパパ活をしていたなんて。殺されたのも自業自得じゃね?」
「だな! 男を食い物にするからだ!」
男子生徒達は他の生徒の目も気にせず、下卑た笑い声を廊下に響かせる。通り過ぎる生徒は皆侮蔑の視線を向けるが、男子生徒達は気づかない。
週刊誌の表紙から、萌絵についてあることないこと書かれているのだろう。週刊誌は売れるために、過激な内容を掲載しがちだ。そして、男子生徒達は記事の内容を間に受けたらしい。
花咲をよく知らないくせに、噂話を信じているんじゃねーよ。
烈は男子生徒達に対して、憤懣遣るかたない。
いや、よく知らないからこそだ。
世の中には他者を自身の娯楽として消費する人間がいる。相手を知らないから、好き勝手言って嘲笑い、見下し、自分の暗い喜びのために消費する。週刊誌の記者も男子学生達もそうなのだろう。
「……ふざけやがって……!」
烈は音が鳴るほど奥歯を噛み締める。
自分達が殺人犯を捕まえるため、必死に萌絵を理解しようとしているのに、男子生徒達のように自分では碌に調べもしないのに侮辱する。週刊誌に至っては、まるで犯人を擁護するかのような見出しを堂々と書いている。彼らの行いは、烈の努力を馬鹿にするものだ。
「お、おい!」
男子生徒の一人が、自分達を睨んでいる烈に気づく。もう一人も烈をようやく認識し、後ずさる。鬼のような形相を向けてくる烈は、彼らにとってはさぞ恐ろしい存在だっただろう。逃げるように、自分の教室へと足早に入っていった。
「……くだらねえ」
気分を害した烈は、イライラしながら教室へ戻ろうとする。そこに校内放送が聞こえてきた。
「二年七組の剛村烈くん、至急校長室に来てください。繰り返します……」
「……え?」
自分の名前が呼ばれたことに、烈は呆けてしまう。何度か呼び出しを受けた経験はあるが、校内放送での呼び出しは初めてだ。しかも、校長室に来いとは只事ではない。無視するわけにも行かず、校長室へと直行。
あれ、だよな……。
思い当たる節は一つしかない。萌絵の事件を捜査していることだ。
ということは明里も……。
校長室に到着した烈は「失礼します」とドアをノックしてから、部屋の中に入る。予想通り、先に明里がいた。校長室の中には明里の他に、春野校長、学年主任の柳、多野、明里の担任である女性教員。そして、何故か逢蕾花もいた。




