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明日見明里は退屈が嫌い  作者: 河野守
第3章 点と点

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第2話

 次の日の火曜日、烈は早めに登校した。

 昨日の放課後に捕まらなかった生徒がいるため、今日は先に学校に来て聞き取り対象の生徒が登校するのを待つことにしたのだ。聞き取り対象の生徒だが、話を聞いた生徒から更に対象者である萌絵の友人の名前を教えてもらうため、ねずみ算式にどんどん増えていく。萌絵の交友関係が広いことは事前に分かっていたが、ここまで友人がいると話を聞くだけも一苦労だ。

 何度も思うが、何故萌絵はこんなにも友人が多いのだろうか。

 だが、この地道な聞き取り作業をサボることはできない。もしかしたら、萌絵に暴行をしていた人物、そして殺害の犯人に繋がる情報があるかもしれないからだ。

 朝のホームルームぎりぎりまで聞いて周り、授業の合間の休み時間も全て聞き取り調査に充てた。

「これで一段落、か」

 二限目の休み時間、烈は生徒達からの情報をノートにまとめていた。まとめたと言っても、文章の量はページの半分にも満たない。手に入れた情報も噂話の域を出ないものばかりで、今回の事件に関係しているとは思えない。烈は、萌絵が誰かから暴力を受けていたと何人かの生徒に説明したが、皆は驚くばかりでそのような人物は知らないとのこと。

 そういや、いつだったか忘れたけど、人間には他人から見えない部分の方が多いって、明里が前に言っていたよな。

 人間には色々な面がある。毎日顔を合わせている家族ですら、その人間の全てを把握しているわけではない。烈が見ていた萌絵も、彼女のほんの一部分に過ぎなかった。そして、萌絵が他人に見せなかった部分とは、一体どういうものなのだろう。天真爛漫で人の良い彼女にも、何か薄暗い部分があったのか。

 誰かから苛烈な仕打ちを受けていたことか。他にもあるのか。

 それらは、萌絵がひた隠しにしたいものかもしれない。だが、事件を解決するためには暴かないといけない。

 萌絵の裏の顔を知ってしまうのではないかと、烈が胃が重くなる。

「よう、剛村。何か分かったか?」

 水原が隣の席から身を乗り出し、ノートを覗き込んできた。

「水原、水曜日って聞いて何を思う?」

「水曜日?」

 聞き取り調査が全く無駄だったというわけではない。気になるものがいくつかある。その一つが今の烈の質問である。

「水曜日? なんで水曜日?」

「花咲がよく友人の家に泊まっていたのは知ってるか?」

「ああ。結構、有名な話だからな」

「アイツ、水曜日に泊まることに固執していたみたいなんだよ。俺に対しても家に泊めてほしいって言ったことあるが、その時も水曜日だった。それで水曜日に何かあるのかと思って。俺は何も思いつかなかったが、水原はどうだ?」

「水曜日、水曜日。水曜日、か……」

 水原は「ぱっと思いつくのは定休日、かな」と呟く。

()()()?」

「ほら、水曜日に休む仕事ってあるだろ。不動産とかアパレル、小売とか」

「あー、確かにそうだな。 他には?」

「他には……休み繋がりで部活だな。うちの学校、水曜日は基本的に休みになってるだろ?」

 昨今、教師の人材不足が叫ばれて久しい。教師はブラック職業だというイメージが世間に定着してしまい、教師を志す人間が減りつつある。文科省や地方自治体は教師の負担を減らそうと様々な手を打っており、その一つが部活動顧問の負担減だ。高校の部活動の休みは週一日以上となっているが、一日だけは生徒教師共に大変だと、休みを増やす動きが全国で相次いでいる。烈の高校では、水曜日が休みと決められている。

「そういや、水原はハンドボール部に入ってるんだっけ?」

「ああ。顧問はあの柳だからキツイんだよ。ちょっとミスしただけで、めちゃくちゃ怒鳴ってくるから。今の時代、アウトだろと思う。だけど、柳には実績があるから、周りも何も言えないんだよな」

「そりゃ、大変だな」

「まったくだ。だから、水曜日が休みなのは部員にとってありがたいね。柳から離れられるから。まあ、俺に考えつくのは今言った定休日ぐらいだな」

「いや、十分だ。ありがとうな」

 定休日、か……。

 萌絵の事件と結びつくとは到底思えないが、一応覚えておこうとノートにメモしておく。

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